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特集

2017年1月5日(木)

シリーズ『2017世界は…』 (2)トランプ次期大統領でアジアは?

 
放送した内容をご覧いただけます

2週間余りに迫ったトランプ新政権の誕生。
新年早々、ツイッターで中国を批判しました。





“中国は一方的な貿易でアメリカから巨額の金と富を吸い上げているが、北朝鮮をめぐっては協力したがらない。”





中国への批判を繰り返してきたトランプ氏。

南シナ海での人工島の造成。






通貨を意図的に安くしている為替操作国。






そして、中国政府が掲げる「1つの中国」の原則に沿った政策を堅持するのかは中国の対応次第だと発言。
台湾政策を変更する可能性まで示唆しました。
これに対して、中国は強い懸念を表明しています。

中国外務省 耿爽報道官
「アメリカの新政権、そして指導者は台湾問題の敏感さを十分に認識し、『1つの中国』の原則を引き続き堅持するよう強く促す。」




トランプ次期大統領で、アメリカと中国の関係はどうなるのか。
アジアのパワーバランスはどう変わるのか。
展望します。

宮家さんの注目点

田中
「激動する世界を展望する、シリーズ『2017世界は…』。
2日目の今日(5日)は、トランプ政権の発足によって、アジアのパワーバランスはどう変わるのか。
アメリカと中国の関係を軸に見ていきます。」


佐藤
「スタジオには、元外交官で国際情勢に詳しいキヤノングローバル戦略研究所研究主幹・宮家邦彦(みやけ・くにひこ)さんにお越しいただいています。」

田中
「宮家さんにはまず、トランプ政権のもとで、米中関係、そしてアジアのパワーバランスがどう変わるのか。
どこに注目したらいいか、キーワードを用意していただきました。」

キヤノングローバル戦略研究所研究主幹 宮家邦彦さん
「米中間で、すぐにというわけではないんですが、誤算が生じる可能性があると思っているんですよね。
それはアメリカ側・中国側の両方に問題がありうるということなんですが、まずアメリカの外交安全保障のチーム。
新しい人たちが今選ばれているわけですが、どうも中国に関してはあまり詳しい人がいないようだし、貿易経済問題と外交安全保障の問題、これがどの程度うまく連携ができるのか、いまだに未知数の部分があるんですよね。
これがまず1つ。
2つ目は、中国の国内では2017年というのは党大会の年ですから、当然、習近平氏が再選を狙ってくると。
その時に、国内でいろいろな取り引き・駆け引きがあると思うんですが、その中でもし、アメリカに対して弱腰すぎるということを言われても困るんですよね。
そうすると、どちらも一貫性のない部分が出てきて、それが間違ったら、誤算に基づく何らかの衝突につながってしまうのではないかというおそれが若干あるということです。」

田中
「そういうリスクがあるということですね。
宮家さんにはこの後もたっぷりお話を伺いたいと思います。
では、トランプ次期大統領のもとでアジアはどう変わるのか。
まずは、『1つの中国』をめぐるトランプ氏の発言で注目されている、台湾を見ていきます。」

佐藤
「台湾はこれまで、アメリカを安全保障上の後ろ盾として中国との間で微妙なバランスを維持してきました。
トランプ氏がこれまでの台湾政策を変更する可能性を示唆したことで、台湾をめぐる情勢の不透明感が増しています。」





トランプ政権で台湾は?

リポート:田島則之支局長(台湾支局)

先月(12月)行われたトランプ氏と台湾の蔡英文総統の電話会談。
台湾のメディアは、アメリカの次期大統領が、正式な外交関係のない台湾の総統と意見を交わすのはきわめて異例だとして、「歴史的な会談だ」と伝えました。

市民
「アメリカとの関係がさらに良くなるでしょう。」

市民
「世界の関心を台湾に向けさせたことは、これまでと違います。」


さらにトランプ氏は、中国政府が掲げる「1つの中国」の原則に沿った政策を堅持するかは中国の対応次第だとして、これまでの台湾政策を変更する可能性まで示唆しました。
これに対して、中国は強い懸念を表明。



中国外務省 耿爽報道官
「アメリカの新政権と指導者は、台湾問題の敏感さを十分に認識し、『1つの中国』の原則を引き続き堅持するよう強く促す。」




中国は「1つの中国」の原則を受け入れない蔡英文政権への圧力を強めていて、先月、アフリカのサントメ・プリンシペが台湾との外交関係の断絶を決めたのも、背景に中国の影響力があるとみられています。

さらに先月、中国海軍の空母が初めて太平洋に出て、台湾の南部を回るようにして通過。
台湾のメディアは、アメリカと台湾に対するけん制だという見方を伝えています。
蔡英文総統は、トランプ政権のもとで台湾をめぐる情勢がさらに不透明になるとして、警戒感を示しています。

台湾 蔡英文総統
「2017年、我々は変化の局面に直面するだろう。
国際情勢の変化への対応に重点を置くことになる。」



国際関係の専門家は、蔡英文政権はトランプ政権の台湾政策に翻弄される懸念を抱いていると指摘します。

淡江大学 国際研究学院 王高成院長
「蔡英文政権は、そんなに甘くは考えてはいないと思う。
むしろトランプ氏の『1つの中国』政策は、随時変わったり取り引き材料にされたり、台湾の利益を損ねる可能性もあることを懸念していると思う。」




「1つの中国」めぐる発言 中国政府は?

田中
「では、中国側はどう見ているのでしょうか。
中国総局の戸川記者に聞きます。
『1つの中国』の原則をめぐるトランプ氏の発言、中国政府はどう受け止めていますか?」

戸川武記者(中国総局)
「困惑して、どうしていいかわからないというのが実際だと思います。
そのぐらいの大きな衝撃です。
中国にとって、台湾は『核心的利益』といわれる、一切、譲歩が許されない最重要の問題です。
その敏感な問題をさも簡単にとりあげ、取り引きの材料に使おうという姿勢は、中国としては絶対に受け入れられません。
しかし中国はこれまでのところ、トランプ氏への激しい批判は控えつつ、中国との経済協力はアメリカの利益にもなるとアピールしているんです。」

佐藤
「なぜ、中国は批判を控えているんでしょうか?」

戸川記者
「中国はとりわけ、今、アメリカとの安定した関係を望んでいるんです。
中国では今年(2017年)、指導部メンバーが交代する5年に1度の共産党大会が開かれ、政治的に最も敏感な時期を迎えます。
中国外務省も新年最初の記者会見で、今年の外交目標のトップとして『党大会成功のための外部環境を整えること』をあげていて、習近平指導部は例年以上に安定した米中関係を目指したい考えです。
ただ、王毅外相が、米中関係は『不確実な要素がある』とみずから認めているように、中国政府もまだ新政権の対中政策を見通せていません。
中国としては、貿易摩擦や南シナ海といった主要な問題で、トランプ政権とどう対じしていくのか、当面は手探りの状態が続きそうです。」


「1つの中国」めぐる発言の真意は?

佐藤
「宮家さんは、この『1つの中国』をめぐるトランプ氏の発言、真意はどこにあると考えてらっしゃいますか?」

キヤノングローバル戦略研究所研究主幹 宮家邦彦さん
「ビジネスの交渉みたいに考えていて、そして『1つの中国』というあんなに敏感な問題を、あたかも中国との、経済的な、貿易上の利益を得るか得ないかの議論の中での取り引き材料の1つとしてもし使おうとしているとすれば、私は非常に危ないんじゃないかと思っているんです。
先ほども北京から報告があった通り、中国としては譲歩できない部分が非常に大きいですね。
ですから1つ間違えると、相当大きな行き違いになってしまう、もしくは誤算に基づく何らかの緊張関係が出てしまうので、何とかそれを中国側も抑えたい。
しかしトランプ政権の中で、いったいどこまであの人たちがこの敏感さを理解しているかというところはまだ未知数だというのが、私は気になるところです。」


「1つの中国」 外交カード?

田中
「ただ、その取り引き材料が有効だとみれば、それをカードとして使い続けるのではないかという気がするんですが、いかがでしょうか?」

キヤノングローバル戦略研究所研究主幹 宮家邦彦さん
「おそらくそれをやっていて、ある程度成功するかもしれません。
中国側は当然、最初は下手に出ますよね。

しかし最終的にはアメリカと話し合いで何とか進めていこうとしているんだけれども、もしおっしゃるような形で、『これはうまくいくんだ』と、仮に誤解をして、そしてそれを使い続けると、いずれ『Moment of Truth=真実の時』がくるわけですよ。
中国側が『これはとても受け入れられない』となった時に、実は非常に危険な事態になる可能性すらあり得るので、私はトランプ政権側にもう少し慎重さを求めたいなと思っています。」

田中
「その『真実の時』というのは、具体的には?」

キヤノングローバル戦略研究所研究主幹 宮家邦彦さん
「やはり『1つの中国』の問題ですから、台湾は中国の一部であると。
アメリカはその中国の主張というものを認識しているわけですね。
しかしながら、もし1972年からずっと続けてきたこの原則をひっくり返そうとすることになれば、中国側としては、共産党の存続というか、統治の政党制にも関わる問題ですから、やはり台湾は中国の一部である以上、独立をする、そういう形になれば当然、武力行使も含めた最終的な判断をせざるをえないと彼らは腹をくくっていると思うんです。
その意味で『Moment of Truth=真実の時』というのは、まさにその判断が求められるような事態になりかねないという意味では重要だと思っています。」

田中
「その『真実の時』が訪れる可能性というのはどうご覧になっていますか?」

キヤノングローバル戦略研究所研究主幹 宮家邦彦さん
「今まではその『真実の時』が訪れないように、70年代からずっといろいろな妥協を繰り返しながら、現状維持の政策を続けてきたわけなので、やはりこれはトランプ氏ご自身もそうですが、周りにいる関係者が、これまで積み重ねてきた外交的な蓄積をよく理解することから始まると思うので、もしそれがうまくいけば、それほど大きな問題にならないと信じたいです。
ただし、最初の数か月〜1年くらいはいろいろギクシャクすることが起こりうるかもしれません。
そこは慎重に見ていかなければならないと思います。」

田中
「相当、神経戦が繰り広げられる?」

キヤノングローバル戦略研究所研究主幹 宮家邦彦さん
「そうでしょうね。
もうすでに台湾問題については中国側も反応してますよね。
例えば無人の潜水調査機のようなものをとってみたり、いくつかジャブがもう始まっていますから、これが本格的な殴り合いにならないように、われわれも十分見ていかなければならないと思っています。」

田中
「先ほどおっしゃった、中国側がいざという時は軍事的選択肢も考えるかもしれないというのは、具体的にはどういうことでしょうか?
それが急に来るんでしょうか、それとも経済的な措置が?」

キヤノングローバル戦略研究所研究主幹 宮家邦彦さん
「台湾のいわゆる政権も、決して独立しようと考えているわけではないでしょう。
もしそんなことになれば、当然、中国側はメンツがつぶれてしまいますから、何らかの行動をとらざるをえない。
その中には武力攻撃も含まれると思っています。
しかしながら、それを避けるために今までやってきたことの積み重ねというのがあって、台湾も、それは民進党であれ、そこは理解をしていると思いたいです。」


南シナ海問題 米中の緊張高まる?

田中
「一方で、南シナ海をめぐってはトランプ氏はやはり強硬な発言もあり、また『力による平和』ということばを使って、太平洋での海軍プレゼンスを上げようという方針も示していますけれども、それによって南シナ海をめぐる米中の緊張というのが高まるのではないでしょうか?」

キヤノングローバル戦略研究所研究主幹 宮家邦彦さん
「今までトランプ氏が負担をどうのこうのと言ってはいますが、それでいながら、オバマ外交については常に批判的であって、オバマ大統領がやってきたことに対しては常に否定ないしやり直しというところが多いわけです。
南シナ海もその1つかもしれません。
今まで中国側がいわゆる岩をどんどん埋め立てて人工島をつくってきたわけですが、それに対してオバマ政権はあまり強い対応をしなかったんですね。
その部分については、おそらくトランプ氏はより強い態度を示そうとするだろうと思います。
しかしながら、それをへたにやると、南シナ海の問題も中国にとっては『第一列島線』の中、そして『九段線』という歴史的な権利のある場所だというふうに言っているわけですから、そこで1つ間違えると、ここでも同じような誤算というものが起こりうるという意味では、心配すべき場所だと思います。」


米中のパワーバランスは?

田中
「今後この南シナ海をめぐって、米中のパワーバランスというのはどうなると見ていますか?」

キヤノングローバル戦略研究所研究主幹 宮家邦彦さん
「今の段階では、オバマ政権の8年間のあいだに、中国側がいくつか占領している、もしくは実効支配している地域について埋め立てをして、そしていくつかの部分についてはすでに埋め立てが終わって滑走路までつくっているということですね。

今、いわゆるパラセルというところと、それからスプラトリー、この2つに大きな3,000メートル級の滑走路がたくさんできているんですが、あともう1つ、このスカボロー礁というのが、フィリピンから220キロくらい離れたところなんですが、ここがまだ岩のままなんですよね。
ところが実効支配は中国がしていますから、もしこのスカボロー礁のところで埋め立てが始まって、同じように3,000メートル級の滑走路ができるということになりますと、今までは点と線である程度支配してきた部分が面まで、海にせよ空にせよ、中国側の影響力が強まっていくと。
これは本当にいいんだろうかという議論は、これはある意味で 『Moment of Truth』かもしれませんね。」

田中
「ここを取られるとかなりバランスが中国の方に傾いてしまうと。」

キヤノングローバル戦略研究所研究主幹 宮家邦彦さん
「そして『第一列島線』というのがこの辺にあるんですが、この中に米海軍は入れない、入らないでくれというようなことになれば、この地域だけではありますが、東シナ海・南シナ海を含めて勢力バランスが変わっていく可能性は十分あるかもしれません。」

田中
「その意味で、フィリピンのドゥテルテ大統領をめぐるせめぎ合いというのも焦点になってきますよね。」

キヤノングローバル戦略研究所研究主幹 宮家邦彦さん
「ドゥテルテ大統領もオバマ大統領とずいぶんケンカをされてましたけど、トランプ氏とは息が合うかどうかわかりませんが、いずれにせよドゥテルテ氏は反米ナショナリストでもありますから、アメリカとの関係をうまく使いながら自国の経済的な利益を最大化しようとするだろうと思います。」

田中
「続いては、朝鮮半島情勢についてです。
北朝鮮が核実験やミサイルの開発を進める中、トランプ次期政権のもと、アメリカと北朝鮮の関係はどうなっていくのか。
年明け早々、応酬が始まっています。」


トランプ政権で朝鮮半島は

元日の朝鮮中央テレビ。
キム・ジョンウン朝鮮労働党委員長が、今年の国政運営の方針を示す演説を放送しました。




北朝鮮 キム・ジョンウン朝鮮労働党委員長
「繁栄の新たな歴史を作った最先端装備の開発が活発化し、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験の準備は最終段階だ。」



アメリカ本土を攻撃するための核・ミサイル開発の技術が向上しているとアピールするねらいがあるとみられます。





これに対してトランプ氏は自身のツイッターで、「北朝鮮はアメリカに到達する核兵器の開発の最終段階にあると言うが、そんなことは起きない」とコメント。
その上で、北朝鮮に影響力を持つ中国に対し…。

“中国は一方的な貿易でアメリカから巨額の金と富を吸い上げているが、北朝鮮をめぐっては協力したがらない。”




対応が十分ではないと批判しました。
これに中国政府は、すぐに反発しました。

中国外務省 耿爽報道官
「北朝鮮の核問題の解決に向けた中国の努力は、誰の目にも明らかだ。」





リポート:安永和史記者(ソウル支局)

核実験と事実上の長距離弾道ミサイルの発射を繰り返す北朝鮮に、韓国は警戒を強めています。

韓国の公共放送・KBSは元日のニュースで、北朝鮮の挑発に備える韓国軍の動向を大きく伝えました。





韓国軍の早期警戒管制機に乗っているのは軍の制服組のトップ、イ・スンジン(李淳鎮)合同参謀本部議長です。
北朝鮮に対する警戒態勢に不備はないか、みずから確認しました。

韓国軍 イ・スンジン(李淳鎮)合同参謀本部議長
「特異な動向はないか?」


艦長
「隙のない警戒態勢を維持し、領海を死守します。」




戦闘機パイロット
「敵が挑発すれば、骨にしみるほど後悔させます。」




さらに韓国国防省は昨日(5日)、朝鮮半島有事の際に北朝鮮に潜入し、キム・ジョンウン委員長など指導部を攻撃することを目的とした特殊部隊を、年内に新設することを明らかにしました。
トランプ氏の勝利で、不透明感を増す朝鮮半島情勢。
核実験やミサイル発射を繰り返す北朝鮮に対し、韓国政府は対応を急いでいます。



朝鮮半島情勢に変化は?

田中
「韓国のソウルと中継がつながっています。
トランプ政権の発足で、朝鮮半島情勢はどのような変化がありそうですか?」

安永和史記者(ソウル支局)
「今のところは、まだはっきりしません。
北朝鮮に対し、トランプ次期大統領は強硬な発言をしている一方で、選挙期間中、キム・ジョンウン委員長との対話に前向きな発言もしていました。


もし、北朝鮮が核開発などをめぐり何らかの譲歩案を示してアメリカに対話を呼びかけ、それにアメリカが応じた場合、大きく状況が変化する可能性はあります。
一方、トランプ氏は、韓国を含む同盟国の防衛について、アメリカの関与を減らし、自主的な軍備の増強を求めると主張しました。
もしそうなった場合、韓国国内では、一部から出ている核武装論などが盛り上がるおそれもあります。
トランプ氏が大統領の就任後、朝鮮半島をめぐって実際にどのような政策を打ち出すのか、韓国政府は慎重に見極めようとしています。」


トランプ政権の北朝鮮政策は?

田中
「今の中継にもありましたが、北朝鮮に対してはトランプ氏、硬軟取り混ぜた発言をしていますが…。」

キヤノングローバル戦略研究所研究主幹 宮家邦彦さん
「まだ未知数ではないかと思いますね。
十分な情報をまだ持っていないと思いますから。
それから、選挙中にキム・ジョンウン氏と話すと言っていましたが、これ、米朝が話すということは北朝鮮が核保有国であることを認めるに等しいような、非常に大きな決断ですから、それが簡単にできるとは私は思わないんです。
その意味では、いくらトランプ氏が大統領とはいえ、急激に朝鮮半島の情勢が動くようには思いませんし、韓国ではこれから大統領選挙があるわけですから、少し慎重になるだろうと思います。
ただ、中長期的に考えた場合、それが4年後か20年後かわかりませんが、間違いなく今起きていることは、北朝鮮がアメリカに届く戦略核ミサイル部隊を作ろうとしていて、そしてアメリカに対して強い抑止力を持とうとしているわけですよね。
しかしこれはアメリカ側から見れば北朝鮮のICBM(大陸間弾道ミサイル)が米本土に届くかもしれないということですよね。
ほかの国にもいろいろICBMがありますが、本当にアメリカに対してICBMを撃ち込むかもしれないという国はそれほどないですから、これはアメリカにとって決して座視できるものではないと思うんです。
ということになりますと、この北朝鮮問題も、今のまま北朝鮮に対する一種の融和政策というか、これがある程度効いていることは事実でしょうが、じゃあ最終的にはどうなるか。
また『Moment of Truth=真実の時』が来るわけですね。
北朝鮮がアメリカを直接狙うミサイルを持ちうる時、この時にアメリカがどう対応するかは全く別の問題だと思います。」

田中
「仮にそれがトランプ政権の4年間のうちに起きたとすれば、どのような対応をすると考えますか?」

キヤノングローバル戦略研究所研究主幹 宮家邦彦さん
「アメリカがそのような状態を座視する可能性は低いと思っています。
したがって、アメリカ側からは何らかの作戦を含めた強い対応をしたいと思う、そしてそれを恐らく韓国にも連絡するでしょうね。
しかし韓国も、そんな形で火花が大きくなってしまうと困りますから、そこは非常に難しい判断になるだろうと思いますが、アメリカを狙う核兵器が抑止されない状態というものを座視することは、私はないと思います。」


どう出る 北朝鮮?

田中
「そうしたトランプ政権に対して、一方の北朝鮮はどのように出てくると見ていますか?」

キヤノングローバル戦略研究所研究主幹 宮家邦彦さん
「今までも、ある時は『ほほえみ外交』、ある時はこわもてで、そしてそれを繰り返しながら、自分たちが得る経済的な利益、もしくは軍事的な利益を最大化してきたんですね。
これはお父さんの代からずっと続いていることなので、今のところそれが続いているようです。
しかし、それが永久に続くかどうかはわからないけれども、おそらく今の状態では一方でICBMの開発は進めながらも、南の方で大統領選挙がある。
したがって、これ以上あまり刺激をして保守政権になるよりは、より野党が勝ちやすい状況を作りたいということを考えれば、そんなに大きな、強い反応を今の段階でするのは得策ではないと思っています。」


日本への影響は?

田中
「そして最後に日本についてお伺いしたいんですが、このトランプ政権の発足によって、アジアのパワーバランス、特に米中関係が変わることによって、日本はどのような影響を受けると見ていますか?」

キヤノングローバル戦略研究所研究主幹 宮家邦彦さん
「まず、パワーバランスが変わる可能性というのは十分あると思っていなければならないと思います。
他方で、よく考えてみると安倍氏も4年たって、G7の中で実は古参になっているんですよね。
アメリカ大統領もフランス大統領も、イタリアもかわる、もしかしたらドイツもかわるかもしれない。
イギリスももうかわってしまった。
そうなると、日本がG7の中でとれるリーダーシップがとても強くなる。
アメリカ、イギリス、EUも含めてですが、先進の民主主義諸国が一体、このような状況で何をすべきなのかということを、ある意味でリーダーシップをとらなければならない立場になってくると思うんですね。
これは今までの日本外交ではあり得なかったことですから、これはある意味で危ない時期が来るのかもしれませんが、それと同時にチャンスでもある。
日本の外交にとっては、リーダーシップをとるチャンスでもあると私は思っています。」

田中
「一方でトランプ政権は、同盟国・日本に対してさまざまな要求を強めてくる可能性がありますが、それに対して日本はどう対応していくべきなんでしょうか?」

キヤノングローバル戦略研究所研究主幹 宮家邦彦さん
「まず駐留軍経費の負担についてはもう十分やっていますから、これ以上、私は日本が払うことはないと思っています。
ただ、おそらくアメリカが言ってくるのは防衛費の増額であるとか、もしくは日米の軍事的な役割分担のことを言ってくる可能性がありますから、それはもう外国に言われるまでもなく、日本がやるべきことをちゃんとやっていくと、これが基本であるべきだと思ってます。」

田中
「日本にとってもさまざまな決断の時がやって来たということでしょうか。」

キヤノングローバル戦略研究所研究主幹 宮家邦彦さん
「そうですね、これから数年間はその難しいかじ取りが求められると思います。」

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