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特集

2017年1月25日(水)

テクノロジーが教育を変える 世界の『エドテック』最前線

 
放送した内容をご覧いただけます

世界をリードしてきたITの一流企業や大物たちが、熱い視線を注ぐ新たな分野。
それは…。




 

ビル・ゲイツ氏
「技術革命で教育を進化させる。」





 

今、最先端の技術を教育の現場に活用する動き「エドテック」が、アメリカやヨーロッパなど世界で注目されているのです。
バーチャルリアリティーや人工知能の利用が進む中、教育現場にも大きな変化が起きようとしています。
テクノロジーで教育に革命を起こす「エドテック」。
その最前線に迫ります。

 

佐藤
「『エドテック』という言葉。
“初めて耳にする”という方も多いかもしれません。
この言葉は“エデュケーション=教育”と“テクノロジー=技術”を組み合わせた造語です。」

 

田中
「インターネットやデジタル機器が職場や家庭のあらゆる場面に浸透する中、教育にもテクノロジーの波が押し寄せています。」

 

佐藤
「こちら、ロンドンで始まった世界最大のエドテックの展示会です。
100か国以上の教育関係者と、900以上の企業が参加しています。
紹介されたのはバーチャルリアリティーなど、さまざまな装置を使った教材。
会場には学校の先生や子どもたちも訪れ、熱い視線を送っていました。
エドテック市場は、来年(2018年)には、世界で6兆円規模になるとも言われています。」

 

参加企業の担当者
「エドテックは、大きなビジネスチャンスです。」





 

田中
「さて、このエドテック。
教育現場でどのように活用され、何が変わり始めているのか。
急速に導入が進んでいるアメリカを取材しました。」

教育が変わる!“エドテック”最前線

リポート:藤田享子記者(国際部)

シリコンバレーにある画像機器メーカーが開発した、こちらの製品。
パソコンの画面から浮かび上がったのは、鼓動する心臓です。
バーチャルリアリティーなどの技術を使って、3次元で表示されています。

ペンを操作すると、心臓内部で弁が開く様子が映し出されます。
実際には目にできないものを、まるで実物があるかのように観察できるのが特長です。




 

ニューヨーク州にあるこの中学校では、理科の授業に導入しています。
生徒たちが観察しているのは生き物の細胞から取り出した「核」です。
これまでは写真などを使って学習していましたが、この装置では拡大した立体画像を自在に動かしながら観察することができます。

生徒
「これは何?」

生徒
「次はどうするの?」

生徒たちの学習意欲が高まり、授業中の質問やクラスメートとの議論が増えたと言います。

教師
「ゲームに慣れた今の子どもたちには最適です。
すぐに慣れて自然に学んでいます
保護者にも喜ばれています。」


 

幼い子どもたちの学習にも最新技術が役立てられています。
こちらは、幼児向けの算数アプリです。
画面の中央にある数字。
どんな数字を足し合わせると完成するのかを考えます。

答えだと思う数字のブロックを、タブレットのカメラにかざします。
正解すると、さらに次々と問題が出されていきます。
先生や親がいなくても、ゲーム感覚で算数の勉強に取り組めるのです。


 

母親
「娘は楽しみながら使っているわ。
無理やり座らせて問題集を解かせる必要がないのよ。」


 

エドテックによって特に大きな変化を遂げているのが、大学の教育現場です。
オフィスビルにあるこちらの大学。
学生の数は300人にのぼりますが、その姿は見当たりません。



 

講師が授業をすべてオンラインで行っているからです。
こちらは14人が参加する授業。
講義はなく、もっぱらディスカッション形式で進められます。
この日は、経済成長の見通しなど、将来を予測する手法について議論しました。

講師
「(将来の予測が難しい分野について)何か例を挙げられる人は?」

学生
「例えば、気候変動ですね。」

それぞれの学生が何秒間、どんな発言をしたかをコンピューターが記録。
積極的でない学生の画面は緑色に変わり、意見を述べるよう求められます。
さらに、他の学生が発言している間は「いいね」や絵文字で、その内容を評価。
常に集中しなければなりません。
こうして議論を深める中で、学生たちは、より高度な思考を身につけることができるのだと言います。

ミネルバ大学 コスリン教授
「学生にとって最も重要なことは、よく考え抜くことです。
大講堂に座って授業を聞くというのは、学ぶ上では最悪の環境だと言えます。」



 

さらに、オンラインでどこからでも授業が受けられるため、学生たちはキャンパスに縛られず世界各地を訪れ、さまざまな経験をつむことができます。
まだ開校から3年ですが、世界中から学生たちが入学を希望。
ケンブリッジ大学などの名門大学を辞退して、入学する学生も数多くいます。

学生
「パソコンを開けば、すぐに授業に出席できます。
とても効率的に時間を使えます。」

学生
「これまでの大学は伝統に縛られています。
自分で学び方を選べる自由さが大事だと思います。」

 

アメリカの現状は?

田中
「スタジオには、取材した国際部の藤田記者です。」

佐藤
「エドテックはさまざまな教育の現場に広がっているんですね?」

藤田享子記者(国際部)
「そうなんです。
アメリカでは、このほかにも低所得者層の子どもが通う高校に生徒一人一人のレベルに合った数学などの問題をコンピューターが自動で出題するシステムを導入したところ、生徒全員が大学進学の資格を取得するまで学力が伸びたというケースも報告されています。
アメリカは、国際学力調査で科学の順位が25位と先進国の中では低く、アメリカ政府はエドテックを学力アップの切り札と見て、学校側に対して最新の機器の購入費を支援するなど対策に乗り出しています。」

 

世界での広がりは?

田中
「一方で、技術が進んでいるアメリカなどの先進国とそれ以外の国で教育格差が広がってしまうのではないかと思うんですけれども、アメリカ以外の国にもエドテックは広がっているのでしょうか?」

藤田記者
「確かに今はアメリカが最も進んでいるんですが、一方で、先進国だけでなく途上国にも広げようという動きも出ています。
例えば、ケニアでは、地元の企業が貧困層の子どもたちを対象に、携帯電話を使って1か月わずか50円でアクセスできるオンラインの問題集を開発しました。
分からないところはメールで質問できる仕組みも導入して、利用が広がってきています。
さらに、国連も教育格差を埋める有効な手段として、世界各地でデジタル機器の導入などを促進させる取り組みも進めています。」

 

活用 どこまで進む?

佐藤
「今後、エドテックの活用はどこまで進みそうですか?」

藤田記者
「教育のあらゆる分野に活用が広がりそうです。
例えば、マサチューセッツ工科大学では子どもの靴や机に小さなセンサーを入れて、クラスメートや教師とどこで、どのくらい一緒にいたのかを計測する研究が行われています。
仲間外れにされている子どもがいないかや、教師が全員に目を配っているかを客観的に把握でき、生徒指導にも役立てられると期待されています。
ただ、一方で生徒や教師を監視するものだとして賛否両論の議論も予想されるほか、エドテックに偏りすぎると、子どもたちの創造性や自然とのふれあいなど、実体験を通じた学びのチャンスが奪われるといった議論も出ているんです。」

エドテックの専門家 ベッツィー・コルコランさん
「テクノロジーをどう使うのかが重要です。
(エドテックは)多くの選択肢を提供するだけです。
正しいツールを選べば、よい結果を生むでしょう。」


 

藤田記者
「エドテックの活用が各地でさらに広がると見られる中、子どもたちにとって“よりよい教育とは何か”、従来の教育とのバランスも考えながら進めていく必要がありそうです。」
 

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