にっぽん縦断 こころ旅
こころの風景
2018-9-11
正平さん こんにちは
私は正平さんと同い年です。チャリオ君やスタッフの皆さんと颯爽と走る正平さんの姿にいつも元気と勇気をもらっています。ありがとうございます。
さて私の『こころの風景』は福島県南会津郡只見町にある『只見スキー場』です。私は昭和25年この地に生まれました。当時は只見村でした。只見村は『日本の秘境』と呼ばれていました。その代名詞に恥じないとんでもない山奥の寒村でした。そして物凄い豪雪地帯でもありました。一晩に1mくらい雪が積もるのはごく当たり前。道路が雪に埋もれ車が通れず『陸の孤島』となるのも毎年の事でした。私はその雪のせいで中学校の卒業式に出れませんでした。と言うのも会津若松での高校受験の帰りドカ雪とそれに伴う雪崩でバスが立ち往生。結局卒業式には間に合いませんでした・・・。
12月初旬、山に白いものが見えると厳しい冬の始まりです。雪が融け出す3月末まで雪に閉ざされ孤立した生活を毎年強いられていました。ですが中学生の時そんな生活が一変するような出来事が起こりました。なんと『只見スキー場』が開場したのです。「こんな山奥までスキーしに来る人なんかおるものか」と言う声が大半でした。私もその一人でした。が「ともかくスキー場に行ってみよう」と弟と出かけました。レストハウスに入ってびっくり。カラフルなスキーウェアを着た若者でごったがえしていました。ゲレンデも色とりどりのウェアに身を包んだスキーヤーで一杯です。
一基しかないリフトの乗り場には長蛇の列です。ただただ驚くばかり。こんな大勢の人を見たことはありませんでした。『秘境のスキー場』と言う物珍しさにつられて関東方面からどっと若者が押しかけたようです。村には旅館が少なく宿舎が足りません。民宿が続々とできました。それまで雪に埋もれひっそり静まりかえっていた村内は一変。派手なスキーウェアの若者が閑歩する今までついぞ見たことのない光景が目の前に広がっていました。「これでやっと只見も世の中の仲間入りができた」と感慨に浸ったのを覚えています。
幸い会津若松の高校に合格出来、卒業後は東京に就職。冬の只見に帰省することは無くなりました。正月に帰省したいのは山々なのですが豪雪で交通手段が全面ストップ。帰ろうにも帰れないのです(一度正月帰省を試みましたが豪雪で汽車が立ち往生。20時間ほど車内に閉じ込められました)そんな訳で冬に帰省することはついぞ無くなり『只見スキー場』がその後どうなったのか知る由もありません。
今回正平さんが『こころ旅』で福島県を訪問されることになり『こころの風景』を募集されている事を知りました。すぐに思いついたのはこの『只見スキー場』の事でした。今も頑張って運営されているのでしょうか?それとも閉鎖されてしまったのでしょうか?閉鎖されていたらレストハウス、リフトは撤去されゲレンデにはペンペン草が生い茂っていることでしょう。そんな光景を見ることはとてつもなくつらいことですが現実と受け止め目に焼き付けたいと思います。
どうかよろしくお願いいたします。
滋賀県守山市
五十嵐恒夫さん(68歳)からのお手紙