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特集

2016年10月31日(月)

韓国激震 パク・クネ大統領スキャンダルの実態に迫る

 
放送した内容をご覧いただけます

田中
「韓国が騒然となっています。」

今日(10月31日)午後、検察の前に現れた渦中の女性。



チェ・スンシル氏
「国民の皆さん許してください。
死ぬほどの罪を犯してしまった。」

週末から急展開を見せている、韓国大統領府の内部資料流出問題。
重要な内部資料が、1人の民間人、チェ・スンシル氏に事前に渡されていたことが分かり、パク・クネ政権は今、窮地に立たされています。

ここに来て、支持率も急降下。
国民の批判は高まる一方です。

「(大統領は)完全に操り人形になった。
国民をばかにしている。」




政権の陰の実力者としてパク大統領を操っていたとまで言われ始めたチェ・スンシル氏。
不透明な関係の裏にあるのが、パク大統領の苛烈な半生です。
疑惑の背景に迫ります。




田中
「パク・クネ(朴槿恵)大統領をめぐる前代未聞のスキャンダル。
大統領府の内部資料を長年の友人に渡し、文書管理に関する法律に違反した可能性が指摘されています。
政治に一民間人が深く関与していたのではないかという疑惑が浮上し、衝撃が広がっています。」

佐藤
「では、これまでの経緯を見ていきます。
パク大統領が、長年の友人であるチェ・スンシル氏に政権運営について相談しているのではないかという指摘は数か月前からくすぶっていましたが、大統領側は強く否定していました。

こうした中、韓国の民間放送局・JTBCテレビが、チェ・スンシル氏が使用していたというタブレット端末を入手。
今月(10月)24日、そこに『大統領府の内部資料が多数保存されていた』と伝えたのです。

中を見てみると、大統領の演説の草稿をはじめ、高官の人事や…。





さらには日本の安倍総理大臣の特使と会談する際の応答要領。





そして前のイ・ミョンバク政権と北朝鮮との秘密接触について触れられた資料など、重要な内容も含まれていたといいます。





パク大統領が、チェ氏に頻繁に資料を送り、それをチェ氏が添削したり意見をつけて送り返していたという関係者の証言も出ています。
チェ氏は『陰の実力者』とまで言われるようになっています。
さらに、チェ氏をめぐっては、もう1つ疑惑があります。



大統領府が多数の大手企業に間接的に圧力をかけて資金を集め、チェ氏のために2つの財団を設立したという疑いが持たれているのです。
また、これらの財団の資金を、チェ氏が個人的に流用した疑惑も持ち上がっています。」

パク政権 窮地に 資料流出 疑惑の背景は

田中
「取材を続けるソウルの池畑支局長に聞きます。
チェ・スンシル氏が今日の午後、出頭しましたが、現在の最新情報はどうなっていますか?」

池畑修平支局長(ソウル支局)
「検察は、現在もチェ・スンシル氏から任意で事情を聴き続けています。
しかし、速やかに真相を解明するためとして、今晩中に身柄を拘束するのではないかという見方も出ています。」



広がる不信

佐藤
「韓国国内では、大統領に対する批判がかなり高まっているようですね?」

池畑支局長
「1987年の民主化以降、韓国政治にとっては最大の危機といえます。
各地で連日、大統領の辞任を求める抗議集会が開かれています。」

野党 国会議員
「パク大統領がこのまま留まっていて、真実が究明できますか。
責任者が処罰できますか。
再発防止できますか。」


市民
「ああ…政治は死んだ。
これ以上、パク氏を大統領として認められない。」



池畑支局長
「国の重要な政策が、実は一民間人によって左右されていた可能性が浮上したわけで、国民は大きな衝撃を受けています。
かねてから、パク大統領は周囲との意思疎通が不十分なまま政策決定をしてきたという批判がありました。
それだけに、チェ氏との不透明な関係が露呈した今となっては、パク政権が進めてきたすべての政策が不信の対象となってしまっています。」


渦中の女 チェ・スンシル氏とは

田中
「渦中の女性、チェ・スンシル氏とは、どんな人物なんでしょうか?」

池畑支局長
「年齢は60歳とされています。
実業家で、ソウルでは複数の高級住宅やビルを所有し、ドイツではホテルを経営していると伝えられていますが、実像はまだ謎に包まれています。
そうした人物が、なぜパク大統領と極めて近い関係になったのか。
それを読み解くカギは、大統領が歩んできた苛烈な半生にあります。」


パク政権 窮地に 資料流出 疑惑の背景は

韓国 パク・クネ大統領
「チェ・スンシル氏は、かつて私が『困難な時』に助けてくれた人です。」

池畑支局長
「パク大統領がチェ・スンシル氏に関して触れた、『困難な時』。
その始まりは、ソウル中心部にある、あちらの劇場で起きた銃撃事件です。
1974年8月15日のことでした。」


壇上で演説していた父のパク・チョンヒ(朴正煕)大統領(当時)を狙って、在日韓国人の男が発砲。

母のユク・ヨンス(陸英修)さんが流れ弾にあたって死亡したのです。
韓国政府は、北朝鮮からの指示による犯行だとしています。

パク・クネ氏は、当時22歳。
事件後、母に代わってファースト・レディーの役割を果たすようになり…。

外国の要人との面会など、幅広く父を手助けしました。

しかし自叙伝には、このときの心情をこうつづっています。





“母の遺品を一つずつ整理していると、心臓が切られたかのように痛んだ。”

突然母を失った、心の傷。
この時期、1人の宗教家が、パク・クネ氏の前に現れました。

チェ・テミン(崔太敏)氏。
「夢の中にパク・クネ氏の母親が現れた」とする手紙を送ったことがきっかけで、パク氏と対面。




以後、精神的なアドバイスを送り続けて信頼関係を深めます。





事件の1年後に撮られたこの映像には、チェ・テミン氏の宗教団体の集会にパク・クネ氏が登壇する様子が映っています。





このチェ・テミン氏の娘が、チェ・スンシル氏です。
4歳ほど年上のパク氏を姉のように慕い、近くから彼女のことを支えました。
当時、パク氏は「セマウム運動」と呼ばれる活動を進めており、チェ氏はその学生組織の代表になりました。



「セマウム」とは「新しい心」という意味です。
国の発展には、経済だけでなく精神面でも成長することが必要だと説きました。
熱心に活動を続けるうち、2人は友人から、いわば「同志」ともいうべき関係になっていったのです。
ところが、悲劇は続きます。


1979年、今度は父・パク・チョンヒ大統領が、情報機関のトップに撃たれて死亡したのです。
父の側近たちは、手のひらを返したようにパク・クネ氏の周辺から離れていきました。

“父の最も近くにいた人たちさえ冷たく心変わりしていく現実は、私にとって衝撃だった。”





そしてパク・クネ氏は、政治の表舞台から姿を消します。
しかし、大統領府を去ってからの不遇の時代も、チェ・スンシル氏は変わらずそばで支え続けました。

パク・クネ氏は、父の功績を再評価する事業を行った時も、かつて「セマウム運動」を進めた仲間が大きな力を貸してくれたと述懐しています。
チェ・スンシル氏を指すとみられます。
不遇の時代を支えてくれた人間との絆は、他人からはうかがい知れないものだと、パク氏はつづっています。


“世間の冷たい視線と抑圧にもかかわらず、私と志を同じにする方々の真心は、決して誰も勝手に解釈できない。”





1997年、パク・クネ氏は政界に電撃的に復帰。





2012年に立候補した大統領選挙で勝利しました。
選挙運動での演説についてチェ氏からアドバイスを受け、そうした関係が大統領に就任した後も一定期間続いたと認めたパク大統領。
機密情報の流出という事態にまで陥った背景には、かつて直面した絶望がありました。


チェ氏の関与 どこまで

田中
「再び、ソウルの池畑支局長に聞きます。
パク大統領とチェ氏の深いつながりが背景にあることはわかりましたが、やはり気になるのは、チェ氏がどこまで政治に関与していたのかということです。
何か具体的に分かってきているのでしょうか?」

池畑支局長
「大統領府高官の人事や政策決定にチェ氏がどこまで関わったのかは、まだ不明です。
ただ、これまで大統領の演説の中には、国民が強い違和感を覚えるような『表現』が多々あり、そこに、政治には素人であるチェ氏の陰を指摘する声が高まっています。

例えば、対北朝鮮政策に関して、南北統一は韓国に大きなメリットがあると強調しようとしたのか、『統一は大当たりだ』とギャンブルのような表現を使ったり、あるいは政府への抗議デモに顔を覆うマスクをつけて参加した人たちを過激派組織IS=イスラミックステートになぞらえてみたりといった具合で、国民は、検察に徹底的な調べを求めています。」




捜査の見通しは

佐藤
「チェ氏をめぐっては、大統領府が設立に関わった財団の資金を、チェ氏が流用していたとする疑惑も持ち上がっています。
検察の捜査の見通しはどうなっていますか?」

池畑支局長
「内部文書流出の真相解明に先立ち、検察は2つの財団の関係者を次々と呼んで事情を聴いていて、資金流用をめぐる疑惑の調べを加速させています。

とりわけ、2つの財団が設立される過程で、大統領府の高官が、経済団体を通じて多数の大手企業に資金を拠出するよう圧力をかけた疑いが持たれていて、検察は今日、この高官を出国禁止としました。
大統領府がチェ氏のために設立した、いわば“お手盛り”の財団だったのではないかという疑いが高まっています。」




政界の今後は

田中
「窮地に立つパク大統領、そして韓国の政治は今後どうなるんでしょうか?」

池畑支局長
「政界では、閣僚の任命権をパク大統領からいわば剥奪し、与野党が協議して新しい閣僚を任命する『挙国中立内閣』というものをつくる方策が浮上しています。
与党のセヌリ党も、この異例の案を受け入れる考えです。
与党までもが大統領の権限を狭めることもやむを得ないとしているのは、それだけ危機感が強いことの表れといえ、パク大統領は非常に厳しい立場に追い込まれています。」

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