にっぽん縦断 こころ旅
火野正平様、スタッフの皆様
「こころ旅」をいつも楽しんで見ております。
「こころ旅」は穏やかな日本人の心を知り 日本の四季折々の自然の豊かさ、先人から受け継いだその地方独特の文化を知ることができます。そして、投稿された方の思い出の地、心の拠り所となっている場所を訪ね手紙を紹介するやさしさに溢れ、日本人だと言う自覚、自分の故郷に誇りの持てるすばらしい番組です。
私にも「こころ旅」に紹介したい場所があります。四十五年前、二十二歳の時、友人と二人西表島の租納にある西表小中学校に赴任しました。石垣の港から船に乗り、西表島の白浜港に着いた時、心細い思いをしたものです。
港には西表小中学校の職員の方二人が迎えに来てくれました。舗装されていない道路をジープでガタゴト上下左右に揺れながら学校に着きました。校庭の大きな栴檀の木がさわやかな若葉をさらさら音を立てて歓迎している様に思えました。
西表小中学校は併置校(小中が同じ敷地に置かれる)なので、小中の職員室は一緒です。
小学生、中学生が同じ学校で学ぶので 小中で一緒に出来ることは、常に協力して活動しました。教室は別棟ですが、休み時間、昼休み、放課後は校庭で仲良く遊びます。中学生がリーダーになって、みんなのまとめ役です。兄弟の様に皆一緒で、職員も含めると、まるで一つの大家族の様でした。
学校行事の遠泳大会、マラソン大会その他いろいろな催しで小学一年生から中学三年生が同じ様に取り組みます。小学一年生の男の子が、中学生と同じ遠泳を泳ぎ切ったことには、とても感心しました。前は山、後ろは海のある学校、自然の中で遊んだり、活動することで 泳ぐこと、走ることが身に付き得意になっていくのでしょう。
夕方になると 防波堤で魚釣りをしていた男の子達が夕日に照らされ シルエットがきれいだったことを今でも鮮やかに思い浮かべることができます。
小学三・四年生の担任をしていた時、小雨降る中、大切に育てている向日葵に如雨露で水かけする純朴な子ども達でした。
隣の地区の星立の茅葺き家で間借りしていた時は、日曜日になると子ども達が遊びに来て起こされました。
西表小学校での三年間は、その後の私の教師生活の礎となりました。教師として、子どもの立場を考える時、西表での経験が常に頭に浮かびました。自然の中で生きる心の豊かさ、子ども達に寄り添うことを学びました。自然は人を育て大きくするものだと思いました。その中で過ごせたことは 人生の中で素晴らしいことだと思います。
今は観光地になり賑やかな西表島になりました。変わっていくことは寂しい気持ちにもなります。
樹齢百年以上の栴檀の木が、守り神の様に校庭に立ち、子ども達を見守っている西表小中学校を訪ねて下さい。私の心の故郷です。
敬具
沖縄県宮古島市
菅間雅子さん(67歳)からのお手紙