2015年9月13日放送

再放送
  • 9月14日(月) 午前 11:05
  • 9月19日(土) 午前 5:15
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工業地帯に安らぎを
~茨城県 鹿嶋市・神栖市~

茨城県の南東部、太平洋に面した鹿島臨海工業地帯。戦後、開発が始まり、高度経済成長とともに発展してきたこの地域は、いまも鉄鋼や石油産業を中心に約160社が集まり、日本の工業生産の中心を担います。ここで働くのは、熟練した技術者など、全国から集まった約2万7千人。家族の元を離れ、長期間滞在する人も少なくありません。工場と共に生きる人、それを支える地元の人。まごころあふれる工業地帯の片隅を旅します。

国内最大級の製鉄所では、建築資材や自動車用の鋼板など、さまざまな鉄製品が日々作られています。パイプ職人の安藤建一さんは、40年間、この製鉄所で、石油や天然ガスのパイプラインを専門に作り続けてきました。長年培ってきたたくみの目で、わずかなゆがみを見極め、美しい円のパイプに仕上げていきます。安藤さんがこれまで手がけたパイプは、およそ300万本。その一本一本に「顔がある」と言います。安藤さんのパイプ作りの技術と職人としての誇りは、今、次の世代に受け継がれようとしています。

工業地帯につながる道沿いに、毎日300個売れるという、大きなおにぎりを販売する店があります。直径10センチ、コンビニのおにぎりの2倍ほどの分量があるおにぎりは、工場で体力仕事をする人たちにとって欠かせない、朝のエネルギー源となっています。この店では、40年前の創業以来、おにぎりの大きさを一切変えず、働く人の胃袋を満足させてきました。おにぎりの一つ一つに、作り手のささやかなまごころが握られています。

工業地帯周辺には、60以上の旅館が点在し、長期出張で滞在する人たちを受け入れています。今回訪ねた旅館では、おかみの野口優子さんが、わが家のように過ごしてほしいと、さまざまな工夫でお客さんをもてなしています。おかみの自慢は、自家菜園で育てた20種類の野菜や果物。毎日の食卓に出し、働く人たちの健康を気遣います。一年のほとんどを家族と離れて暮らす技術者たち。ほっとするぬくもりが、ここにあります。

旅人 山田敦子から

近頃聞く「工場萌え」とはこのことか、と思いました。港近くの展望塔から見た鹿島臨海工業地帯は、夏雲をバックにそびえ立つ数十本の煙突、赤茶色の工場群、折れ曲がり上り下る大小のパイプロード、巨大クレーンに巨大タンカー・・・圧倒的な迫力が感動を呼びます。その中に働くのは2万7千の人間達。そしてその働き手を支えるのは、地元商店の巨大おにぎりや地元旅館のおもてなし。開発で田畑を収用され、商店や旅館を始めた元農家と全国から集まってきた働き手。知らない同士が40年の時を刻んで、今はしっくりとなじみ合い、ひとつの町を作り上げているのでした。

鹿島臨海工業地帯へのアクセス

<電車・バス>
JR鹿島線「鹿島神宮」駅から、路線バス「海岸線銚子駅行き」または「利根川線銚子駅行き」→「鹿島セントラルホテル」または「鹿島製鉄所前」下車(約30分)

<車>
東関東自動車道 潮来ICから約20分
常磐自動車道 水戸ICから約2時間

<高速バス>
東京駅八重洲高速バス乗り場より「鹿島神宮駅行き」→「鹿島セントラルホテル」または「鹿島製鉄所前」下車(約120分)

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問い合わせ先

製鉄所の工場見学について
新日鐵住金株式会社 鹿島鐵製所 コミュニティホール
0299-84-2289
観光について
神栖市観光協会
0479-26-3021 (番組で紹介した旅館についてはこちら)
鹿嶋市観光協会
0299-82-7730
特大のおにぎりについて
コンビニエンス オオサカヤ
0299-96-2447

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