NHK高校講座

総合的な探究の時間

Eテレ 春・夏・冬特別講座放送
※この番組は、一部昨年度の再放送です。

総合的な探究の時間

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今回の学習

第12回 地域

あなたはどんな町であれば住み続けたいか?(2)
〜教育・公務員グループの場合〜

学習ポイント学習ポイント

あなたはどんな町であれば住み続けたいか? 〜教育・公務員グループの場合〜

探究的な学習とは?
  • 総合的な探究の時間
  • 探究とは

「総合的な探究の時間」は、与えられたテーマから、みなさんが自分で課題を見つけて調べる学習です。

まず、あなたなりの課題を設定し、その課題について自分の力で調べ、考察してまとめる。
これを繰り返すことで、「自分で問題を解決できる力」が身に付いていきます。

オリエンテーション“あなたはどんな町であれば住み続けたいか?”
  • 教育・公務員グループのメンバー
  • 探究テーマ

今回、探究学習に取り組むのは、山梨県の全日制高校3年生の4人。
彼らは将来の進路として、教育関係や公務員の仕事を目指すグループです。

メンバーは、リーダーで将来教員を目指す よしのぶくん、趣味はスポーツ観戦 かんきくん、ゲームが好きな たくまくん、読書が趣味 あゆむくん、の4人。

この学校の「総合的な探究の時間」は、約1年間のカリキュラムに沿って、グループ学習で活動を行います。

最初の授業が行われたのは2020年2月。
まずは、担任の木島先生と生徒、みんなでオリエンテーションです。

今回の探究テーマは「あなたはどんな町であれば住み続けたいか?」。

  • 山梨県甲州市
  • 考えちゃう人

この学校があるのは山梨県甲州市。
人口はおよそ3万人。

特産のぶどうや桃、ワインなどの生産が盛んなほか、豊かな自然をいかした観光・インバウンドでも発展している地域です。

木島先生 「みんなは学校を卒業してもこの地域(甲州市)に住みたい?住みたくない?」

この地域に住み続けたい人、住み続けたくない人が半々くらいのようです。

ステップ1:課題の設定
  • グループの課題を設定
  • 交通の便がわるい

それでは、「課題」を設定するところから探究をスタートしましょう。
まず、グループごとに甲州市の良いところ・不満なところを書き出してみます。

よしのぶ 「不満なのは交通の便だよね。バスが1時間ごとにくるとかありえない。」
たくま 「たしかに、きついかもしれない。」
よしのぶ 「車の量バカ多くない?」
たくま 「それはもう交通の便が悪いから。良いところは人とのつながりがある。」
あゆむ 「地域の人がやさしい」
たくま 「自然とか空気がいい。環境がいい。」

  • 出てきた課題
  • 課題設定シート

良いところも不満なところも含め、みんなが地域をどう捉えているかが見えてきました。
今回はグループ学習なので、みんなの意見をひとつの課題にまとめます。

課題を設定するときは、「課題設定シート」を番組サイトからダウンロードして活用してください。

  • 課題
  • 調べること・方法

最初に(1)の「あなたの課題」を記入します。
「わたしは〇〇にとって、〇〇な町であれば住み続けたい」と書いてみてください。

次に、あなたの課題を解決するために必要な「調べること」「調べる方法」を(2)に記入します。

  • 安全
  • 安全な街でないと住もうと思わない

さまざまな意見の中から、注目したのは「安全」。

あゆむ 「自分たちが子どもができて、住んだ時に…」
よしのぶ 「安全な町じゃないとね。」
あゆむ 「…住もうと思わない。道が狭いじゃん?大通りから一本入ると車が一台しか通れないところがあると、子どもが危ない。」
よしのぶ 「適切な交通安全!」
あゆむ 「それでいいんじゃない?」

  • ステップ1課題
  • 教育公務員グループステップ1

教育・公務員グループが話し合って決めた、ステップ1の課題がこちら。

(1)課題:わたしは家族にとって、適切な交通整備がされている町であれば住み続けたい
(2)調べること・調べる方法:交通整備をする基準・現在の整備状況、これまでの活動状況・活動予定、市役所の都市整備化・建設課の人にインタビュー

よしのぶ 「(将来 仕事で)自分たちが人と関わったり親の立場になった時に、どういう環境なら自分たちの子どもが安心して、自分たちの教える子が暮らしやすいかなっていうのを重視して考えたら『安全』という観点に行きつきました。」

教育・公務員グループの「課題」と「調べること」「調べる方法」が決まりました。

ステップ2:課題の設定
  • 探究学習の変更点
  • 個人学習の課題

4人の探究学習・ステップ1がスタート!するはずでしたが…
2020年4月、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、緊急事態宣言が発出されました。
4人の通う高校も約3ヶ月の休校となりました。

探究学習を再開できたのは7月。
密を避けるために、グループ学習は個人学習に変更。
探究テーマは変えずに、コロナ禍でも探究できる課題を改めて設定することになりました。

個人学習になって、元 教育・公務員グループの4人は、それぞれ課題を再設定しました。
ここからは、よしのぶくんとかんきくんの探究を追いかけてみましょう。

  • よしのぶのステップ2課題
  • よしのぶのステップ2調べること・方法

よしのぶくんのステップ2の課題設定シートはこちら。

(1)課題:わたしは教育を受ける人にとって、教育設備が充実している町であれば住み続けたい
(2)調べること・調べる方法:甲州市の学校でどのようなコロナ対策をした授業が行われているか?コロナ禍でどのような授業が行われれば学びやすいか? 甲州市の学校で働く先生にインタビュー

課題が「安全」から「コロナ禍の教育」に変わったのはなぜですか?

よしのぶ 「自分もコロナの影響で家で自粛していて、課題を配られるだけでは普段学校で行っている授業よりも密度がかなり低くなってしまった。私は将来、教師になりたいと考えているので、将来の子どもたちにはこのような緊急事態下においても双方的で常に学ぶ人が近くにいる学習方法をしてほしいという願いから、このような活動をしたいと思うようになりました。」

  • かんきのステップ2課題
  • かんきのステップ2調べること・方法

一方、かんきくんが設定したステップ2の課題設定シートがこちら。

(1)課題:わたしは高校生にとって、ショッピングモールにあるような店がたくさんある町であれば住み続けたい
(2)調べること・調べる方法:学生を考慮した施設の計画はあるのか? 市役所の都市整備化にインタビュー

課題が「安全」から「地域の施設」に変わったのはなぜですか?

かんき 「コロナで大変な時期なので、ショッピングモールのような店があれば、その場所に行っただけですぐにマスクなどのものを集められると思い、変えました。」

ステップ2:調べる
  • かんきのインタビュー
  • ぐるりん

早速、かんきくんは甲州市役所の都市整備課にインタビューの依頼をし、FAXで回答をもらいました。

かんき 「学生を考慮した施設の計画はありますか?」

甲州市役所 都市政策課 「観光客や学生の足として、レンタサイクル『ぐるりん』の運用をスタートしています。」

ぐるりんは、1回100円からレンタルできる自転車で、観光や通学・通勤などの交通手段として2016年から甲州市に導入されたそうです。

ステップ2:考察とまとめ
  • 地域の交通手段が重要

かんきくんのステップ2の探究を考察してまとめる。

かんき 「お店よりも交通手段があった方がいいと思い、『ぐるりん』について知りたいと思った。」

かんきくんはインタビューを通して、学生にとっても大切な地域の交通手段に着目したようです。

ステップ3:課題の設定
  • かんきのステップ3課題
  • かんきのステップ3調べること・方法

考察を受けて、かんきくんが書いたステップ3の課題設定シートがこちら。

(1)課題:わたしは学生にとって、学生の足となる交通手段がある町であれば住み続けたい
(2)調べること・調べる方法:学生の足としてのレンタサイクル「ぐるりん」の運用を増やすには? パンフレットなどを使って広める

ステップ3:調べる
  • ぐるりんのポスター
  • ポスターを作った

かんきくんは、まず「ぐるりん」を体験してみることからステップ3をスタート。
そのうえで、ポスターを作りました。
このポスターを持って向かったのは、甲州市役所の観光商工課。

かんき 「ポスターを作りました。人の目につくところに貼ってほしい…」

かんきくんの要望通り、ポスターは甲州市・塩山駅の観光案内所と、市内のコンビニの掲示板に貼ってもらうことができました。

ステップ3:考察とまとめ
  • かんきのステップ2
  • かんきのステップ3

かんきくんは、ステップ2のインタビューを通して、甲州市が住み続けたい町になるためには、店より交通手段が重要だと考えが変わりました。

そこでステップ3では、レンタサイクル「ぐるりん」について探究し、市民に広く知ってもらうためのポスターを各所に掲示してもらうことができました。

ステップ3:レポート
  • 交通手段を強化できたら

探究をしてみて、これからも甲州市に住み続けたいと思いますか?

かんき 「はい、住み続けたいと思います。わたしは将来、甲州市の職員となって地域に恩返しをしたいと考えています。甲州市の魅力などを伝えた上でぐるりんなどの交通設備を強化できたらいいなと思っています。」

ステップ2:調べる
  • 電話でインタビュー
  • インタビューの内容

一方、「教育設備が充実している町であれば住み続けたい」という課題を設定したよしのぶくん。
電話でインタビュー取材の依頼をします。

よしのぶくんがコロナ禍の学校の授業について取材したのは、甲州市立勝沼中学校の飯島春奈先生です。

よしのぶ 「新型コロナウイルスの流行によって授業はどのように変わりましたか?」

飯島先生 「グループワークを控え、教師主導の一斉講義型授業を行っています。そのため意見交換・共有の機会を作ることが難しくなっています。」

よしのぶ 「今後の緊急事態に備え、学校に必要な教育設備は何ですか?」

飯島先生 「オンライン授業に対応できる環境が必要だと思います。」

  • GIGAスクール構想
  • GIGAスクール構想

この“オンライン授業に対応できる環境”に興味をもったよしのぶくん。
さらに調べ、新聞で「GIGAスクール構想」の記事を見つけました。

「GIGAスクール構想」とは、全国の小中学生に1人1台の端末の配布や、学校に高速大容量の通信ネットワークの整備などを推進するプロジェクトです。
新型コロナウイルスの感染拡大によって、オンライン授業の必要性が高まり、ICT(情報通信技術)を活用した教育環境の整備が急速に進められています。

ステップ2:考察とまとめ
  • いつICTが整うのか

よしのぶくんのステップ2の探究を考察してまとめる。

よしのぶ 「コロナでこのような緊急事態になってしまったからといって、適切な教育が行えないというのは違うと思いました。その中で甲州市ではいつICTが整うのかということに疑問に思っていました。」

ステップ3:課題の設定
  • よしのぶのステップ3課題
  • よしのぶのステップ3

考察を受けて、よしのぶくんが書いたステップ3の課題設定シートがこちら。

(1)課題:わたしは教育を受ける人にとって、緊急事態下でも教育設備が充実している町であれば住み続けたい
(2)調べること・調べる方法:甲州市の「GIGAスクール構想」の進捗状況、甲州市教育委員会にインタビュー

よしのぶくんは、ステップ2のインタビューを通して、コロナ禍の教育ではICT環境が整備されていることが重要であると気づきます。

そこでステップ3では、甲州市の「GIGAスクール構想」の進捗状況を教育委員会にインタビューすることにしました。

ステップ3:調べる
  • FAXでインタビュー
  • インタビューの内容

教育委員会にFAXでインタビューをした結果がこちら。

よしのぶ 「甲州市が行っている『GIGAスクール構想』の進捗状況を教えてください。」

甲州市教育委員会 「2020年10月から市内すべての小中学校でWi−Fi環境が整う予定です。また12月末までには1人1台の端末が配布される予定です。」

ステップ3:考察とまとめ
  • 疑問を持った

よしのぶくんのステップ3の探究を考察してまとめる。

よしのぶ 「本当にハード面が整うだけで教育設備が整うことにつながるのか、疑問を持ちました。教師がその機器を使いこなすことができなければ教育設備の向上にはつながらないと思ったからです。それをどう解決するかと先生と相談しているうちに、山梨日日新聞で今度は山梨の県立高校においても2022年度から1人1台パソコンが実現するという記事を見つけました。」

ステップ4:課題の設定
  • よしのぶのステップ4課題
  • よしのぶのステップ4

考察を受けて、よしのぶくんが書いたステップ4の課題設定シートがこちら。

(1)課題:わたしは教育を受ける人にとって、緊急事態下でも教育設備が充実している町であれば住み続けたい
(2)調べること・調べる方法:端末やインターネットを活用した授業を行うことに不安はあるか? 学校の先生にアンケートをとる

ステップ3ではインタビュー取材で、甲州市の「GIGAスクール構想」の進捗がわかりました。しかし、それを教師が使いこなせるのか疑問をもちます。

そこで、ステップ4では、学校の先生にICTを活用した授業についてアンケートをとることにしました。

ステップ4:調べる
  • アンケートを依頼
  • 37枚アンケート

よしのぶくんは、学校の先生たちにアンケートを依頼してまわり、
集まったアンケートはなんと37名分!早速、集計を始めます。
アンケート結果はどうでしたか?

よしのぶ 「約7割の先生方が2022年度からの1人1台パソコンに不安を持っているということがわかりました。不安要素の中で最も多かったのが自分自身の技術力。この問題を解決するために山梨県や甲州市が主催する研修会の実施などの要望もありました。」

レポート提出〜ステップ5
  • よしのぶのレポート
  • 住み続けたいとは思わない

ここまで探究したことを振り返り、レポートにまとめる。
よしのぶくんがレポートに書いた、今後さらに調べてみたいことは?

・アンケート結果をもとに、1人1台パソコンが実現してもよりよい授業が行えるように、教育医委員会へ研修会の実施やPCサポーターの配属のお願いをする。


探究をしてみて、これからも甲州市に住み続けたいと思いますか?

よしのぶ 「今の現状ではまだ住み続けたいと思いません。ICTなどのハード面が整うことに対してすべての教員がそれを理解し、使いこなせるようになって初めて住み続けたい町になると思いました。」

将来どのような教師になりたいですか? 

よしのぶ 「教育設備を使いこなし、子どもにとっていつでも学びやすい環境に自分もしていきたいと思っています。」

  • プレゼンするよしのぶ
  • 教育委員会

このあと、よしのぶくんはレポートに書いたことを実現します。
なんと山梨県の教育委員会に今回の探究結果を報告し、よしのぶくんの意見を聞いてもらうことができました。

よしのぶ 「教師が機器を使いこなし、よりよい授業にすることが、最も大切なことだと思います。」

教師になる夢の実現も含め、これからもよしのぶくんの探究は続いていくようです。


あなたなら、どんな町であれば住み続けたいですか?

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