BS1 ワールドウオッチング - WORLD WATCHING -

特集

2018年10月25日(木)

中国のインド洋進出に沿岸諸国と日本が連携 ~護衛艦「かが」同乗リポ~

 
放送した内容をご覧いただけます

中東やヨーロッパとアジアを結ぶ、重要な海上ルート、インド洋。
そこで行われたのが、沿岸国と日本の合同訓練。
海上自衛隊最大の護衛艦「かが」が初めてインド洋に遠征しました。
念頭に置いているのは、インド洋で今、存在感を高めている中国です。
巨大経済圏構想「一帯一路」を掲げ、次々と港や空港を整備。
その一方で、潜水艦を含む、艦艇の活動も活発化しています。

沿岸国では、「中国がインド洋を第2の南シナ海にするのでは」と警戒感が強まっています。

海上自衛隊 第4護衛隊 福田達也群司令
「海軍艦艇が外国で活動するということ自体、プレゼンス(存在感)になる。」


中国が影響力を強めるインド洋。
各国はどう向き合おうとしているのでしょうか。


酒井
「海上自衛隊最大の護衛艦、『かが』は、先月(9月)から1か月近くインド洋にとどまり、スリランカ軍とインド軍、それぞれと合同訓練を行いました。
『かが』がインド洋まで活動範囲を拡大するのは初めてです。」

花澤
「背景にあるのは、中国のインド洋への進出に対する、沿岸国の警戒感です。
インド洋の現状を、松岡さんお願いします。」

松岡
「中東やヨーロッパとアジアを結ぶ、シーレーン=海上交通路がある、インド洋。
世界のコンテナ輸送の半分がここを通過し、日本向けの石油も80%以上が通ります。
インド洋の沿岸国では、中国が巨大経済圏構想『一帯一路』をか掲げて、パキスタン、モルディブ、スリランカ、バングラデシュ、ミャンマーなど、インドを取り囲むように、港や空港などのインフラ整備を進めています。
これは、インド包囲網となる『真珠の首飾り』戦略とも言われています。

中でもスリランカ。
南部のハンバントタ港は、中国が貸し付けた巨額の資金をもとに港の開発が進められましたが、債務の軽減と引き換えに、中国が99年間にわたって運営権を取得しました。
こうした中国の動きに対し、警戒を強めているのが隣国のインド。
周辺国との連携を深めることで、中国をけん制する動きを見せています。
日本も8月、当時の小野寺防衛大臣がインドとスリランカを訪問。
防衛協力を強化することなどについて話し合いました。
そのスリランカ、インド、それぞれとの間で日本の海上自衛隊が行った合同訓練。
インド洋で活動する『かが』にNHKの取材クルーが同乗して、密着取材しました。」

インド洋 強まる中国の影 自衛隊・沿岸国が合同訓練

太勇次郎支局長(ニューデリー支局)
「今、インド洋の上空を飛行中です。
このインド洋に、海上自衛隊の最大の護衛艦『かが』が初めて入り、現在、航行を続けています。」

  

全長248メートルの空母型の護衛艦「かが」。
護衛艦「いなづま」と共に、先月、インド洋に入ってきました。
「かが」などに乗り込んでインド洋に派遣されたのは、海上自衛隊の600人ほど。
沿岸国の海軍と、戦術の訓練を通して連携を図り、地域の安定に貢献するという目的を掲げています。
「かが」には、対艦ミサイルを探知して迎撃するシステムを装備。
高性能の機関砲なども備えています。
さらに、上空から潜水艦を探し出して追跡し、攻撃できるヘリコプターも搭載。
中国の潜水艦を強くけん制しています。
「かが」には、合同訓練を行うスリランカ海軍の将校のほか、インド洋を管轄するアメリカ海軍第7艦隊の将校も乗り込みました。
スリランカのコロンボ港を出港しようとしたその時、船を指揮する艦橋の中が、ざわつき始めました。
近づいてくる灰色の軍艦。
隊員たちは一斉に情報収集を始めます。

自衛隊員
「中国の潜水艦救難艦ですね。」


「かが」の行く手を遮って、進行航路に入ってきた、中国海軍の艦艇。
潜水艦を支援する、中国の軍艦でした。


インド洋で、中国の潜水艦が今まさに展開中だと言わんばかりに、存在をアピール。
甲板には、中国海軍の兵士たちがずらり。

自衛隊員
「舷側(船の側面)に人を並べるのは、『船の中に人がいない』ということで、武力行使をする意図はないです。」

大きなトラブルはなく、中国海軍の艦艇の通過を待ちました。
予定から遅れること1時間。
護衛艦「いなづま」に続いて、「かが」も出港しました。
重要な海上交通路のインド洋では、民間の大型タンカーが次々と通過していきます。
沖合に向けて航行すること3時間。

太支局長
「今、訓練が始まり、海上自衛隊のヘリコプターが、スリランカ海軍の艦艇に向けて飛び立とうとしています。」

「かが」からの指示を受けて、スリランカ海軍の艦艇と海上自衛隊のヘリコプター、それに「いなづま」がそれぞれ配置につきます。
今回の訓練の想定は、海難救助。
いち早く遭難者を発見して、救助するための連携を確認します。

スリランカ海軍
「まだ、発見できず、捜索を続ける。」

2時間後、スリランカ海軍の艦艇が、海上に浮かぶ目印を発見し、遭難者を救助。
そして、海上自衛隊のヘリコプターが釣り上げて、「かが」に運びました。

スリランカ海軍 サジーワ・ガマゲ大尉
「スリランカ海軍が技術と能力を高める上で、とても貴重な機会です。
インド洋を守るには、こうした協力が不可欠です。」


これまで、アメリカ海軍によって守られてきたインド洋。
「かが」は、こうした訓練を行いながらインド洋にとどまり、警戒を続けることで、インド洋での日本の存在感をアピールしたのです。

アメリカ海軍 第7艦隊 リチャード・ブライ大尉
「『かが』がインド洋にいることは、日米の協力をいっそう高めることになる。」

海上自衛隊 第4護衛隊 福田達也群司令
「海軍艦艇が外国で活動するということ自体、プレゼンス(存在感)になると考えています。
諸外国海軍との連携を通じ、関係をしっかりと作っていくことによって、将来的には、この地域での海洋安全保障の確立に寄与する。」

日本から7,000キロほど離れたインド洋。
日本の生命線でもあるシーレーンを守るため、各国との連携強化が進んでいます。

酒井
「ここからは取材に当たった、ニューデリーの太支局長に聞きます。
海上自衛隊はインド軍とも訓練を行ったということですが、どのような訓練だったのでしょうか?」

太勇次郎支局長(ニューデリー支局)
「『かが』とインド海軍との合同訓練は、公開されませんでした。
インド海軍の声明によりますと、対潜水艦作戦や防空作戦など、実戦さながらの非常に高いレベルの訓練が実施されたということです。
この訓練もやはり、中国を念頭に実施されました。
海上自衛隊の幹部は、中国海軍のインド洋でのプレゼンスが、質・量共に非常に高いレベルに達していると分析していました。
実は去年(2017年)、中国とインドの両軍が国境を挟んでにらみ合う緊迫した事態となったのですが、中国海軍はすぐに、インド洋に展開する艦艇を倍増して14隻を集結させ、インドに対して軍事的圧力をかけてきました。
短時間に多くの戦力を集結させたことで、周辺国は、中国海軍のインド洋での展開能力に、ますます警戒心を抱くようになったのです。」

花澤
「そのインド洋と太平洋を合わせた海域で、アメリカ、日本、インド、オーストラリアの4か国の連携が注目されているが、こうした連携は今後さらに強化されることになるのでしょうか?」

太支局長
「ここニューデリーで、今年(2018年)開かれた国際フォーラムで、自衛隊トップの河野統合幕僚長が、南シナ海の状況を念頭に、『中国の姿勢を力で変えさせるのは難しいかもしれないが、孤立させることで変わるかもしれない』と述べて、4か国の連携の重要性をアピールしました。
こうした連携は、南シナ海だけでなくインド洋でもまさに求められることになります。
中国が進める『一帯一路』は、インフラを整備するというプラスの面を持つ一方で、中国がもし、そのインフラを軍事利用したり、他の国を力で締め出したりした場合、インド洋一帯が一気に不安定になりかねません。
そうした事態を未然に防ぐための、4か国の連携ということになり、今後の具体的な連携の動きを注目していかなければならないと思います。」

酒井
「南シナ海だけではなくて、インド洋でも、日本の役割が求められていくということなんですね。」

花澤
「そうなんですね。
そしてスリランカは債務の罠(わな)のいわば典型例として非常に注目されました。
そしてそこをインドが巻き返そうとしている中で、日本が最大の護衛艦を派遣してスリランカと訓練をしてみせる。
非常に戦略的な動きですよね。
インドは国境問題を抱えて、中国と長年対立しています。
地域の不安定化を防げるのか、各国の連携が重要性を増しています。」

ページの先頭へ