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特集

2016年5月19日(木)

ダライ・ラマ14世 インタビュー

 
放送した内容をご覧いただけます

田中
「先週、チベット仏教の最高指導者、ダライ・ラマ14世が来日。
NHKの単独インタビューに応じました。
今日(19日)は、チベットをめぐる中国とダライ・ラマ14世の関係について深く掘り下げていきます。」


児林
「1959年にチベットで起きた動乱を中国が武力で鎮圧したあと、インドへ亡命したダライ・ラマ14世。
自分たちの宗教や言語を守る『高度な自治』を中国に求めてきました。



これに対して中国政府は、チベットは中国の一部だとして高度な自治を認めず統治を継続。
インフラなどの整備も積極的に行い、チベットの人々の暮らしを豊かにしてきたと強調していますが、両者は半世紀以上も対立したままです。



普段は、外国メディアの自由な取材が厳しく制限されているチベットの人たちの暮らし。
しかし、今回、中国政府は、少数民族政策のモデルケースとして四川省にある、カンゼ・チベット族自治州を記者団に公開しました。
まずは、チベットの現状からご覧ください。」

チベット族自治州 変わる人々の暮らし

四川省カンゼ・チベット族自治州。
人口は110万人余り、80%の人がチベット族です。

移動中、人民解放軍の大型輸送車両の車列とすれ違いました。
トラックの数は40台を超え、この地域での軍の強い存在感がうかがえました。




街の中心部に入ると、民族の団結を呼びかけるスローガンが目立ちました。





また、ビルや高速道路の建設が至る所で進められていました。
中国政府が目に見える形での発展を目指し、巨額の資金を拠出しているからです。



案内されたこちらの中学校。
生徒の7割がチベット族。




授業は、ほとんどが中国語で行われていました。
チベット語の授業は週に6時間程度と限られていると言います。




チベット仏教の寺院にも案内されました。
ここでは、40人余りの僧侶が修行を行っていました。
地元政府の立ち会いのもと、若い僧侶に信仰の自由が保障されているかどうか尋ねてみました。


僧侶
「自由…自由はありますよ。」




一方、ダライ・ラマ14世について聞くと言葉を濁しました。

「ダライ・ラマ14世ってどんな存在?」

僧侶
「良いです。」

自治州政府のトップは記者会見で、経済発展の成果に胸を張りました。

カンゼ・チベット族自治州 イシダワ州長
「安定した発展を遂げており、すべてが良い方向に向かっている。」

一方で、ダライ・ラマ14世の主張する「高度な自治」について質問をぶつけると、強い口調で反論してきました。

カンゼ・チベット族自治州 イシダワ州長
「中国は1国家1民族ではない。
1国家多民族なのだ!
中国の憲法と共産党の指導を拒絶するもので、容認できない。」


今回の取材でかいま見えたのは、チベット族自治州に中国政府の少数民族政策が急速に浸透する姿でした。

田中
「独自の宗教や言語をどう守っていくのかで揺れるチベットの人々。
こうした状況を亡命中のダライ・ラマ14世はどのように見ているのでしょうか。
先週来日したダライ・ラマ14世に聞きました。」


ダライ・ラマ14世 チベットへの思い

今年(2016年)で81歳になるダライ・ラマ14世。
今も世界各地を回り、慈悲の心の大切さなど仏の教えを伝えています。

ダライ・ラマ14世
「内なる心の平和は一人ひとり、家族と世界の幸せにとってとても重要なことです。
だから、チベットとチベット仏教を守ることは人類の利益になるのです。」



2歳で先代の生まれ変わりとして認定され、チベットの人々に強い影響を与えてきたダライ・ラマ14世。





しかし、中華人民共和国の建国後、人民解放軍がチベットに進駐。
チベットの人々の抵抗は武力で鎮圧され、ダライ・ラマ14世はヒマラヤを越え てインドに亡命しました。




亡命後は、中国からの独立ではなく、自分たちの宗教や言語を守る「高度な自治」を訴えてきました。
非暴力主義を貫き対話を続けるその姿勢は国際社会で高く評価され、1989年にはノーベル平和賞を受賞しました。



一方で、中国政府はダライ・ラマ14世について、国の分裂を図っていると非難。
双方の対話は途絶えたままです。

ダライ・ラマ14世
「全体として見れば(チベットは)もちろん物質的には豊かになりました。
新しい住宅も建設され、多くの店舗もできました。
しかし、チベット独自の言語や文字、文化や生活様式などを中国はよくないものだと考えています。
こうした独自の文化が中国本土からチベットを分離させると考えているのです。
そうした恐れから、中国政府は極めて厳格な統制を敷いています。
私は、そうした政策によって中国政府や漢族への不満が高まっていると感じています。」

自らの体に火を付け、抗議する僧侶。
中国の締めつけが強まった2009年から焼身抗議が多発。
その数は140人を超えています。

ダライ・ラマ14世
「本当に悲しいことです、とても悲しいことです。
我々は、いつも非暴力的な方法で問題を解決するよう努力しなければなりません。」

中国との公式な対話が途絶える中で、新たな動きも出ています。
今回、大阪で4日間にわたって行われた法話にはアジア各地から2,700人が参加、実はこのうち400人が中国本土からの漢族でした。
中国政府の厳しい監視にも関わらず、ダライ・ラマの教えに救いを求めようという動きが広がっているのです。


上海からの参加者
「すばらしい修身ができました。
心の中が幸せで一杯です。」

浙江省からの参加者
「私たちは政治には無関係です。
信仰の問題です。」

ダライ・ラマ14世
「現在の中国には汚職がまん延しています。
果敢に汚職に立ち向かっていると思いますが、社会全体を考えると、道徳的な概念が欠けています。
私の所には中国政府の引退した高官や実業家、仏教徒なども話を聞きに訪れます。
中国人、特に仏教徒や知識人たちは何らかの対話がしたいのです。
中国人の中にもそうしたことを強く望んでいる人たちがいるのです。
ですから、今後どうなるかは様子をみましょう。
私はもうすぐ81歳になりますが、まだまだ元気です。
だからあと10年、いや20年は待てますよ。」


ダライ・ラマ14世 チベットへの思い

田中
「ここからは、ダライ・ラマ14世にインタビューした国際部の小田記者に話を聞きます。
小田さん、インタビューしてどのように感じましたか?」

小田真記者(国際部)
「現状は非常に厳しいんですけれども、チベットの未来について、時折ユーモアを交えながら、希望について熱く語っていたという印象を受けました。
一方で、インタビューの中で“10年後、20年後の様子を見ましょう”という発言にもあったように、問題解決に向けた現実的、具体的な展望というのはまだ描けていないというふうに感じました。」


どうなるチベット問題?

児林
「チベットですが、ダライ・ラマ14世は80歳を超えています。
ダライ・ラマ14世がいなくあったあとどうなるのか気になるところですが、どうなのでしょうか?」

小田記者
「チベットの人たちにとってダライ・ラマ14世というのは、心のよりどころという存在なんだと思います。
私も4年前に中国のチベット人居住地域で取材をしたんですが、多くの人が“ダライ・ラマは太陽のような存在だ”とか“チベットに戻ってきてほしい”と口をそろえて訴えていたんです。
信仰に生きる人々が心のよりどころを失ったときに何が起きるのか、というのは本当に想像がつかないというふうに思います。
あと、亡命政府があるインドで暮らす若いチベットの人の間でも、こうした問題解決の糸口が見えない中で、ダライ・ラマ14世の従来の考え方に異論も出ているんです。
中国政府としても、ダライ・ラマ14世の言う『独立は求めない』『非暴力主義』という考えがどこまで継承されていくのか、ということは注視しているんだろうと思います。」


問題打開のカギ?

田中
「現状では、中国政府はチベット側との対話に応じる姿勢は示していないわけですけれども、解決に向けた展望は何かあるのでしょうか?」

小田記者
「対話は途絶えているわけですけども、ダライ・ラマ14世が事態の打開に向けて、念頭に置いているのが国際社会の関心の高まりだと思います。」

ダライ・ラマ14世
「チベットの問題を公的に発言するかどうかは別として、多くの国の指導者や人々が共感してくれています。」



小田記者
「中国政府は経済力の高まりを背景に、チベット問題に干渉しないように各国に圧力をかけているわけです。
一方のダライ・ラマ14世は、非暴力主義を全面に掲げて支持を獲得したいという考えなんです。
もう1つ言えるのが、中国の内からの変化です。
VTRにもあったように、中国人の間でチベット仏教に帰依する動きが広がっている。
経済的な豊かさは得られても、心の幸せは得られないという人が多いということだと思うんです。
こうした社会の変化がチベットの問題を動かしていくのかどうか、注目していきたいと思います。」

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