にっぽん縦断 こころ旅
正平さん、チャリオ君、スタッフの皆様、いつも楽しく拝見しております。
私の思い出の風景は、佐賀県鳥栖市酒井東町大字赤川にある「赤い屋根の牛舎」です。と言いましてもそれは実家の牛舎です。今は、もうありません。私が中学生の頃からその場所で両親が酪農を営んでいました。朝と夕方の乳搾りは祖父と祖母が亡くなった時も休むことは出来ませんでした。泊まりがけの家族旅行など出来るはずもなく、ただただ忙しいばかりでしたが ほんのつかの間の休みにはあちこちに遊びに連れて行ってくれ愛情深く育ててくれました。
そんな両親も年をとり時代の流れには逆らえず長年続けてきた酪農を辞める決心をしました。年末で辞めようと
思っていた11月。父は搾った牛乳を軽トラックに載せて運ぶ途中で交通事故に遭いました。
瀕死の重傷を負ってしまった父を見て、あれほど一生懸命に働いてきた父が何故こんな目にあわなければいけないのかと理不尽さに悔しい気持ちでいっぱいでした。それでも父の生命力は強く、生き抜いてくれました。
あれから10年。父は元に戻ることはなかったけれど通所施設を利用しながら母と仲良く暮らしています。もうすぐ米寿のお祝いです。
牛舎があった場所は太陽光発電所になりました。見える景色は変わってしまっても 目を閉じると赤い屋根の牛舎と働いていた両親の姿が浮かんでくるのです。私の思い出の中の宝物です。
佐賀県鳥栖市
松雪泰子さん(59歳)からのお手紙