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特集

2016年12月20日(火)

追跡 「うなぎ」のアジア闇ルート

 
放送した内容をご覧いただけます

田中
「日本人が大好きな“ウナギ”。
このままでは簡単に食べられなくなるかもしれません。」

日本人が食べている、ウナギ。
99%が養殖ものです。
その稚魚の値段が5年で3倍以上に高騰。

1キロ300万円ほどに上ることもあり、「白いダイヤ」とも呼ばれています。
なぜこんなことになったのか?。
背景には、ウナギの数が激減していることに加え、高騰に拍車をかける、ある理由が。
それは、ウナギの稚魚をめぐる「不透明な国際取引」です。
NHKの取材班は、国際的な闇の流通ルートを徹底追跡。
知られざるその一端が明らかになりました。


田中
「今、国内でウナギの値段が上がっています。
ある老舗のウナギ店では、うな丼の並が3,300円。
10年前に比べて1,400円も値上がりしているといいます。」

佐藤
「実は、日本で育つウナギの稚魚=シラスウナギのおよそ半分が外国産です。
値段が高騰している背景には、世界全体でこうしたシラスウナギが枯渇している状況があります。
さらに拍車をかけているのが、日本が10年ほど前までほとんどを輸入していた台湾の動きです。

台湾ではシラスウナギの枯渇を受け、2007年、資源保護のために輸出禁止に踏み切りました。
そこで作り上げられたのが、闇の取引ルートです。」

田中
「シラスウナギの価格高騰につながっている、闇ルートの存在。
その実態を追いました。」

“白いダイヤ” ウナギ密輸ルートを追え!

台湾北東部の宜蘭県にある港です。
11月にシラスウナギ漁が解禁され、最盛期を迎えていました。

漁師
「300匹から400匹。」




この日の取引価格は、この1袋でおよそ10万円。
台湾では10年で相場が7倍に高騰しているといいます。

「もうかりますか?」

漁師
「もうかるよ。」

台湾ではシラスウナギの輸出が禁止されているため、台湾内で養殖されているはずです。
しかし多くのシラスウナギは、台湾の養殖業者の元には届いていません。

去年(2015年)廃業に追い込まれた、ウナギの養殖場です。
シラスウナギの価格が高騰し、手が出せなくなったといいます。

元養殖業者
「(この業界は)消えていきますね、必然です。
シラスウナギが高すぎるからです。
状況は深刻になっています。」


業界団体の調査によると、2012年に漁獲されたシラスウナギが3.2トンあるのに対し、台湾で養殖に使われた量は、わずか0.8トンでした。
取材を進めると、密輸を行っている人物にたどりつきました。
男性は、複数あるという密輸ルートの1つについて具体的に話しました。

その1つが金門島。
中国大陸の近くにある、台湾の離島です。
中台の交流が進み、最近は大陸側から年間30万人以上が訪れます。



密輸業者
「台湾から金門島にシラスウナギを運び、金門島から船に乗り換えて、一般の観光客と同じように手荷物として持ち込み、(中国の)アモイまで行きます。」

船を使って荷物を運ぶ際、当局はどこまでチェックしているのか。
確かめることにしました。

用意したのは、シラスウナギに見立てた樹脂製の擬似餌。
これを観光客に紛れて、台湾のスタッフが運びます。




ターミナルには、預け入れ荷物に生き物を入れることを禁止するという表示がありました。





手荷物検査を1時間余り観察しましたが、乗客の荷物を開けて検査する様子は確認できませんでした。





この方法で、密輸業者は1回につきおよそ20キロ、数千万円に相当するシラスウナギを持ち込むといいます。
男性はさらに、その後のルートについても証言しました。




密輸業者
「香港を経由して日本に売るのです。
香港は自由貿易港だからですよ。
シラスウナギが香港に到着したら、正式な包装をして日本に輸出します。」


証言から見えてきたのは、台湾、中国大陸、香港を経由して日本に至るルート。
台湾から日本へ輸出すれば「密輸」ですが、輸出規制のない香港を経由させることで合法的な香港からの輸出品として運んでいます。
いわば「ロンダリング」ともいうべき、からくりがあったのです。

リポート:吉岡拓馬支局長(香港支局)

闇の取り引きルートの経由地、香港。
取材の中で、シラスウナギの輸出を行っている施設が複数あるという証言が得られました。
その1つ、香港の郊外にある施設が、場所を特定されないことを条件に取材に応じました。

シラスウナギを一時的に保管する大型の水槽。
11月下旬から翌年1月にかけて、日本へシラスウナギを送るといいます。




輸出業者
「直行便で日本のいろんな所に送ります。
福岡、東京、名古屋とか。」



今や日本に輸入されるシラスウナギの8割を占める香港。
社長は、あくまで合法的なビジネスだと強調します。

輸出業者
「(出所を)あえて知る必要はない。
注文を受けたらその要求どおりやるのが私たちの仕事なのです。」



香港にシラスウナギを密輸している男性は、闇での取引を求め、価格を高騰させているのは、日本の業者だと言います。

密輸業者
「日本人は(電話で)値段交渉してきます。
入手が難しくなるほど値段がつり上がり、今日は100万円、3日後には300万円となってしまいます。
日本人が我先にと欲しがるので、輸出するのです。」




なぜ台湾から?

田中
「ここからは、取材をした科学文化部の黒瀬記者に聞きます。
そもそも、なぜ日本はウナギを稚魚の段階で輸入しているのか。
しかも、わざわざ輸出を禁止している台湾から、ロンダリングという形を使って入れているのはなぜなんでしょうか?」

黒瀬総一郎記者(科学文化部)
「まず、稚魚で輸入するのは日本の消費者が『国産ウナギ』を好むことがあります。
輸入された稚魚でも、日本の養殖場で育てたものは『国産』になります。



そしてなぜ台湾かといいますと、実は日本でウナギの消費が集中する、夏の『土用の丑の日』にウナギの出荷を間に合わせたいという事情があります。
多くの養殖業者が採用している方法では養殖に半年間かかるため、1月上旬までに稚魚を仕入れなければなりません。

しかし日本では、1月上旬までにはシラスウナギが十分にとれません。
このため、11月から12月にかけてとれる、台湾の稚魚を求める傾向が強いんです。」


日本の消費者に求められること

佐藤
「こうして見ると、闇取引の背景には、やはり国産のウナギが好きで、しかも『土用の丑の日』に消費が集中するという日本側の事情があるというのはよくわかったんですが、これに対して世界の目も厳しくなっていると聞きますが、私たち日本の消費者には何が求められていると思いますか?」

黒瀬
「今年(2016年)10月には、野生生物の保護を図るワシントン条約の締約国会議で、不透明な国際取引の実態調査が決まりました。
ニホンウナギを守るためには漁獲制限などが必要ですが、取引が不透明な状態では、実効性のある資源管理は難しいんです。
調査の結果次第では、3年後にはニホンウナギの国際取引が厳しく制限される可能性もあります。
大切なことは、私たち消費者が、まずはこうした現実をしっかりと知ることだと思います。
国内の養殖業者やウナギ店の中には、土用の丑の日に向けて出荷が集中する状況を変えようと、独自の取り組みを始めたところもあります。
どうすれば激減するウナギを守れるのか。
一人一人が考えることが大切だと思います。」

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