BS1 ワールドウオッチング - WORLD WATCHING -

2016年12月19日(月)

高まる人道危機!イエメン内戦

山澤
「特集・ワールドEYES(アイズ)。
けさは、中東イエメンの内戦についてです。」
 

丹野
「国連によりますと、イエメンでは、去年(2015年)3月から続く政権側と反政府側による内戦で、すでに4万3,000人を上回る死傷者が出ています。
また、ユニセフ=国連児童基金は、空爆などで子どもたちが10分に1人のペースで命を落としていることを先週明らかにし、イエメンは危機的な状態に陥っていると訴えています。」
 

山澤
「けさは、内戦が拡大する背景と、戦闘終結への課題をみていきますが、まずは被害を受ける子どもたちの現状について、イギリスBBCのリポートをご覧下さい。」

イエメン内戦拡大 犠牲になる子どもたち

サウジアラビア近くの町・アーヘン。
住む人はいません。
死と隣り合わせの道を進みます。

破壊された病院がありました。





生後4か月のジャバールちゃん。
生まれた日から、生きるために闘ってきました。
イエメンでは病気で1万人の子どもが命を落とし、50万人が深刻な栄養不良とされています。
医療施設の半分は機能していません。

 

医者
「医薬品が少なく、医療に限りがあります。
患者のためにも国際支援を願っています。」


 

子どもの栄養不良は2年で2倍になりました。
内戦前、イエメンは食糧の9割を輸入していました。
今、その供給網は断たれています。
「空爆には、天罰を」と、この男性は言います。

2週間前に空爆を受けた橋です。
トラックも兵士と同じ道路を使っています。
郊外は支援が届きにくく、国際社会の助けを待っています。

避難民キャンプ地にやってきました。
猛暑の中、1万7,000人が水のない荒野で暮らしています。
再び、住民の悲痛な訴えを聞きました。

栄養不良の子どもを連れてきました。




 

記者
「なぜ子どもを連れて?」

ハレップ・シューイーさん
「支援組織の関係者が、この苦しみを世界に訴えてくれると思ったんです。
本当にありがとう。」


 

3歳のサミュエルくんは、両親と親族24人の命を奪った空爆で、ただ一人、生き残りました。
避難していた叔父が、この子を引き取ることにしました。

モハメドさん
「家族の名前を言って、どこにいる?と尋ねてきます。」

記者
「空爆を覚えている?」

モハメドさん
「飛行機の音を聞くと怖がるので、腕に抱いて一緒に寝ています。」

結局、最大の被害者は子どもたちです。

生後21日の赤ちゃん。
双子の兄は生まれた直後に亡くなりました。
とても衰弱していますが、懸命に生きようとしています。

空爆がもたらす深刻な人道危機

山澤
けさのゲストは、中東情勢がご専門の放送大学教授・高橋和夫(たかはし・かずお)さんです。
病院の半分が機能せず、子どもたちは手当てを受けられない。
また、50万人が深刻な栄養不良ということだったんですが、このイエメンの情勢を高橋さんはどうご覧になりますか?」

放送大学教授 高橋和夫さん
「2つポイントがあると思うんですね。
1つは、シリアのアレッポが包囲されて爆撃されて、戦争犯罪だ、人道上の罪だとアメリカやイギリスは激しく非難しているわけですけども、同じようなことがイエメンで起こっていて、イエメンに関してはシリアの影に隠れてあんまり報道されていない。
アメリカやイギリスは、このイエメンでの爆撃に関して、サウジアラビアなどを支援してるところを、なんというか、シリアで戦争犯罪をこれだけ問題にして、なぜイエメンを取り上げないんだというのが1つありますね。
それからもう1つは、シリアの戦争も悲劇なんですけれども、イエメンの戦争は悲劇ということに加えて、イエメンの戦争に関与しているサウジアラビアとアラブ首長国連邦、この2か国から日本は石油の半分を輸入しているんです。
ですから情勢次第によっては、この戦争が日本にとって危険な戦争だという認識が、少し日本人の間で薄いのかなと思いますね。」

山澤
「今、高橋さんのお話で、サウジアラビアやイエメンが関与しているという話が出ていましたが、ここで改めて、もう一度イエメン内戦の構図をみてみたいと思います。
イエメンの内戦は、『代理戦争』ともいわれてきたわけですけれども、なぜこの内戦が起きてしまって、そしてなぜこの悪化の一途をたどっているんでしょうか?」

放送大学教授 高橋和夫さん
「やはり2011年のアラブの春という現象から説き起こす必要があると思うんですね。

それまでは、このサレハ大統領が何十年にも渡ってイエメンを支配してきて、そろそろあなた辞めなさいよということになって、新しい人に移っていったわけですれど、このイエメンという複雑な部族社会・宗派社会を、サレハ氏というのは、腐敗のにおいが漂っていたんですが上手に利害を調整してやってきたんですね。
ところがこのハディ氏にはなかなかその力がなくて、うまくいかないという状況があったと思います。
サレハ氏はたまたまシーア派で、ハディ氏はスンニ派ということで、シーア派からスンニ派に移ったということも見えるんですけど、イエメンの方はあまり宗派のことはこだわっていなかったと思うんですが、とりあえず利権調整機能が、利害調整級のハディ氏には弱いということで、イエメンが不安定化する。

その中で『フーシ派』と言われてるシーア派の勢力が伸びてくるということで、この人たちの力が伸びてくると、引退したはずのサレハ氏がまた戻ってきて、サレハ氏はずっと軍を支配してきましたから、軍の支援を受けるということで、フーシ派と軍が両方組んで、新しいハディ氏の政権と対立するという構図が出てくると。
このフーシ派がとりあえずシーア派で、サウジアラビアはシーア派というのをあまり良く思っていませんから、それを脅威に思って、じゃあこちら(スンニ派)を助けようという雰囲気がサウジアラビアで出てくるんです。」

山澤
「同じスンニ派のサウジアラビアですね。」

放送大学教授 高橋和夫さん
「そうなんです。
サウジアラビアというのは昔からずっといろんな人にお金をばらまいてやってきたんですけども、最近になってハディ氏に肩入れをしているということで、この混乱の中で、イランの影響力も入ってくると。
実際どのくらいイランが関わっているか、どのくらい兵が入っているかということに関して、私はそんなにないし懐疑的なんですが、とりあえずそれによって、シーア派・スンニ派の『宗派対立』プラス、サウジアラビアとイランの『代理戦争』という形になりまして、外から見ればみんなそう思ってしまいますよね。
でもいちばん重要なのは、イエメンの人たちの利害の調整だと思うんですけどね。
こういう状況で、今度はサウジアラビアなどがフーシ派をたたこうということで、空爆を始めて、本当に内戦になってしまったということなんですね。

で、サウジアラビアが『湾岸協力会議』という国々を誘って爆撃しているという構図で、このサウジアラビア・湾岸協力会議を、イギリス・アメリカが軍事面で支援しているという形で国際的な大紛争になっているという状況です。」

山澤
「さて、そのイギリスとサウジアラビアの関係については、6日にGCC=湾岸協力会議が開かれたバーレーンを訪れたイギリスのメイ首相が、サウジアラビアのサルマン国王と今後の関係強化について話し合われたとされています。
こうした動きもありまして、イギリスBBCは連日のようにイエメン情勢を大きく伝えていますが、その中で、連合軍によるイエメンの空爆にイギリスが大きく関わっていると指摘しています。」

サウジアラビア空軍強化 イギリス支援に批判

イギリスはアメリカ等と同様、大量の軍用品をサウジアラビアに売却し、連合軍を支援してきましたが、今、その支援に対する議論が高まっています。

主要なインフラや病院が爆撃され、国連によると、ここ1年の犠牲者の6割は、サウジアラビアが主導する連合軍の空爆によるものです。

サウジアラビアの戦闘機の半分はイギリスから調達したもので、スコットランド上空を飛ぶ最新鋭戦闘機と同じです。
イギリスの航空機メーカーとの契約は、およそ5,000億円にも上ります。
イギリスは軍事アドバイザーも送っていますが、戦闘の指揮系統への関与は否定しています。



武器の売却は合法ですが、市民を犠牲にする戦争犯罪の疑いもあり、イエメンでは人道危機となっています。
イエメンの当局は内戦に関与している国を批判、国際調査を求めています。

サウジアラビア 空軍力強化の背景

山澤
「今のリポートの中で、サウジ軍の戦闘機の半分はイギリスから購入したものだったと。
サウジアラビアなど連合軍の空軍の強化、その背景には何があるんでしょうか?」

放送大学教授 高橋和夫さん
「実は、サウジアラビアのような豊かな国は70年、80年、90年と、ずっとアメリカからたくさんの飛行機を輸入してきたんですね。
問題はそれを使うかどうかで、これまでは空軍力が強かったんですけど、使うことはなかったんです。
ところが最近、サウジアラビアで世代交代が起こって新しい王様が出てきて、世代が若くなって、特に国防大臣の王子様が強硬だと考えられているんですね。
例えばアブドラ前国王の時代だと、おそらくサウジアラビアというのは黒幕に徹して、後ろから糸は引くけど表には決して出ないということだったんですけども、新しい王様になって、実際に国防大臣などの要職を若い世代が担うようになると、せっかく空軍力があるんだから使おうじゃないかという雰囲気が出てきた。
やはり世代交代が大きかったと思いますね。」

山澤
「このサウジアラビア、イギリス以外にもアメリカやフランスが連合軍を支援していますが、具体的にはどんな支援を行っているんでしょうか?」

放送大学教授 高橋和夫さん
「アメリカが行っている支援は、イエメンのフーシ派による海上封鎖を助けているということが1つ。
もう1つは、サウジアラビア空軍が、実際にサウジアラビア人だけでは運営できないんですね。
具体的には、例えばサウジアラビアの基地からイエメンまで飛んで帰ってくる。
で、空中給油が必要なんですが、その空中給油の飛行機をアメリカが出しているんですね。
ですから実際、現状を見ているとアメリカの手が血で染まっているように見えるときがありますね。」

イエメン内戦 終結へのカギは

山澤
「このイエメンの内戦の長期化、ISの関与などを指摘する事件も起きているんですが、この内戦を終結させるためには、今後、支援してきた欧米はどう関わっていけばよいのでしょうか?」

放送大学教授 高橋和夫さん
「やはりサウジアラビアの軍事、爆撃をやめさせる必要があるわけで、そのためにはアメリカ・イギリスが強い圧力をかける必要があると思うんですね。
じゃあ何がアメリカ・イギリスを動かすのかというと、『あまりにも酷いんじゃないか』という国際世論だと思うんですよね。」

山澤
「そしてまた、サウジとイランの関係も改善しなければいけないですよね。」

放送大学教授 高橋和夫さん
「サウジとイランの関係が改善すればイエメンの問題が治まるということではないんですけども、改善すれば中東の雰囲気はずっと平和的になると思いますね。」

山澤
「そして国際社会が、シリア同様の人道危機がイエメンで起きないように関与していかなければならないと?」

放送大学教授 高橋和夫さん
「そうですね。
イギリス・アメリカは世論の圧力に弱いですよね。
今、一生懸命ケリー氏がやっているのも、やはりオバマ大統領の任期が終わる前に世論の激しい圧力をかわしたいという気持ちがあるわけで、やはり報道し続けていただくこと、そしてわれわれが声をあげることが重要だと思います。」

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