にっぽん縦断 こころ旅
拝啓
火野さん、こころ旅スタッフのみなさん いつも楽しく、見させてもらっております。
私が紹介したい、心の風景は「豊岡山 新長谷寺から見る燧灘の景色と夕やけ」です。
私は4歳のとき 犬を飼い始めました。小さなその柴犬は「クー」と名付けとても可愛がっていました。それから1年半後、クーは子を産み その中の1匹を飼うことにしました。その子は「銀平」といいます。私は幼いながらにその2匹を連れて新長谷寺へと散歩に毎日行っていました。200段の階段を登り、たどり着いた頂上に本堂があります。晴れの日も雨の日も 台風の時もそこから燧灘を 1人と2匹で眺めていました。晴れた日は広島が見えたり、大王海運の船が優雅に海を進む姿を見ることができました。
毎回、違う顔を海は見せてくれるのです。なにより 美しいのは 少し寒くなってきた秋頃、海に映える夕日です。1人と2匹、その夕日を見ながら話をしました。(もちろん犬語は分かりません。)
夕日が沈むまで家に帰らずに両親に怒られたことは1度や2度ではありません。嬉しいことも嫌なこともそこでリセットしていました。1人と2匹で過ごした時間があるからこそ 今の自分があると思っています。
そして、15歳の時、「クー」がこの世を旅立ちました。旅だったその日、銀平と共にそこで泣きました。真っ赤に目を腫らして泣きました。その日から1人と1匹で見る夕日は寂しいものでした。さらに時は進み、19歳の時、「銀平」がこの世を旅立っていきました。私は、神奈川の大学に進学していたこともあり 死に目に会えませんでした。奇しくも旅立った日は 私が夏休みで帰省した日でした。その日から1人で見ることになりました。死に目に会えなかったことも加わって 寂しさは この上ないものでした。
帰省した時にはお墓に行き その後、2匹を思いながら燧灘と夕日を見ています。ここに来ると悲しいことも思い出しますが 楽しいこともいっぱい思い出します。そして「生きよう」と思う場所です。もし 機会がありましたら 是非行ってもらいたいと思っております。
平成29年 立秋
森井 崇光
愛媛県四国中央市
森井崇光さん(26歳)からのお手紙