にっぽん縦断 こころ旅
火野 正平 さま
いつも楽しく拝見させていただいております。
私は終戦の年、昭和20年5月に北上川のほとりにある宮城県登米郡米谷町に学童疎開をしました。小学2年生になったばかり、遠足気分で着いたものの、厳しい食糧事情のなかでひもじさと親恋しさに泣く毎日がはじまりました。
道を歩けば食べられそうなものは片っ端から口にいれ、ついにはお腹を壊して入院したこともありました。
疎開先の寮の近くには秈荷山(ぜんかやま)があり、綺麗な石段を登った所には神社がありました。
北上川の雄大なうねり、家々の佇まい、絶景でした。その境内で度々演じられたのが、鞍馬天狗の活劇です。一番小さい私は杉作役、主役鞍馬天狗は6年生のマルちゃん、 (マルちゃんは下駄屋の息子、下駄屋さんが何故息子に丸吉と名付けたか…これは未だにナゾですが)でした。マルちゃんは棒っきれに跨り、ソレーっ行くぞーと走りだします。後を追いかけ杉作がマルちゃんの服を掴んで走ります。“パカッ パカッていうんだよ。!!” 鞍馬天狗は馬上なのです。パカッ パカッ パカッ パカッ 境内を走り回りました。またお腹を空かせることをしてしまった、と悔やみましたが後悔先に立たず。
たった6か月足らずの思い出ですが、一生の宝物です。
ぜひ訪ねて下さい。 お願いいたします。
東京都荒川区
稲越正昭さん(81歳)からのお手紙