にっぽん縦断 こころ旅
火野正平さん、チャリオ君、スタッフの皆様、いつもすてきな番組をありがとうございます。朝版では元気をいただいて一日がスタートし、夜はとうちゃこ版を見てゆっくりした気持ちで一日を終えることができます。
さて私の心に残る音は、男鹿市にある「滝の頭(たきのかしら)水源」の水が湧き出る音です。
母校の中学校の秋遠足は、恒例の寒風山(かんぷうざん)登山でした。中学校から農道を3キロ程歩くと登山口に到着し、そこから3キロ程登ると頂上です。登山と言っても寒風山は標高355メートルの穏やかな山で、頂上付近は広く草原に覆われていますので、ハイキングといったところでしょうか。
確か3年生の登山だったか、グループでいつもの道を下山していると、誰が提案したのか途中から別の道を下っていくことになりました。そこは草が刈り取られ確かに道だったのですが、途中からは道が消え、草が生い茂り、蔓が覆いかぶさってきました。私たちはそれをかき分けて進むしかなく胸中は心細く、不安でいっぱいでした。遭難の心配より約束の時間まで帰られるか、先生に叱られないかと胸の鼓動は自然と早くなっていきました。
そのときかすかに水が湧き出してチョロチョロと流れる音が聞こえてきました。川の音とも違う澄んだ音です。その音はだんだん大きくなり誰かが「滝の頭だ!」と叫びました。滝の頭も馴染みのある場所、もう大丈夫と本当にほっとしました。それにしてもずいぷんと道がそれてしまい、私たちは滝の頭の綺麗な池を眺める余裕もなく、とにかく学校へと急ぎ、事なきを得ました。
過疎の地域の宿命なのか、母校の中学校も統廃合され久しくなりました。
寒風山登山とあの「滝の頭」の湧水の音は中学校生活の大切な思い出になっています。今でも思い出すたび、耳の奥から滝の頭のあの湧水の音が聞こえてくるようです。
地元を離れてからはなかなか行く機会がありません。浄水場の施設も新しくなり、周りも整備されたようですが、あの湧き出る水の音は今も変わらないでしょうか。どうか訪ねて聞いてみてくださいませんか。
皆様の旅の安全をお祈りいたします。
秋田市 新津 志保子(にいつしほこ)(61歳)
秋田県秋田市
新津志保子さん(61歳)からのお手紙