にっぽん縦断 こころ旅
前略
正平さん、チャリオ君、スタッフの皆様、いつも家族揃って楽しく拝見しています。
私の心の風景は 小倉川堤防から見る男体山(なんたいさん)と家の苺畑です。中学校(清洲中学校…現在は廃校)から帰宅する時、川沿いの道を通るのですが、そこから見る男体山は季節ごとに表情を変えながら「お帰り」と言ってくれるようでした。部活でしごかれた時も、友達と喧嘩した日も、男体山を見ると、気持ちが穏やかになった気がします。
家の畑では、両親と祖父母が苺を作っていて 私の姿を見つけると手を挙げて「お帰り」の合図をしてくれました。友人たちの親は会社勤めで家にいないのに、私の家族は家にいることが、今となっては大きな安心感だったなあ、と思います。
私が子供の頃は、苺農家も多くありましたが、20年ほど前には近所で1軒となり、今年80歳になった父は「今年で引退だ」と、最後の苺作りに取りかかっています。口数少ない父ですが、黙々と畑仕事をする姿は私の誇りです。
大学進学のため家を出て三十数年、いつも私の心の中には 川沿いの道から見える男体山と苺ハウスで作業をする家族がありました。昨年、栃木にUターンし、地元の企業で働いています。
今では その道も車で数分で通り過ぎてしまいますが、清洲橋を過ぎ、川沿いの道に入ると、あの頃と同じようにホッとします。
他人が見たら、何もない、何でもない風景だと思いますが、
私の大事なだいじな風景です。
これからも正平さんの旅を楽しみにしております。
どうぞお体、ご自愛くださいますように。
草々
火野正平 様
川津明石
栃木県鹿沼市
川津明石さん(52歳)からのお手紙