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2017年1月30日(月)

“フェイク・ニュース”の脅威

山澤
「特集・ワールドEYES(アイズ)。
けさは、インターネット上で問題となっている『うそのニュース』についてです。
『フェイク・ニュース』と呼ばれているうそのニュースは、フェイスブックなどのSNSを通じて瞬く間にネット上で拡散してしまうのが特徴です。


問題は、これら偽の情報を多くの人たちが真実だと受け止めてしまうことで、昨年(2016年)のアメリカの大統領選挙においても、“ローマ法王がトランプ氏を支持”といったものや“クリントン氏がイスラム過激派組織に武器を売却”といったフェイク・ニュースが拡散し、選挙戦を妨害したと報じられています。



また、フェイクニュースが事実を装う手口も巧妙で、アメリカの大手メディアの中には、偽の情報をうのみにして報道してしまい、その後、謝罪する事態まで起きています。
『フェイク・ニュース』はどのようにして作られ、広がっていくのか?
まずは、その実態に迫る、アメリカABCのリポートをご覧ください。」

“フェイク・ニュース” 発信源に迫る

今回の大統領選挙では、明らかに“うそ”と分かるフェイクニュースが、民主・共和両党の支持者間の対立をあおりました。

「クリントンを牢(ろう)屋に!」





記者
「“ローマ法王がトランプ氏を支持、世界に衝撃”。
“クリントン氏のメール問題、FBI担当捜査官が無理心中”。
これらの記事は、いずれもフェイクニュースです。」

ネットメディア「バズフィード」のシルバーマン氏は、この問題に早くから注目し、調査してきました。

記者
「フェイクニュースのサイトは、いつ頃増えたんですか?」



ネットメディア編集者 シルバーマン氏
「2016年です。
これまでと比較になりません。
その要因の1つは、トランプ氏です。
彼の発言はネットを騒がせ、人々のSNSの利用頻度を高めたんです。」

バズフィードは、フェイクニュースサイトの温床を発見しました。

ネットメディア編集者 シルバーマン氏
「100以上のサイトが、マケドニアの小さな街で作られていたんです。」

そう、マケドニアです。
中でもべレスという、人口およそ4万5,000人の、不況にあえぐ小さな都市です。

ネットメディア編集者 シルバーマン氏
「栄えていた工業が衰退し、今、若者たちは、小遣い稼ぎと暇つぶしのためにフェイクニュースを作っているんです。」

現地で実態を確かめてみることにしました。
数人のサイト製作者が、取材に応じました。




フェイク・ニュース サイト製作者
「政治ネタは注目されるんだ。」




フェイク・ニュース サイト製作者
「僕の記事には、アクセスが750万回もあったよ。」




フェイク・ニュース サイト製作者
「フェイクニュースの拡散は、止められないよ。」




多くの製作者は政治には無関心で、サイトの広告からの収入だけが目当てです。

フェイク・ニュース サイト製作者
「ここ3か月、フェイクニュースを作っただけで、両親が一生かけて稼ぐ金額がもうかったんだ。」

サイトを開設した頃は注目もされませんでしたが、彼らはついにネット上の“金の鉱脈”を掘り当てました。

フェイク・ニュース サイト製作者
「トランプについて書くと、アクセスは伸びたんだ。
クリントンのメール問題、ウィキリークスなどもそうだよ。
そんなことを書くと、皆がコメントを投稿したり、記事をシェアしてくれるんだ。」

フェイク・ニュース サイト製作者
「アメリカ人が私のサイトで記事を見た時に、広告のバナーをクリックしてくれれば、お金が入ってくるんだ。
一攫千金だね。」



記者
「フェイクニュースが選挙結果を左右したというのは、言いすぎでしょうか?」

ネットメディア編集者 シルバーマン氏
「その影響を見極めるのは不可能です。
ですが、フェイクニュースの上位20位の記事と、大手メディアの上位20位の記事とを比べると、フェイクニュースの記事の方が、フェイスブックでは話題になっていました。」

調査によると、アメリカの成人の62%がSNSでニュースを読んでいて、中でもフェイスブックの利用率は飛びぬけていています。
製作者たちは、これに目を付けたのです。

フェイク・ニュース サイト製作者
「1分間に、だいたい3~6人が見ていて、全体の9割の人がフェイスブックからアクセスしてます。」




ネットメディア編集者 シルバーマン氏
「ほんのわずかな努力で、フェイスブックで大きく注目されれば、大金を稼ぎ出すことが可能になるのです。」

フェイスブック上の“フェイク・ニュース”について、その影響力を否定していたCEOのザッカーバーグ氏も、今は「問題があるかもしれない」と認め、「誤った情報には真剣に対応しており、改善されてはいるが、やるべきことも多い」と述べています。

ネットメディア編集者 シルバーマン氏
「フェイスブックが、偽情報拡散の土台となっています。
仮に、フェイスブックが何もしなければ、状況は悪化するでしょう。」

しかし、一番の対策は、利益が出ないようにすることです。

フェイク・ニュース サイト製作者
「僕の銀行口座はグーグルとつながっていて、収入が振り込まれるんだ。
グーグルに雇われているようなもんだよ。」

フェイク・ニュース サイト製作者
「グーグルももうけているよ。」

記者
「取り分は、グーグル7割、自分が3割とも言っていました。」

ネットメディア編集者 シルバーマン氏
「グーグルは、フェイク・ニュースでもうけています。
巨大な広告ネットワークを持っていて、どんなサイトでもそのネットワークが利用できます。
グーグルは、オンライン広告の巨人なんです。」

われわれABCニュースに対して、グーグルは「誤解を招くコンテンツへは広告掲載を禁止し、今後も情報が不正確なページでの広告は制限する」とコメントしています。
大手メディアに対する不信が高まる中、真実とうそを区別するのは困難です。

ネットメディア編集者 シルバーマン氏
「トランプ氏は、クリントン氏の得票率が上回ったのは、数百万票を操作したからだと主張していますが、全くのでっちあげです。
人々に真実なんて関係ないと言っているようなものです。」



元々、SNSのニュースサイトは、われわれの意見が直接反映されるように設計されました。

記者
「要求に応えていると?」

ネットメディア編集者 シルバーマン氏
「そう。
読者は自分がほしい情報だけで、他はいらないんです。」

“フェイク・ニュース” 拡散の背景

山澤
「スタジオには、ソーシャルメディアに詳しい、ジャーナリストの津田大介(つだ・だいすけ)さんです。
フェイクニュースといいますと、アメリカの大統領選挙にも影響したということですし、問題は深刻だと思うのですが、津田さんはどう受け止めていらっしゃいますか?」

津田
「非常に深刻だと思います。
現実の政治だと、例えば選挙戦中に“怪文書”が配られるということはあると思うんですけど、それと同じことがネットで行われている。
それが堂々と行われているいうことが、まず1点。
それに、今、VTRにあったように、お金もうけのために情報をゆがめてあえて発信する、扇情的な情報であればあるほど流通するのでお金がもうかるということで、政治的な目的に加えて、経済的な目的でやっている人がいる。
そういった情報を、これはおもしろそうだから多くの人に伝えるべきだといって、拡散してしまう善意の普通のユーザーがたくさんいる。
この3者がフェイクニュースの作成や拡散に、ある種、共犯関係みたいな形になって、なくならないという状況ですね。」

山澤
「“デマ”や“うその情報”というのはこれまでもあったと思いますが、それがこれだけ拡散してしまう、これまでとの違いは何でしょうか?」

ジャーナリスト 津田大介さん
「いくつか環境的な要因の変化が大きいと思います。
昔は新聞とかテレビとか、いわゆるマスメディアで情報を入手していたのが、今どんどん情報環境が変わっていて、若い人のほとんどがスマホが中心。
しかもそれが、フェイスブックのようなSNSでニュースを得るということがどんどん増えている。
これによって非常にニュース自体が、多様なニュースが流れて、しかも流れたニュースを自分で他の人に再拡散する、シェアするということで、情報の流通経路が変わっていったということが非常に大きいと思います。
アメリカの場合は、フェイスブックの中に、日本ではついていないんですけど、『トレンディング・トピックス』という機能があって、最新のニュースをまとめて読むことができる機能が付いているんですよね。
これが非常に影響力が強いと言われていて、ここに大量に作られたフェイク・ニュースが混じる、紛れ込んでしまったことによって、選挙結果に影響が出たんじゃないかということが言われているんですね。
やはりSNSの場合、パッとニュースが流れてきたときに、“お、これはちょっと大きなニュースだ、他の友人たちに伝えたい”と思ってシェアしてしまう。
で、流れてきたときに、つい反応しやすいんですよね、スマホみたいなものがあるので。
ボタンを2クリックするだけで簡単に行ってしまう。
そういうことで、ついうっかりやってしまう、吟味することなくシェアしてしまうということも、フェイク・ニュースがなくならない1つの理由だと思います。」

ネットニュース 真偽より“見出しの力”

山澤
「今、津田さん『吟味しなくても』とおっしゃいましたが、そうするとニュースの信ぴょう性というのは、あまり関係ないということでしょうか?」

ジャーナリスト 津田大介さん
「そうですね、これはかなり深刻な調査結果が一昨年(2015年)に出されたんですけど、コロンビア大学とフランスの情報学研究所の共同調査で、ツイッターでニュースが流れてきたときに、それを多くの人がリツイートしますよね。

ニュースの記事のアドレスがはられたものをリツイートするわけですけど、でも実際にリツイートするときに、ほとんどの人が見出しだけを見てリツイートしてしまって、その記事に飛んで中身を確認しないでいるんですよね。
実際に、記事に飛んで確認する人が、わずか4割にとどまった。
逆に言うと、6割の人が中身を見てないんですよね。」

山澤
「中身を知らずに、なんとなくタイトルがおもしろいので、他の人に広げちゃおうということですか。」

ジャーナリスト 津田大介さん
「こういうことって昔から、例えば電車に乗っていて、週刊誌の中づりの見出しを見て『ああらしいよ』ということを友人たちと話したりということはあったと思うんですけど、せいぜい、友人と話した、そこの数人ですよね。
そこまで、信ぴょう性が不確かな情報が届く範囲というのが、自分の現実の知り合い数人だったのが、これがSNSを通じてだと、不特定多数に、それが10人、100人、1,000人、1万人というふうに、自分の手を離れて拡散してしまう。
不確かな情報に対して、何かアクションを起こすというのは、昔からあったんですけど、そこから先に広がる、ここがまったく違うということなんでしょうね。」

フェイク・ニュース拡散 有効な対策は?

山澤
「もう1点、リポートの中にもあったんですが、マケドニアの例のように、フェイク・ニュースがビジネスになってしまうという実態があるわけですよね?」

津田
「これが、フェイク・ニュースがなくならない、一番大きな要素となっているんじゃないかなと思います。」

山澤
「なぜこれがビジネスになってしまうんでしょうか?」

ジャーナリスト 津田大介さん
「簡単に言うと、我々はブログとかで簡単に情報発信ができる、ニュースを作って発信することが誰でもできるわけですね。
その発信したブログに、簡単な広告アカウントを作って、広告コードを張り付けると、そのブログの内容にマッチした広告が自動で挿入されるんですね。
それをクリックした数に応じて、収入が開設者に入ってくるという仕組みになっているので、アクセスが増えれば増えるほど、それに見合った収入も増えていくので、より扇情的な情報を発信することで、それによってお金を得ようという人たちが後を絶たないですし。
あと、実質的に、情報をゆがめて発信したものに広告を載せることに、何のペナルティもないんですよね。
『やったもの勝ち』ということになってしまうので、それによって情報がゆがめられたものが、フェイク・ニュースが増えていくという、そういう背景があります。」

山澤
「そうしますと、フェイク・ニュースを取り締まるといいますか、なくすためにはどんな対策を取っていけばいいでしょうか?」

ジャーナリスト 津田大介さん
「いくつかあると思うんですが、やはり広告の側ですね。
悪質なアカウント、情報をゆがめて発信していることが明らかなアカウントには、広告の配信を停止する。
そして停止した後に、別のアカウントを取ってまた作ろうとする人がいたら、それはもう、基本的にだめですよ、と。
またグーグルだけではない、広告業界全体、ネットの広告のアドネットワークといわれている業者がたくさんあるので、そういうところが、銀行の信用情報のように、このアカウントは悪質ですよ、この人は悪質ですよというのをシェアする仕組み、共有をした上で、この人には広告を配信しないと。
それであれば、表現の自由は制限しない形で、情報をゆがめて発信する人がお金もうけだけをできないようにする、といったことが必要でしょうし。
また、そういう人が情報発信しているときに、すぐに発信者をたどれるしくみとか、もしくは、マスメディアの報道が『ここのフェイクニュースは間違いですよ』ということをちゃんと事実を提示して打ち消していく、訂正していく、これを今まで以上にやっていく。
こういうことの組み合わせでフェイク・ニュースに対抗していくしかないのではと思います。」

山澤
「ただ、ネット上の情報というのは本当に沢山あって、ある意味いたちごっこになってしまうのかなという気もするんですが、そうしますと、情報を得る側、私たちも注意していかなくてはいけないということですよね。」

ジャーナリスト 津田大介さん
「あとはやはり、こういうフェイスブックとかグーグルとか、プラットフォームと呼ばれる情報発信をお手伝いする、そこを担う側の、業者の倫理観とか機能ですとか、そういうところの社会的責任というのも大きく問われているということだと思います。」

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