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特集

2017年3月2日(木)

企業進出が加速 深まる日越関係

 
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田中
「天皇皇后両陛下は一昨日(28日)からベトナムを公式訪問されています。
今日(2日)は、かつて日本で学んだベトナム人の元留学生や日本で看護師や介護士として働くことを目指している学生たちと懇談されました。
ベトナムと日本が国交を樹立してから40年余り。
今、両国の関係は、経済を中心に急速に深まっています。」

佐藤
「ここ10年、7%前後の経済成長を続けているベトナム。
日本企業の進出も加速しています。

現地の日本商工会に登録している企業数は、この10年で3倍に急増。
1,600社余りに達しています。
その数は、ASEANの中で最も多いタイに迫る勢いです。

背景には、ベトナムは政情不安が続くタイに比べて政治が安定していること。
そして人件費が高騰している中国よりも安く若い人材が雇えることなどがあり、新たな生産拠点として期待されているのです。」

田中
「日本企業の進出が進む、ベトナムの現場を取材しました。」

日本とベトナム 深まる経済関係

リポート:横田晃洋支局長(ハノイ支局)

ベトナム最大の都市ホーチミン。
この街にユニークなホテルが登場しました。

横田晃洋支局長(ハノイ支局)
「こちら、ホーチミン中心部に去年(2016年)オープンしたホテルなんですが、日本人ビジネスマンに疲れをいやしてもらおうと、屋上には露天風呂があります。」




今、ベトナムでは、増加する日本人ビジネスマンをターゲットにこうした宿泊施設が次々とできています。





化粧品や食品メーカーなど、ベトナムに進出する日本企業は1,600社余り。
毎年、およそ100社が新たに進出しています。




こちらのアパレル資材メーカー。
取引先の大手縫製メーカーが次々とベトナムに進出する中、製品をより早く納品できるよう、一昨年進出し、現地での生産を始めました。
ベトナムの最大の魅力は人材だといいます。
人口およそ9,300万の半数近くが30歳以下と、若い人材が豊富に確保できるのです。
この会社では2つの工場を稼働させていますが、今後さらに拡大する予定です。

アパレル資材メーカー 江澤幸将さん
「(ベトナムの人材は)勤勉でまじめな印象をすごく受けます。
非常にきめ細かい仕事をしてくれているという印象です。」



日本企業のベトナム進出をさらに後押ししているのが、日本で働いた経験をもつ人材の多さです。

ホーチミン郊外にある部品加工メーカー。
日本の中小企業3社が出資して設立しました。
出資した日本企業が現地の社長に選んだのは、かつて日本で技能実習生として学んだベトナム人のレ・バン・ティエンさんです。



親会社社長 柿沼正博さん
「(彼は)我々と同じような考え方を持っていますから、すごくすばらしいと思います。
レ・バン(ティエン)社長を信頼して、マネジメントを全て任せています。」



社長に抜てきされたティエンさん。
ティエンさんは2007年から3年間、技能実習生として群馬県太田市の金属加工の企業で働きました。




日本で働きながら学ぶ「技能実習制度」。
中国からの実習生の数が頭打ちとなる一方、ベトナムからの実習生は急増。
今後、中国を追い抜くと見られています。
90年代に制度が始まってから、日本で学んだベトナム人は、あわせて10万人以上に上ります。

日本とベトナム、両方の事情を知るティエンさんのような元・実習生は、ベトナムに進出しようとする日本企業にとって大きな戦力になっています。

部品加工メーカー社長 レ・バン・ティエンさん
「みなさん、不良品があった時の対応こそ最も重要です。」

ティエンさんの会社は、日本企業のやり方を取り入れ、設立から3年目で黒字を達成しました。
今後は、さらに事業を拡大しようとしています。

部品加工メーカー社長 レ・バン・ティエンさん
「3年間で、機械加工はもちろん、日本人の考え方、やり方を勉強しました。
日本のやり方をベトナムでやりたいと思います。」



一方、ベトナム側が日本に期待をかけているのが、介護の分野です。
ベトナム北部にある看護大学です。
今年(2017年)1月、新たに日本語のコースを新設しました。
去年、日本で法律が改正され、ベトナムからの介護人材の派遣が本格化すると見込んでいます。

学生
「ベトナムを発展させるため、日本に行って理解を深めたいです。」




この日、大阪から介護施設の代表が視察に訪れました。
求人を出してもほとんど応募がなく、深刻化する人材不足を解消するにはベトナムの若い労働力を借りるしかないと考えています。




学生
「はじめまして、私はリエンと申します。
ハノイから来ました。
どうぞよろしくお願いします!」

介護施設代表 中尾俊平さん
「すごく元気でいいと思います。」

介護施設代表 中尾俊平さん
「介護の技術や知識はこれからだと思いますが、日本に来て自分の力を介護の世界で生かしたいと思ってくれる気持ちはすごく感じたので、早く日本に来て頂きたいというイメージがすごく持てました。」



大学では今後、日本から講師を招き、食事の介助や着替えの手伝いなど介護についても本格的に教える予定です。




看護大学 副学長
「日本で働きたいというニーズはとても高いです。」




高齢化が進む日本と若い人材が豊富なベトナム。
新たな分野で連携が進み始めています。


ベトナムの狙いは

佐藤
「取材にあたっているハノイ支局の横田記者に聞きます。
日本とベトナムの関係、非常に深まっていると感じましたが、ベトナム側の狙いはどこにあるのでしょうか?」

横田晃洋支局長(ハノイ支局)
「ベトナムにとっては、何よりも経済成長を持続し国民を豊かにすることが最重要課題です。
ベトナムは『ドイモイ』と呼ばれる改革・開放政策で市場経済システムを取り入れ、外国からの投資を積極的に呼び込み、高い経済成長を実現してきました。
政府は2020年までに工業製品を主要な輸出品にするという目標を掲げており、日本からの投資拡大に期待をしています。

ところが、ベトナムへの投資額で日本は韓国に大きく溝を開けられているのが実態です。
韓国はサムスンやLG電子などが進出して大規模な工場を次々に建設し、これまでの投資額は500億ドル、5兆円を超えています。
ベトナム政府要人の日本に対する決まり文句は『日本はベトナムにとって最大の援助国だが投資は2番。ぜひ投資も1番になってほしい』というものです。
ベトナムとしては日韓を競わせて、さらに自国の経済発展に結びつけたいという思惑があります。」



安全保障 今後の関係は

田中
「一方で中国が南シナ海などへの海洋進出を強める中、安全保障面で両国はどんな関係を築こうとしているのでしょうか?」

横田記者
「中国の一方的な海洋進出に反対するという点で両国は一致していますが、実際の対応には温度差があります。
日本にとってベトナムは、対中国で鍵となる重要な国です。

日本はASEANなど多国間協議の場で中国をけん制したい考えですが、これまで強硬姿勢だったフィリピンが中国に歩み寄る姿勢に転換。
日本としては、ベトナムを失うわけにはいきません。
一方のベトナムも、中国をけん制する上で日本は重要なカードの1つと認識している。
しかし、中国は同じ社会主義の国で歴史的・政治的なつながりが強いという側面があります。
また、国境を接しているという脅威もあり、表立って強硬な姿勢はなかなかとりづらいんです。
日本とベトナム、微妙な温度差がある中で、連携をさらに深め、両国関係を強固なものにできるかどうかが今後の焦点です。」

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