にっぽん縦断 こころ旅
火野正平 様 スタッフの皆様
いつも こころ旅を楽しく見させて頂いております。
私の小さな心の風景は、茨城県桜川市(旧岩瀬町)の富谷観音のある富谷山の梺の西中学校付近です。
ここという特定した場所はないのですが、そこは田畑が広がり、北には富谷山、南には御嶽山、雨引山、加波山、遠くに筑波山が見渡せます。
私が小学一年生の秋、8つ上の姉と6つ上の兄の運動会に行くため、母と2人自転車で自宅から3km先の中学校へ向かいました。走っても走っても景色がほとんど変わらず、とても遠く必死に母を追いペダルをこぎました。時々、母は後ろを振り返り私を見ていました。
母は去年 脳腫瘍が見つかり 話すことも口から食事することも出来ず寝たきりとなってしまいました。余命一年と告げられましたが、それを越え頑張って生きています。
母と一緒に自転車で走った景色の中を 今は何も感じることなく父と母のお見舞いに毎日、車で通り過ぎていましたが、先日4歳になる息子が補助輪付きの自転車に乗れるようになり、2人で稲穂が揺れる田畑の中を自転車で走った時、あの日のように強い日差しに涼しい風が吹き、ふと母の思い出が一瞬でよみがえり、そんなことあったね、と心の中で母に語り 涙がこみあげてきました。一生懸命にペダルをこぐ息子がとても愛おしく 何度も後ろを見ながら ゆっくり走ります。あの時の母も私と同じ気持ちだったかもしれません。
毎年 秋が近づき涼しい風が吹くたび、この風景の中 自転車で走る元気な母を必ず思い出し、心の中で母に語りかけると思います。
飯塚 光子
茨城県桜川市
飯塚光子さん(37歳)からのお手紙