にっぽん縦断 こころ旅
正平さん、スタッフのみなさん、
いつも楽しく番組を見させていただいています。
私の心に残る風景は、岡山県勝田郡奈義町にある
「菩提寺の大銀杏」です。
今から二十五年ほど前、職場の先輩で、
私的にも親しくしていた女性から、
癌にかかっていることを告げられました。
癌は、早期に発見し、治療すれば
大丈夫と言われていますが、
ショックを受けた私は、
そのとき、彼女にどんな言葉をかけたのか覚えていません。
ただ、なんとか励ましたくて、強い心を持って
治療に臨んで貰いたくて、
「生命力の強いものを見せたい」という思いから、
菩提寺の大銀杏を見に行くドライブに誘いました。
菩提寺の崩れかけた山門をぬけ、
朽ちかけた菩提寺の境内にある大銀杏は、
その名の通り、大きくて、たくさんの
支柱や、添え木に支えられて立っていました。
長い年月、多くの人に大切にされながら
生きてきたのだと思いました。
彼女は、黙って木のそばに行き、
しばらく見上げていました。
そして最後に「ありがとうね」と言ってくれました。
月日が経ち、今では年賀状のやりとりだけに
なってしまいましたが、
ボランティア活動や、町内の世話役などを、こなしながら、
上手に病気とつきあっている彼女を、
これからも お手本にして
生きて行きたいと思っています。
あの日以来、菩提寺には行っていません。
お寺は、そのままなのか、大銀杏は元気なのか。
正平さんが見てきてくだされば
嬉しいです。
藤原 理英(59歳)
岡山市
藤原理英さん(59歳)からのお手紙