にっぽん縦断 こころ旅
想いでの場所
島根県出雲市乙立町立久恵峡(おったちちょう たちくえきょう)にある霊光寺
私は出雲市今市町に住んでいる者です。私が正平さんに是非訪ねて欲しい所は、私の住んでる町から国道184号を20分ばかり車で南方向へ行った所にある、県立自然公園立久恵峡にある霊光寺(れいこうじ)です。立久恵峡(たちくえきょう)は奇岩に囲まれた渓谷で吊り橋が2ヵ所掛かっています。春は新緑、夏は清流、秋は紅葉、冬は雪景色と年間を通じて楽しめる景勝地です。また霊光寺の付近には五百羅漢が並んでいます。
小学校5年生の秋だったと思いますが遠足で立久恵峡へ行くことになりました。 当日は天候にも恵まれて秋晴れの中、1クラス50人、5クラスの賑やかな行列になりました。当時は今のように車も多<なく、未舗装のでこぽこ道を荷馬車やたまにオート三輪車がすれ違うぐらいで、のんびりした道行きでした。
目的の立久恵峡に着き、つり橋を渡ってから自由行動になりました。それぞれのグループで遊び楽しみました。やがて昼食時間になり私は数人で霊光寺の階段に腰かけ昼食を食ぺ始めました。暫くすると、学年でも有名な2人の
「いけず児」(いけずご)が長い竹竿を担いでこちらの方へやってきて、私達の頭上でなにやら竹竿で突きだしました。なんと竿の先にはバスケットボールより一回り大きいハチの巣が有ったのです。さあ大変、ハチの大襲撃が始まりました。女子のキャーという声も聞こえ大騒ぎになりました。
昼食の途中でしたが とにかく私は逃げなければと五百羅漢の崖の下を、頭にとまっているらしいハチを払いながら一生懸命走りました。そのうち、へその上あたりがいきなり猛烈な痛みに襲われました。無我夢中で腹のあたりを払いのけて走って逃げました。
大騒ぎの後、避難した所で先生方による治療が始まりました。女子には頭を刺されて泣いている子もいます。今は使用されないオキシフルで消毒し赤チンを塗ってもらい治療は終わりでしたが、歩<たびに腹部が痛く、もう遠足どこ
ろではなく一休みの後、近くの一畑電車(いちばたでんしゃ)のガソリンカーに乗り痛みをこらえながら帰途につきました。今はそのガソリンカーも昭和40年に廃線されて駅舎も残っていません。
その事件の後、休日を挟んで2日後に登校しましたが二人の「いけず児」はハチの攻撃も受けず 先生からのお咎めもなかったのか普段通りに平然としていました。
中学卒業以来「いけず児」とは会うことも無く、会えば一言の苦情も言いたかったのですが、聞く所によると2人共既に鬼籍の人になってしまったとのことで 寂しい思いをしています。65年も昔の話です。
追伸
正平さんは吊り橋は難しいと思います。神戸川に沿って下の吊り橋より1Kmぐらい上流へ行かれると橋が架かっていますので 対岸を走れば目的地に行かれます。
島根県出雲市
佐藤 豊さん(78歳)からのお手紙