にっぽん縦断 こころ旅
いつも楽しみに観ています。私もロードバイクに乗るようになり、こんな風に自転車の旅ができたらと憧れています。今回は、富山県の旅ということで、亡き父のふるさと、思い出の海に寄っていただけたらとおたよりしました。
高岡市伏木にあります国分浜です。近くにある雨晴海岸が有名ですが、こちらは、もっと静かな海岸です。祖母が住む家が伏木にあり、この海岸には歩いてくることができました。
私たち家族は、隣の石川県に住んでいましたが、幼い私や弟は、父に連れられて、よくこの海で泳ぎました。ここで育った父は、頭にタオルを巻いた気楽な姿で、「古式泳法だ~」と楽々立ち泳ぎをして、自然体で泳いでいました。波は穏やかで、泳ぎが苦手な私でも、怖がらずに浮いていることができました。
祖母が老いると、父も伏木の家に移り、祖母を看取った後もここで暮らしていました。日々、海岸を歩き、この海を眺めていた父。結婚した私が幼い娘たちを連れて行くと、喜んで海に行き、かつてのように変わらず、頭にタオルを巻いて、立ち泳ぎを見せて遊ばせてくれました。シマダイを手づかみして見せて、街育ちの娘たちをびっくりさせていました。おかげで、海や魚が大好きになった娘たちです。特に長女は、水族館に就職するほどになりました。
毎年、海で泳ぐほど元気だった父が、一昨年、突然、脳溢血で倒れ入院、大好きだった伏木の海を再び見ることなく逝ってしまいました。
もう一度、この国分海岸を見せてあげたかった。
一緒にこの海岸で泳ぎ、父が本当に可愛がっていた孫娘、私の長女が この秋、結婚します。お父さん、お父さんのおかげで、海が大好きになった子が、海が見える式場で結婚しますよ。
父と娘が泳いだこの国分の思い出の海から、結婚式を挙げる横浜の海まで、父が幸せを祈ってくれていると思います。どうぞ、この海岸を走ったら父の代わりに眺めてください。結婚式は9月23日です。
お身体に気をつけて、楽しい旅を続けてください。私も憧れを胸に元気にペダルを回します。
太田 雅美
石川県白山市
太田雅美さん(55歳)からのお手紙