水面は錦秋に彩られ
~十和田湖~
青森と秋田の県境にある十和田湖。紅葉の絶景を求める大勢の観光客でにぎわいます。湖畔で観光客が舌鼓を打つのは、名産のヒメマスです。放流されたヒメマスは、秋になると、産卵のため、生まれ故郷の養殖場へ遡上(そじょう)してきます。紅葉とともにやってくるのは冬の足音。地元の人たちは野菜やヒメマス、きのこなど、秋の恵みを蓄え、冬に備えます。山奥の湖を切り開き、守り継いできた湖畔の人々の、晩秋の暮らしを訪ねる旅です。
年間200万人が訪れる十和田湖。なかでも、湖畔が色とりどりの紅葉に染まる秋は、大勢の観光客でにぎわう季節です。十和田湖では、遊覧船に乗って、湖の上から紅葉の色彩を楽しむことができます。湖面にせり出した木々の色づきが水面に映り、華やかな景色が広がるのです。湖畔に生まれた中村十二さんは、小型の遊覧船で岸のすぐ近くや静かな入り江などにお客さんを案内し、地元生まれならではの紅葉の楽しみ方を伝えています。
観光客に人気の十和田湖名物が、ヒメマスです。十和田湖は、もともと魚のいない湖でした。明治時代に魚の養殖が試みられ、試行錯誤の末に成功したのがヒメマスでした。以来、湖畔の人々の貴重なタンパク源となってきたヒメマス。秋、産卵の時期を迎えると、生まれ育った“ふ化場”を目指して遡上(そじょう)してきます。人の手によって湖に根づいたヒメマスは、100年たった今も、湖畔の人々に大切に守り継がれているのです。
紅葉真っ盛りの中、一足早く冬支度が始まっていた湖畔の集落。久保武志さんと千代野さんの夫婦は、長年、田畑を耕しながら、観光の仕事をして暮らしてきました。忙しい仕事の合間を縫って、まきを割り、野菜を蓄え、湖で取れたヒメマスを塩漬けにしたりするなど、冬支度を進めます。十和田湖が雪に閉ざされる冬の間、湖の恵みを大切に食べつないでいくのです。
旅人 山田敦子から
紅葉の湖を船から眺めるというぜいたくな経験をしました。ごつごつした岩に映える赤や黄、松の緑、湖面の青。陽光の照り返しに波の揺れ。まさに「色に酔う」思いでした。秋の十和田湖でもうひとつ赤く染まるもの。それは水の下、産卵の季節を迎えたヒメマスたち。背を赤くして、生まれ故郷の養殖場へと狭い水路を必死に登っていくけなげな姿が、車の行きかう道路のすぐ脇で見られます。100年以上前に湖に放流されたヒメマス。以来現在に至るまで、養殖は営々と続けられています。山深い湖の、水の上と水の中で、自然と人の手が織りなす見事な色彩が今年も燃えていました。
十和田湖へのアクセス
<電車>
東北新幹線「七戸十和田」駅→車で約1時間30分
<車>
東北自動車道「小坂」IC→秋田県道2号線(樹海ライン)経由で約50分
問い合わせ先
- 十和田湖・奥入瀬渓流について
- 十和田湖国立公園協会
0176-75-2425
- 十和田湖のヒメマスや湖での釣りについて
- 十和田湖増殖漁業協同組合
0176-75-2612
- 十和田市の観光について
- 十和田市観光推進課観光企画係
0176-51-6772
- 十和田湖の秋田県側・小坂町の観光について
- 小坂町 観光産業課 観光商工班
0186-29-3908
※NHKサイトを離れます