にっぽん縦断 こころ旅
正平さん、チャリオ君、スタッフの皆様
茨城県へようこそ。いつも楽しい番組をありがとうございます。
さて、私の心の風景は、行方市麻生(なめがたしあそう)の天王崎(てんのうざき)、松林から見た霞ヶ浦です。
私の実家は 小さな酪農家でした。生き物を飼う仕事に休みはありません。子どもの頃、家族で出かけることはめったになく、それが当たり前と思っていました。
ところが何の気まぐれか、父が「水泳場に行くか?桃浦に行けばいいべ」と言い出したのです。
行くに決まっています。兄は出かけていたので、妹と私は、大急ぎで支度して出かけることになりました。
当時、小学校の3~4年生ぐらいだったでしょうか。もうワクワクが止まりません。車で15分ぐらいの桃浦に着くと・・・。あにはからんや、そこには人っ子一人いない静かすぎる湖が広がっていました。
いったい全体何がどうなっているのか。ワクワクでふくらんでいた心の風船はぺっちゃんこです。
父もあっけにとられたような顔をしていましたが、そこに声をかけてきたのは、何とおまわりさんでした。何か悪いことをしてしまったのか。わかっていただけるでしょうか。このドキドキ。
おまわりさんと何ごとか話していた父は、
戻ってくると、
「心中とまちがわれたかな?アッハッハ!!」と、笑いました。
桃浦の水泳場はもうなくなっていて、麻生まで行かないとないということでした。
「もう中止かな」と思いましたが、父も後には引けなかったのでしょう。車(軽トラ)を走らせ、麻生まで連れていってくれました。
今度はちゃんと水泳場がありました!!
嬉しくて、嬉しくて、たくさん遊んだはずなのですが、なぜか記憶に残っているのは、松林越しにキラキラと光る霞ヶ浦と 抜き手を切って泳ぐ父の姿なのです。私は父が泳げるなどと考えてみたこともなかったのでした。
父も今年は米寿。年をとりました。先日 この麻生天王崎の水泳場のことを聞いたら「そんなこともあったっけ」と軽くあしらわれました。
おまわりさんのいた桃浦の派出所も、天王崎の水泳場も今はもうありません。私の心の中だけの風景になりました。
現在 天王崎は大きな公園になっていると思います。
茨城県の良いところはいろいろありますが、霞ヶ浦沿いは、「坂がない」のも良い所。ぜひ、キラキラ輝く霞ヶ浦沿いを走ってみて下さい。
旅のご無事をお祈りしております。
石岡市 松崎康子(59歳)
茨城県石岡市
松崎康子さん(59歳)からのお手紙