にっぽん縦断 こころ旅
誰かにそっと教えたい、こころの絶景
正平さん、チヤリオ君、スタッフの皆さんこんにちは。
毎回楽しく拝見しています。
私の心の風景は、埼玉県の都幾川の明神淵と鉄橋です。
子どもの頃、夏休みになると妹と八高線に乗って母の実家に遊びに行きました。
そして叔父に連れられすぐ近くの鉄橋下に行き、魚釣りをしたり
水浴びをしたり、きれいな石探しをしたりしたものです。
楽しいキラキラ輝いていた夏休みでした。
そんな楽しい時代は束の間に去り、母が45歳の若さで天国に旅立つと 叔父の家を訪ねることも少なくなりました。
母の命日が近づくと、毎年はるばる群馬までお墓参りに来てくれていた叔父も年老いて、とうとう数年前の三十三回忌を最後に来られなくなってしまいました。
昨年の3月、私は越生町の梅林を見に行き、その帰りに久しぶりに叔父の家に寄ってみました。
叔父は「本当に来てくれてよかった。もう会えないかと思っていた。」と涙を流さんばかりに喜んでくれ
ました。
そして、「征江(ゆきえ、私の母の名です)の葬儀の時、三人っ子(私と妹2人)がどうなってしまうのか、心配でたまらなかった。」
「立派に育ってくれて安心した。」などと母そっくりの目で話してくれました。
ああ、私たちのことをこんなにも気にかけてくれている人がいたのかと、胸が痛いほど温かい気持ちになりました。
私が帰る時、何度も「会えてよかった。」と繰り返していた叔父は その後すぐに体調を崩して入院し、帰らぬ人となりました。
叔父に会った最後の日 趣味の短歌の話などもしました。
その時にもらったのが、新聞の歌壇に載ったという、この写真の歌です。
「児らのみな泳ぎ 覚えしこの渕に ロンドン巌あり 鋸巌あり」
叔父も、母も、いとこたちも、きっと都幾川の岩を見ながら泳ぎを覚えたのでしょう。ところが、私はどれがロンドン巌で、鋸巌はどれなのか教えてもらわなかったのです。
正平さん、どうぞ、都幾川に居並ぶ岩を見て、ロンドン巌と鋸巌を決めてくださいませんか。そして、できることなら鉄橋を通る八高線に手を振ってくださいませんか?
かつて、私たち姉妹が明覚駅から八高線に乗って群馬に帰るときに叔父や叔母、祖母たちが手を振ってくれたように。
なんだかあの日の私がその列車に乗っているような気がします。
そうそう、明覚駅から八高線鉄橋までは自然あふれる素敵な道があるようです。
ぜひ行ってみてください。天国の叔父もきっと喜ぶと思います。
群馬県高崎市 松本 由美子 56歳
群馬県高崎市
松本由美子さん(56歳)からのお手紙