にっぽん縦断 こころ旅
「上ノ国町石崎の町に入ったときの風景」
海が遠い北海道内陸部で育ったわたしは、海辺の町に実家を持つ男性と結婚して、そこに帰省するようになりました。
札幌近郊から車で南下し、江差町を過ぎて上ノ国町に入り、石崎という小さな町に入るとき、左カーブをゆっくりと回ると右手に小さな灯台がある防波堤が見えてきて、左手には町が見えてきます。
このカーブを曲がると、「帰ってきた」という気持ちになったものです。
お盆の帰省ではりきった夫は、水着を持ってきて ここの冷たい海で泳いだりしていましたが、わたしは砂浜に座ってそんな風景と広々とした地平線を飽かず眺めていたものでした。なにもない夕暮れ、ふたりで入り日を眺めていたりしたこともあります。
その夫も亡くなって6年の月日が流れました。
いつも夫の運転で帰省していたのが、運転の苦手な自分が冷や汗を流しながら墓参に出かけるようになりました。
片道300Km越えの道程をひとりで運転し、このカーブにたどり着いたとき、ひとりでに涙が流れてきます。
静かな町のひとがいない小さな砂浜。夫が傍らにいた日々。海が身近にある生活を送ったことのなかったわたしに、こんなひとの営みもあると教えてくれた風景です。
いつも大変楽しみに視聴させていただいております。
雨の日もあり風の日もあり、上り坂やとても狭い道もあり、大変だとは思いますが、通り過ぎるひととのふれあいもあり、いつも楽しそうにペダルをこいでいる姿を拝見するとこちらまで楽しくなってきます。
お身体に気をつけて、どこまでも走って行ってください。
中江 祐子
北海道江別市
中江祐子さん(53歳)からのお手紙