にっぽん縦断 こころ旅
正平さん。こんにちは。
「こころ旅」は私が趣味で自転車を始めたきっかけとなる番組であり、いつも楽しみに拝見しております。
さて、今から20年前、私は初めての単身赴任で岡山県井原市に住んでおりました。
生まれたばかりの三女と家族を倉敷に残し、一人寂しく激務に耐えておりました。
私の仕事は郵便局の労務担当で、局長の執事のような役割でした(羊ではありません)。
局長の用務先には運転手としてお供することが多く、いろいろなところに連れて行っていただきました。
そんな中、特に印象に残っているのは井原市の北部に位置する明治という里です。私が勤務する井原郵便局を出発して芳井郵便局に立ち寄り、絶壁を走り、しばらくすると鬱蒼とした林に差し掛かります。
道を間違えたのかな。また局長に叱られる!と羊のように弱気になって車を走らせていると突然林が開けて明治の里が現れます。
あのときのホッとした気持ちは忘れられません。
明治の土は見事な赤土です。柔らかな赤土の中で伸び伸びと育った高級ごぼうの産地であり天皇陛下に献上したこともあると聞いております。
正平さんにも林で道に迷ったのかなと一瞬不安になっていただき、突然見事な赤土のユートピアが目の前に開ける感動を味わっていただきたいと思いお便りしました。
あれから20年の歳月を経て私も郵便局長となり三女も成人式を迎えました。
それでも、ごぼうを食べるたびに初めて単身赴任をして寂しかったことや井原で出会った人々の優しさが思い出されます。
正平さん、チャリオ君よろしくお願いいたします。
平成29年3月1日
火野 正平 様
萩原 裕三(はぎわら ゆうぞう)
岡山県倉敷市
萩原裕三さん(57歳)からのお手紙