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特集

2016年8月30日(火)

IS ヤジディ教徒虐殺の実態

 
放送した内容をご覧いただけます

野ざらしになっている遺骨。





そして、髪の毛。
過激派組織ISが、少数派のヤジディ教徒を大量虐殺した現場です。




数々の戦場を取材してきた報道カメラマン、横田徹(よこた・とおる)さん。
ISが支配していたイラク北部に入りました。





横田さんが目にした衝撃的な実態の数々。

生き残ったヤジディ教徒の女性たちは、復しゅうを誓い、ISとの戦闘に加わっていました。

「何人撃った?」

女性兵士
「たくさん。」


ISから解放された街で、今、何が起こっているのか。
最前線からの報告です。


田中
「今日(30日)の特集は、イラク取材から戻ったばかりの報道カメラマン、横田徹(よこた・とおる)さんとともにお伝えします。」

児林
「横田さんは、カンボジアでの戦場取材を皮切りに、コソボ紛争、アフガニスタンやイラク戦争、さらに最近ではシリアでのISの取材など、20年に渡って戦場を取材してきました。」

田中
「横田さん、今回なぜイラク北部に入ったのでしょうか?」

報道カメラマン 横田徹さん
「今回、イラク北部のシンジャールというところに行ったのですが、私にとって今回3回目の取材なんですが、このシンジャールというのはISの出現後、いちばん虐殺や拉致という被害が大きかったところなんです。
私は非常に興味を持って取材を続けています。」



児林
「横田さんが今回入った、イラク北部のシンジャール地方について見ていきます。
ここには、数千年前からこの地域に伝わるヤジディ教を信仰してきた人たち、およそ40万人が暮らしていました。




しかし、2014年8月のISの襲撃から去年(2015年)11月に解放されるまで1年3か月にわたってISに実行支配され、この期間中、ISは異教徒という理由でヤジディ教徒を5,000人以上殺害。
そして女性など、3,000人以上を今も拘束しています。

6月、国連の国際調査委員会は、こうしたISの行為を『ジェノサイド=大量虐殺』と断定。
国際社会に、一刻も早い対応を求めています。」

田中
「ISから解放されたイラク北部で、今、何が起きているのか。
横田さんの映像には、復しゅうを誓うヤジディ教徒たちの姿が映し出されていました。」

復しゅう誓う ヤジディ教徒

今月(8月)3日、ISの襲撃から、まる2年になるのに合わせて行われた追悼式です。
ISに対抗するために結成したヤジディ教徒の戦闘部隊。
ISと戦うクルド人勢力から武器の提供や軍事訓練を受けています。



部隊には、若い女性兵士が数多く加わっています。
もともとは主婦や家の手伝いをしていた女性たち。
みずから進んで最前線で戦っているといいます。

女性兵士
「あそこに車が見える。」

「ISの車?」

女性兵士
「そう。」

スナイパーになった、19歳の女性兵士です。
ISを心の底から憎んでいるといいます。

「敵を何人撃ちましたか?」

女性兵士
「たくさん撃った。
やつらを撃つときに、レイプされた女性や殺された女性を必ず思い出します。」


ISが女性に対して行った性的暴力。
ISの性奴隷を収容する施設などに1年あまりにわたって拘束されていた、20歳の女性です。

拘束されていた女性
「ISは私たちを商品のように扱っていた。
常に清潔にするように命令され、従わないと罰を与えられた。」

暴行を繰り返される中で、IS戦闘員の子供を妊娠。
ISの子どもを産んだ女性としてヤジディ教徒の中でも差別され、行き場を失っています。

拘束されていた女性
「子どもには罪がない。
今後どうすればいいいのか、将来は真っ暗だ。」



泥沼の“宗教戦争” ヤジディ対IS

なぜISはヤジディ教徒を狙うのか。

ヤジディ教の寺院です。





ヤジディ教は、「クジャクの天使」などを神と崇める、イスラム教とはまったく異なる、地域に根ざした宗教です。
ISは、ヤジディ独自の信仰を「悪魔崇拝」だと決めつけ、虐殺を正当化しています。
シンジャールにある大量虐殺の現場です。



報道カメラマン 横田徹さん
「ここがヤジディ教徒が虐殺された現場です。

いまでも殺された人の洋服や骨が、ここに散乱しています。」

銃弾のあととみられる傷がある頭蓋骨。





女性のものと思われる衣服や、長い髪の毛。
シンジャールでは、少なくとも45か所で、こうした大量虐殺が行われたとみられています。




ISが去り、ようやく街に戻ってきたヤジディ教徒たちは、当時のことを語り始めています。
彼らにとって衝撃的だったのは、ヤジディ教徒の近所に住んでいたイスラム教徒たちがISの手先となって情報を提供していたことでした。



ヤジディ教徒
「この村や隣村のイスラム教徒がISに協力した。
ISの戦闘員となって、ヤジディ教徒の虐殺に加担していた。」



ヤジディ教徒
「(イスラム教徒は)もくろみを知っていたのに、逃げろと言ってくれなかった。
ヤジディ教徒を裏切ったとしか言いようがない。」



今回、通訳を務めたヤジディ教徒のシフォック・ユーシフさんも被害にあっていました。





報道カメラマン 横田徹さん
「よく来る場所だったの?買い物とか?」

シフォック・ユーシフさん
「そう、友人に会いに来ていた。
みんなこの辺りにいたからね。」

シフォックさんと取材中、横田カメラマンは奇妙な光景を目にしました。
商店街のシャッターにスプレーで書かれた文字です。

シフォック・ユーシフさん
「店には『ヤジディ』と書かれている。」




ヤジディ教を表す文字。





こちらはイスラム教。
襲撃にきたISの戦闘員がヤジディ教徒の家をすぐに見つけられるように、印がつけられていたのです。




シフォックさんの実家も襲撃にあいましたが、一家は避難していたため、虐殺を免れました。
シフォックさんは、イスラム教徒の隣人が、ISに情報を提供したと考えています。



シフォック・ユーシフさん
「ISに加わったやつが道先案内人となった。
村全体のことをよく分かっていたから、どの家が裕福でどこが貧乏か、金めのものがあるか、武器はあるか、ふだんから行き来があったから詳しかったのだ。」


イスラム教徒の隣人たちは、ISに脅されて協力したのか、それとも異教徒だという理由で迫害したのか、真相はわからないままです。





泥沼の“宗教戦争” ヤジディ対IS

田中
「引き続き、横田徹さんとともにお伝えしていきます。
生々しい映像が多かったですが、特に冒頭のヤジディ教徒の女性たちが銃を持つ姿は衝撃的でしたね。」



報道カメラマン 横田徹さん
「去年に比べて女性兵士の数が非常に増えているということが驚きでしたね。
普通、どこの軍隊でも女性兵士というのはだいたい後方を守る部隊が多いんですが、ヤジディのこの部隊に関しては、最前線で男性と肩を並べて戦っているというのが印象的でした。」

児林
「それだけ『思い』のようなものがあるということですか?」

報道カメラマン 横田徹さん
「ISに対する恨みというのを、多くの兵士が口にしていましたね。」

児林
「横田さんは数々の現場を取材してきて、今回のヤジディ教徒に対する迫害の実態を取材して、ISの特徴というのはどんな点にあると思っていますか?」

報道カメラマン 横田徹さん
「今までいろんな紛争地に行ってきて、虐殺というのはどこの土地にもあったんですが、『奴隷制』というのはISの特徴ですよね。
女性が強制的に拉致されて、奴隷市場みたいなところで売られて、兵士たちがそれを買って、飽きるとすぐに転売するという、非常に悲惨な状況だったと思います。」

田中
「その最大の犠牲者がヤジディ教だったということですね。」

児林
「奴隷制度というのは、ISの戦略と結びついていることなんですか?」

報道カメラマン 横田徹さん
「一気に兵士の数が増えて、ラッカに行ったときに、どの兵士も『結婚したい』『女性がほしい』ということを口にしていて、そういう意味でも戦略的に需要があったと思いますね。」

児林
「士気を高めることにもつながっていると?」

報道カメラマン 横田徹さん
「それは間違いないと思います。」

児林
「近所の人たちがヤジディ教徒迫害のために手を貸していたのではないかという話もありましたが、実際にそういうことがあったと見ていいのでしょうか?」

報道カメラマン 横田徹さん
「それは多くのヤジディ教徒が話していたんですが、少ない人数で一気にこのエリアを攻めていくというのは、協力者なしではできなかったと思うんですよね。」

児林
「もともとヤジディ教徒に対して快く思ってなかったというか、そういう部分もあるんでしょうか?」

報道カメラマン 横田徹さん
「宗教的に、ヤジディ教徒はお酒を飲んだりとか、偶像崇拝をしたりとか、そういうところを良く思わなかった人は多かったと思います。」

田中
「かつては共存していたヤジディ教徒とイスラム教徒、今後、和解の道というのは何か見えていましたか?」

報道カメラマン 横田徹さん
「今回、非常に深い溝ができてしまって、これを修復するというのは非常に長い時間がかかると思います。」

児林
「何百年というレベルになってくるのでしょうか?」

報道カメラマン 横田徹さん
「そうかもしれませんね。」

児林
「ちょっと広い話になりますが、横田さんはそもそも、どうして戦場に行って現地を取材しているのか。
そして、どういうものを感じてほしいと思ってらっしゃいますか?」

報道カメラマン 横田徹さん
「もう20年くらいこの仕事をしているんですが、やはり、どうしてもまず自分が見たいという。
どうなっているのかというのは非常に興味があるんですよね。
最近テレビ局とか、新聞社もそうなんですが、なかなか現地に人を派遣するということが難しくなってきて、そういう中で私みたいなフリーランスが行って、人の話を聞いて、声を届けるというのは非常に大事だと思います。」

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