にっぽん縦断 こころ旅
前略
正平さん、チャリオ君、スタッフの皆さんいつもお疲れ様です。
毎回、全国のいろんな地域を巡るこの番組を楽しみにしています。
さて、私の思い出に残る風景は、鹿児島県曽於(そお)郡東串良(ひがしくしら)町の海岸と隣町(肝付町・きもつきちょう)にある「轟の滝」です。
私が生まれ育ったのは、宮崎県側にある大隅半島の志布志湾に面した海岸で、昼間も薄暗い2~300メートルほどの松林を抜けると、波打ち際まで百メートル近い砂浜が、松林と平行して10キロほど広がっている、白砂青松の大変風光明媚なところです。
(この一帯は、かつて連合国軍が上陸予定地の一つとしたという話もありますが、現在は、一部が国家石油備蓄基地で埋め立てられ、その影響で年々砂浜が削り取られているようです。)
私は、その地で10歳まで住んでいました。(現在、家は朽ちて松林になっています。)ここで両親は漁業を営んでいたのですが、父は私が3歳の時に他界し、母は残された6人(15歳から3歳)の子供を育ててきました。当時は不漁続きで 母の苦労は言葉で言い表せないくらい辛いものだったらしいです。
事情があり、両親の故郷である香川県に引っ越してきましたが、当時は、電気も水道もない苦しい生活で、母や兄たちは余り多くを語りませんが、幼い私には自然を相手に遊んだ楽しい思い出しかありません。
そんな生活の中、毎日働きづめの母が、夏になると1回だけ隣町の「轟の滝」に弁当をもって泳ぎに連れて行ってくれました。この滝は、幅広い大きな岩が何段もあり、大きな子供は上の方から滑っていたように思います。母にとって、つかの間の休日だったのでしょう。私にとっても、めったにない母との憩いのひとときでした。
そんな母も、今年7月、102歳で父のもとへ逝きました。
苦労の連続で、鹿児島の地をあまり語らなかった母ですが、もう一度鹿児島の風景を見ながら、母との思い出に浸りたいと思い投稿しました。私も香川に来て57年になりますが、やっぱり生まれ故郷はいいなぁとつくづく思います。
どうか、正平さん、チャリオ君スタッフの皆さん、田舎の方になりますが是非私の自慢の故郷を見に行ってください。
早々
香川県東かがわ市
楠 田 良 一(67歳)
香川県東かがわ市
楠田良一さん(67歳)からのお手紙