にっぽん縦断 こころ旅
拝啓 正平さん、皆さん、毎日楽しみに拝見しております。
従姉妹のしのぶちゃんは ごはんもお洋服もお母さんに作ってもらう私が羨ましいと言うけれど、それはまあ確かにそうだけど、私は外で働くしのぶちゃんのお母さんもいいなあと思っていたのでした。
小学生だったある秋、伯母一家が大分の天ヶ瀬温泉への旅行へ誘ってくれたことがありました。
旅館でごはんを食べて、温泉につかり、それではちょっと夜風に吹かれてみましょうということになり、温泉街の灯りがキラキラと水面に映る玖珠(くす)川沿いを浴衣掛けの伯母が先を歩き、その後ろをしのぶちゃんと私がゆるゆるついて行くと、右手の橋から酔っ払った男が数人、よろよろと伯母に襲いかかって…。
「おばちゃん 危ない!」と思った次の瞬間、伯母はくるりと振り返り、「みんな、おいでー、このおじさんがごちそうして下さるってよー。」と満面の笑みで叫んだのでした。
男たちは血相か変えて逃げてゆき、しのぶちゃんも私も大笑い、私は子供心に「おばちゃん やっぱ、カッケー(という言葉はなかったけど)」と思ったのでした。
現在の天ヶ瀬にはかつての賑わいはありませんが「女の
あれから40数年、念願通り(?)しのぶちゃんは立派な専業主婦となり、私は働く女になりました。
84歳の伯母は今でもちょいモテです。
皆様の旅の安全を心よりお祈りしています。
福岡市 平井倫子
福岡市
平井倫子さん(54歳)からのお手紙