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特集

2015年5月28日(木)

日本語教育に通えない…苦境に立つ外国人の子どもたち

 
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有馬
「日本に暮らす外国人の子どもたちの教育問題です。
文部科学省によりますと、日本語の支援を必要とする子どもは全国に3万7,000人いるとされています。」

藤田
「そうした子どもたちを対象に、国が6年前から実施してきたのが無料の日本語教室です。
しかし今年(2015年)2月、事業が見直され、子どもたちの教育に支障が出てきています。」

日本語教室に通えない 苦境に立つ子ども

ネパールで生まれ育ったダンゴル・ラビナさん、14歳。
半年前に来日し、この春、東京・昭島市の中学校に入学しました。
しかしラビナさんは、日本語がほとんどわかりません。
通っている中学校には、日本語を指導してくれる人もいません。



友達
「正の数と負の数わかった?
マイナスが負でプラスが正だから。」




ダンゴル・ラビナさん
「何を言っているのかわかりません。
周りについて行こうとしても、できません。
授業でも、ずっとページをめくっているだけでなにも楽しくありません。」





途方に暮れるラビナさん。
3か月前の国の決定が、ラビナさんを取り巻く環境を大きく変えたのです。

来日後からラビナさんが日本語を学ぶため通っていた日本語教室です。
外国人などの子どもを対象に授業料を全額補助しています。
この「虹の架け橋教室」と呼ばれる国の事業では、NPOや自治体が運営する全国30か所の教室を支援。
これまで、およそ8,000人が日本語の支援を受けてきました。
子どもたちが日本語の授業を理解できるようにすることが目標です。


「ここで勉強するの好き?」

子どもたち
「だいすき!!」




しかし今年2月、ラビナさんが通っていた教室では、生徒が5分の1に減りました。
国の支援で無料だった授業料が、有料となったためでした。
なぜ国は、この支援事業を見直したのか。
この事業が始まったのは6年前。
リーマンショックを受けて、経済的余裕がなくなった外国人などの子どもを支援するため、期限付きの緊急措置として行われてきました。
事業の期限が切れるにあたり、国は支援を地方自治体に委ねることにしたのです。
ラビナさんも、経済的な問題から日本語学校に通えなくなりました。

母親のシャンティさんです。
10年ほど前から日本の介護施設などで働いてきました。
一家の収入は、月20万円ほど。
毎月4万2,000円の授業料を負担することは難しかったのです。
それ以来、ラビナさんは、教室で使っていたプリントで日本語を自習する日々を送ってきました。


ダンゴル・ラビナさん
「漢字、日本語、難しい。」

日本語教室では、国の事業見直しに不安を募らせています。




日本語教室 田中宝紀代表
「支援をまだ必要としているけれども、継続できないという家庭も少なくない状況の中で、誰が結局そういった子どもたちを助けていくのか、というのはやはり懸念しているところではありますね。」




これまで、東京では、福生市と新宿区の2か所の教室が国の支援を受けてきました。
周辺の多くの自治体からも外国人などの子どもたちが通っていました。
国の事業見直しを受けて、周辺の自治体でもどう子どもたちを支援するか模索が始まっています。




ラビナさんが暮らす昭島市です。
市内で日本語支援を必要とする子どもたちは、10人ほど。
市は、公立学校で対応する考えです。
しかし課題は、人材の確保です。
市では支援者を募集しましたが、見つけるのは容易ではありません。




昭島市 教育委員会 稲冨泰輝統括指導主事
「日本語指導員をつけるまで時間がかかったり、場合によっては探しきれないでっていうところもあって。
自分のところ(自治体)でっていうのは、ちょっと現状としては厳しい。」




ラビナさんは、これからも日本で暮らし、将来は画家になる夢を持っています。
しかし母のシャンティさんは、その未来に不安を感じています。

母 シャンティさん
「不安で暗い道みたい。
だから、サポートする方法とか道がないと、ラビナちゃんに対しては、すごく厳しい。」

日本語指導に詳しい専門家は、市町村だけでできる支援には限界があり、より大きな枠組みが必要だと指摘します。





目白大学 佐藤郡衛学長
「多文化を持った子どもたちが、これから日本の社会を構成する重要なメンバーになり得る可能性もある。
そういう子どもたちに対して、手当、支援をしていくということが極めて普通のことであり、大切なことだろうというふうに思いますけれども。
国と都道府県と市町村との役割みたいなものを、もう一回考える必要があるのかもしれません。」





なぜ見直し 国の支援事業

有馬
「今回、取材した丸山ディレクターがスタジオに来ています。
そもそもニーズがあるのに、なぜ国はこの事業を見直すことになったのでしょうか?」

丸山ディレクター
「国は、よりきめ細やかな支援をするためだとしているんですね。
これまで国の支援というものは、主にNPOが運営している教室というものに対して行われてきたんですけれども、これを今度は自治体に委ねることで支援が必要な子どもを自治体にも把握してもらい、よりきめ細やかな支援につなげたいとしているんです。
ただ、新しい補助事業に対して手を挙げた自治体というのは、今のところ静岡県の浜松市などを中心に7つの自治体にとどまっておりまして、東京都内ではまだ1つも出てないということなんですね。」



自治体の支援 課題は?

藤田
「自治体が手を挙げないのは、なぜなのでしょうか?」

丸山ディレクター
「NHKでは都内62のすべての市区町村に対しアンケートを行ったんですけれども、現時点で『十分に体制をとれない』というふうに回答した自治体が半数を超えたんですね。

こちらが、その理由なんですけれども、まず1つ、VTRにもありました『人手不足』というのが挙げられますね。
これは日本語を教える専門知識を持った人材というのが、なかなか確保できないということなんです。
続いて、『予算不足』。
これは、これまで国が全額、事業に対し補助をしてきたんですけれども、今度からは希望した自治体にのみ3分の1のみ国が補助し、残りの3分の2というのは自治体が負担をしなければいけなくなったんです。
続いて、こちらですね。」

有馬
「『必要性がない』とありますね。
これはどういうことなのでしょう?」

丸山ディレクター
「これは意見が多かったんですけれども、専門家からは、自治体が、支援が必要な子どもというものを実はあまり把握をできていないのではないかというふうに指摘がされております。
どういうことかと言いますと、日本語で会話ができる子ども、日本語でおしゃべりをすることができる子どもというのが、実は読み書きができなかったり、学習に使う言葉というのをなかなかわからなかったりという状態にあるんですが、そういった子どもというのは見過ごされがちなんですね。
あとは、日本語に支障があるとしても、教室に座っていてくれれば、子どもだからそのうち日本語を覚えることができるようになるのではないかという思い込みというものもまだ根強いんですよね。」


広域での支援事業は

有馬
「期待を込めて、そう思いたくなるというところはあるかもしれませんけど。
であれば、市や村、区という小さい単位ではなくて都道府県、財政規模もあり、人手もありというところで対応するということはできないのですか?」

丸山ディレクター
「今回の私どものアンケートの調査でも、東京都のレベル、都のレベルで対応してほしいという声もあがっておりまして。」

有馬
「ニーズはあるわけですね?」

丸山ディレクター
「そうなんですね。
実際に都の教育委員会に問い合わせたところ、現在、東京都主体の事業が始められるように検討しているとのことなんです。
実際には2つの教室、今までだったら、2つの教室に限らず、より多くの支援の団体とも連携したいと考えております。
ただ、こうしている間にも、多くの子どもたちにとってみれば十分な教育を受ける機会というのが失われ続けているわけなんです。
子どもたちの未来に影響が出ることのないように早急な対応が今、求められているのではないかと思いますね。」

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