にっぽん縦断 こころ旅
【父が最後まで愛した思い出の風景】
正平さん チャリオ君 スタッフの皆さま お疲れさまです。
『人生下り坂最高』の言葉に励まされて、毎日こころ旅を楽しく拝見しております。
昨年10月に、父は92歳で大往生しました。
亡くなる前数年間は体がすぐれず、特にこの二、三年は介護施設と病院とを行ったり来たりの状況でした。毎日、私は父に会いに通いましたが、日に日に父から記憶が無くなっていくのがよく分かりました。人生の大半を過ごした神戸のこと、会社のこと、地域のこと、家族のこと…。
そのような中で、唯一記憶が残っているのが生まれ故郷の平福(ひらふく)のことでした。平福は、父が高校を卒業して神戸に出るまでの22年間を過ごした町です。
「利神山(りかんざん)は どうなった」
「川(佐用川)はどうなった」
「隣のブリキ屋さんは どうなった」
「○○君は どうしている・・・」
毎日、小声で平福の様子を私に尋ねます。
私が答えると父の瞳が輝き、嬉しそうに天井を見上げ納得したようにうなずきます。
父は平福のすべてを愛しているようでした。そのなかでも最も愛したのは、川端から見る利神山の風景でした。
利神山には城跡がありますが、ほんの少し石垣が残っているだけで建物はありません。
「城があったらなぁ」「城があったらなぁ」何度も何度も残念がっていました。
正平さん、平福は400年以上前に城下町になり、その後、因幡街道随一の宿場町として発展した町で「花の平福」と呼ばれていたそうです。今は、過疎化が進み、昔の面影も少なくなっていますが、川端風景など心が落ち着く風景も多く残っていますので、ぜひお立ち寄りください。
兵庫県 神戸市
武田 宣広(のりひろ) (65歳)
兵庫県神戸市
武田宣広さん(65歳)からのお手紙