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特集

2016年9月23日(金)

ワシントン条約締約国会議・象牙密猟の現場から最新報告

 
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アフリカゾウが今、危機にひんしています。
象牙を狙った密猟により、毎年3万頭、15分に1頭のペースで殺されているのです。
密猟の背景には、テロ組織の存在も…。



レンジャー隊長
「これは、もはや戦争です。」




解決には、象牙取引を全面禁止するしかないと訴え始めた世界の国々。
日本に対しても、決断を求める声があがっています。




ケニア政府担当者
「日本に望むことは、国内の象牙市場を閉鎖することです。」





なぜ今、取引の全面禁止なのか、その背景に迫ります。

田中
「絶滅のおそれがある野生動植物の国際取引を規制するワシントン条約。
その締約国会議が、明日(24日)から南アフリカで始まります。
焦点の1つが、ゾウの保護に向けた取り組みです。」

児林
「ワシントン条約によって、1989年に象牙の国際取引は原則禁止されました。
しかし密猟はなくならず、より深刻になっているといわれます。
現場では何が起きているのか。
密猟対策の最前線・ケニアに取材班が入りました。」

ケニア 象牙密猟の実態は

リポート:味田村太郎支局長(ヨハネスブルク支局)

ケニア最大の国立公園です。
2万2,000キロ平方メートル、四国よりも広い地域に、1万4,000頭ものアフリカゾウが生息しているとみられています。
この日、われわれ取材班に、国立公園を管理するレンジャー隊から一報が入りました。
向かった先には…。

ゾウの死骸です。
象牙だけが抜き取られていました。
殺されてから10日ほど経っていました。

レンジャー隊員
「とても悲しいことです。
ゾウが殺される姿を黙って見ているわけにはいきません。」



この国立公園では、密猟により過去3年間で300頭以上のゾウが殺されました。
密猟者との戦いは、年々激しさを増しているといいます。
この日も、襲撃に備えた訓練が行われていました。



味田村太郎支局長(ヨハネスブルク支局)
「レンジャーたちが銃を持って密猟者を警戒しています。
さながら軍隊のようです。」



自動小銃を抱え、走り出す隊員たち。
相手がひるんだところで一気に囲み、攻撃する訓練です。




レンジャー隊長
「これはもはや戦争なのです。
我々は危険にさらされています。」



ケニア政府は、隊員の数をこれまでの倍の350人に増やした上で、装備も一新しました。
しかし、密猟者も最新の武器で襲ってくるため、隊員の負傷が相次いでいます。

レンジャー隊員
「司令官の1人が殺されました。
あばらの左側に4発も打ち込まれたのです。」

密猟者が奪った象牙は、闇市場では、1本あたり100万円近い値段で売買されています。
密猟者の多くが隣国・ソマリア側から侵入し、その背後には犯罪組織があり、レンジャー隊は、テロ組織ともつながりがあるとみています。

レンジャー隊の責任者
「我々の諜報活動で得た情報では、背後にテロ組織があることがわかっている。
象牙がテロ組織に利用されているのだ。」



関与が疑われるのは、イスラム過激派組織「アッシャバーブ」や、キリスト教原理主義を掲げる「神の抵抗軍」などで、象牙の取り引きによって得た資金をテロにまわしているとみられています。




あとを絶たない密猟に、ケニア政府は今年4月、押収した100トン以上の象牙を一斉に焼却処分しました。
密猟を根絶するという強い意志を示すためです。

ケニア野生生物公社 パトリック・オモンディ課長
「このまま密猟が続けば、アフリカの多くの地域で(ゾウが)絶滅するでしょう。
象牙の需要がゾウの絶滅を招いているのです。」





終わらない密猟

田中
「取材にあたった、ヨハネスブルク支局の味田村支局長に聞きます。
国立公園のレンジャー隊、本当に軍隊のようでしたが、それでも密猟が後を絶たないのはどうしてなんでしょうか?」

味田村太郎支局長(ヨハネスブルク支局)
「密猟者たちは貧しい若者などが多いんです。
わずかなお金で雇われ、いわば『捨て駒』としてレンジャーに射殺される危険を犯してでも、次々に密猟を行っているというのが実態なんです。
これまでの捜査では、そうした背後には、テロ組織ともつながりがある大規模な犯罪組織のネットワークがあるとみられています。

そして密猟された象牙は、ケニアの南東部にあるモンバサ港などから海外に持ち出されているという見方もあります。
『密猟』から『密輸』までの犯罪ネットワークが確立しているとみられているんです。




こうした密猟が横行する中で標的となっているのが、VTRにもあった、大きな牙をもったゾウなんです。
その個体数が激減する中で、最近では、まだ繁殖期を迎えてない、牙も比較的小さい、若いゾウでさえ、密猟で次々に殺されているのが実態なんです。
このままでは、アフリカゾウは絶滅してしまうと専門家は危惧しているのです。」




象牙取引 全面禁止か 継続か

田中
「こうした状況の改善を検討するのが、明日から始まる『ワシントン条約締約国会議』です。
アメリカやアフリカ諸国は、象牙の『全面取引禁止』を提案しています。」

児林
「象牙の国際取引は、ワシントン条約によって、1989年、原則禁止されました。

一方、禁止前に輸入した象牙が日本や中国といった市場で売買される『国内取引』は認められてきたんです。
そうした中で、中国向けの大規模な密輸が次々と発覚します。

こうした事態を受けて、今回の会議でアメリカやアフリカ諸国が提案しているのが、『国内取引の全面禁止』です。
日本や中国といった活発な市場が残っている限り、密輸や密猟はなくならないという考えなんです。
この提案に日本は、大規模な密輸が行われているのは中国であり、管理の行き届いている日本では取引継続を主張しているんです。」

田中
「こうした主張の背景には何があるのか、取材しました。」



象牙取引 全面禁止か 継続か

去年(2015年)、ニューヨークで開かれたイベント。
コンベヤーにのせられているのは、象牙です。

粉々に砕き、密猟に対するアメリカの強い姿勢をアピールしました。





背景にあるのは、テロとの闘いです。
象牙の売買で得られた資金が、テロ組織にまわっているとみられているからです。




オバマ大統領
「アメリカは新しいルールを提案する。
州境を越えた象牙の取り引きを禁止し、国内の違法市場を一掃する。」

アメリカが最も強く働きかけたのが、世界最大の消費国・中国。
オバマ大統領みずから中国を説得。
去年9月、中国も、国内取引禁止に取り組むことで合意しました。

しかし、今も中国市場向けの密輸が次々と発覚。
アフリカゾウの密猟も減っていないことから、国際社会の危機感が高まっています。
そうした中、今、日本も対応を迫られています。
去年12月、国際的な自然保護団体が、日本にも責任の一端があると指摘したのです。


環境調査エージェンシー アラン・ソーントン会長
「経済大国として、日本も国内取引を禁止すべきだ。」




バブルの時代、世界最大の消費国といわれた日本。

1981年以降、合法的に輸入された象牙は2,000トンを超え、印鑑や邦楽器などに使われてきました。
日本は、「象牙の適切な管理に努めている」として、取り引き継続を主張しています。




環境省 野生生物課 中島慶次課長補佐
「大規模な象牙の密輸は見つかっていない。
日本の象牙取り引きが、アフリカゾウ、特に東部アフリカの今の密輸につながっているとは考えにくい。」



しかし、象牙の問題を調査している自然保護団体は、日本への密輸を試みたケースを把握しているといいます。

団体が入手したという、郵便小包の写真です。
発送元はナイジェリア。




中に入っていたのは、青い塊。
象牙に色を塗って偽装したものだとみられるということです。
この郵便小包は、受け取り人が現れず、送り返されたということです。
今年、この団体が税関に対し情報公開請求を行ったところ、象牙を密輸を試みたとみられる荷物が、これまでに少なくとも9件確認できたということです。

トラ・ゾウ保護基金 坂元雅行弁護士
「日本に違法な象牙が依然として入ってきていると思う。
これは明らかに商業的、組織的な密輸行為だと思います。」

需要がある限り、密輸も密猟もなくならない。
アメリカとアフリカ諸国からは、日本に対し全面的な取引禁止を求める声があがっています。
密猟の現状を調査してきたアメリカの専門家は、日本に今こそリーダーシップを発揮してほしいといいます。

米ブルッキングス研究所 バンダ・フェラバブブラウン上級研究員
「危機的な状況のため、今は国内取引を禁止し、ゾウの個体数が安定するのを待つべきです。
個体数が安定し密猟も減れば、再び合法的な取引を検討すればいいのです。
しかし、今はその時ではありません。」




日本の取引 テロ財源に?

児林
「再び味田村支局長に聞きます。
日本国内での象牙の売り上げがテロ組織の財源になっているのではないかという疑問がわいてくるのですが、そういう可能性もあるのでしょうか?」

味田村支局長
「そういう事実は明らかになっていません。
ただ、ケニアなどアフリカの国々は、日本に象牙が密輸入されていないとしても、日本国内に象牙の取引市場があるだけで、遠く離れたアフリカで密猟を引き起こすリスクがあると指摘しているのです。
国内市場があることで、それに向かって密猟を狙う動きが出てしまうおそれがあるというのです。
このためアフリカの国々としては、日本を含めたすべての国で象牙の国内市場をなくすことが密猟撲滅に向けて不可欠だと言っています。」



議論の焦点は

田中
「そうした中で24日から始まる会議、具体的には何が最大の焦点になるのでしょうか?」

味田村支局長
「今回の会議の最大の焦点ですが、まさしく象牙取引を全面的に禁止するかどうかということだと思います。
ケニアなどアフリカの多くの国々は、国内取引についても全面的に禁止を求める決議案を提出していて、その採択を目指しています。
そして国内取引の継続を訴える日本に対しては、厳しい視線が向けられそうです。

一方、実はアフリカの中でも対立があります。
ジンバブエなど一部の国については、ゾウの個体数は安定していると主張していて、ゾウの保護にあてる資金を確保するためにも、自然死したゾウなどの象牙を輸出再開したいと訴えているのです。
このように象牙の取り引きをめぐっては各国で対立はあるものの、アフリカゾウを守らなければいけないという点では、各国共通の認識があるはずです。
アフリカの支援を打ち出している日本にとっても、アフリカのために、アフリカゾウの保護に向けて、より積極的な対策を打ち出していくことが必要だと思います。」

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