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今回の学習内容

第10回

幅が一定の図形

講師:東海大学教育開発研究所教授 秋山 仁
今日のテーマは「幅が一定の図形」です。
「幅が一定の図形」というのは、ある図形があって2本の平行な直線で挟んだとき、(これを差し渡し幅という)
それを回転させても、幅が変わらない、つまりどこから図っても同じ幅であるものをさします。
そしてこのような図形を「定幅図形」といいます。
今日は、
(1)どんな定幅図形があるのか、
(2)定幅図形の数学的な性質、
(3)定幅図形の応用、
という3つのポイントで学習します。

学習ポイント

 幅が一定の図形
今日のテーマ
suukiso10-1

今日のテーマは「幅が一定の図形」です。
「幅が一定の図形」というのは、
ある図形があって
2本の平行な直線で挟んだとき、
(これを差し渡し幅という)
それを回転させても、幅が変わらない、
つまり
どこから図っても同じ幅であるものをさします。
そしてこのような図形を「定幅図形」といいます。

今日は、
 (1)どんな定幅図形があるのか、
 (2)定幅図形の数学的な性質、
 (3)定幅図形の応用
という3つのポイントで学習します。

    ルーローの奇数角形
    suukiso10-2

    定幅図形はいろんな形があります。
    まずは、「ルーローの三角形」についてです。
    ルーローとは、ルーローの三角形のような
    定幅図形を研究した数学者の名前です。
    このルーローの三角形を描いてみましょう。
    用意するものは、正三角形とコンパス。
    頂点にコンパスをあてて、
    三角形の1辺を半径とする円弧を描いてゆきます。
    円弧を3つつなぎ合わせると、
    ルーローの三角形の出来上がりです。

      suukiso10-3

      ではこれで、
      幅が一定になっているのか考えてみましょう。
      ルーローの三角形を平行な2直線ではさむと、
      1本の直線は、正三角形の頂点を通り、
      もう1本の直線は、
      その頂点を中心とする円弧に接します。
      差し渡し幅はいつも、
      コンパスで弧を描いたときの半径
      になっているので、一定であることがわかります。

        suukiso10-4

        正五角形をもとに、
        同じような描き方をすると
        「ルーローの五角形」が描けます。
        5つの円弧をつなぎあわせたものです。
        同じ方法で、
        正奇数角形をもとに作図していくと
        ルーローの奇数角形が描けます。

          suukiso10-5

          ルーローの七角形の例として、
          イギリスの50ペンス硬貨があります。
          硬貨の多くは定幅図形です。
          この理由を考えてみると、
          自動販売機にコインを入れたとき、
          その形が正方形であったとき、
          どこかに引っかかって
          故障の原因になる恐れがありますが、
          定幅図形ならどこにも引っかからずに
          なめらかに落ちます。

            丸みを帯びた定幅図形
            suukiso10-6

            定幅図形には、
            ルーローの奇数角形のように
            とがった形のものから、
            なめらかな丸みを帯びたものもあります。
            このような図形を道具を使って描くことができます。
            道具は、
            細長いアクリルの板に4つ穴を開けたものです。
            このとき、穴の間隔を左から、B、A、Bとします。
            Aの間隔は、
            正三角形と同じ長さにし、BとBは同じ間隔です。
            これを仮に「定幅定規」と呼ぶことにします。
            そして、
            紙には正三角形とその延長線を描いておき、
            その正三角形の1辺の長さが
            定幅定規のAになるようにします。

              suukiso10-7

              では描き方です。
              正三角形の1辺と定規のAを重ね、
              そのAの穴どちらかにピンを打ち込みます。
              次に定規の両端にペンを差込み、
              移動させながら大きな弧と小さな弧を描きます。
              定規のAが三角形のとなりの辺に
              重なったところでピンを打ち変えます。
              そして同じように弧を描いていきます。
              三角形のすべての頂点に打って弧を描くと、
              丸みを帯びた定幅図形が出来上がります。

                suukiso10-8

                この図形の幅が
                一定であるかを考えて見ましょう。
                いま、描いた図形を
                平行線ではさみこんだ状態を考えます。
                平行線の幅は、どんな状態でも
                必ず大きな扇形と向かい合う小さな扇形の弧に
                接しています。
                大きな扇形の半径はA+B、
                小さな扇形の半径はBです。

                つまり、どんな状態も
                必ずA+2Bの幅が保たれているのです。
                このような丸みを帯びた定幅図形は、
                定幅定規のBの長さをかえると
                いろいろな形が描けることになります。
                そしてBの長さがないとき、B=0のとき、
                ルーローの三角形が描けます。

                  定幅図形の周の長さ
                  suukiso10-9

                  定幅図形の数学的性質について
                  考えてみましょう。
                  ここに差し渡し幅が1の定幅図形があります。
                  これらの周にはなにか決まりがあるかを
                  調べてみましょう。

                    suukiso10-10

                    実験では、
                    図形を転がして1周させたときの距離を調べます。
                    テーブルの端をスタートにして、一回転させます。
                    円、ルーローの三角形、ルーローの七角形とも
                    周の長さは同じだとわかりました。
                    実験の結果からすると、
                    差し渡し幅が同じならば、
                    定幅図形の周の長さはみな同じになりそうですが
                    今度は
                    計算で周の長さ等しくなるか考えてみましょう。

                      suukiso10-11

                      差し渡し幅が1の、ルーローの三角形の
                      周の長さはいくつになるでしょうか。
                      まず、差し渡し幅が1の円の場合について
                      考えて見ましょう。
                      円の周の長さは直径×πで求められます。
                      直径は1なので円の周の長さはπです。
                      差し渡し幅1の
                      ルーローの三角形はどうでしょう。
                      ルーローの三角形の1つの弧の長さは、
                      直径2の円の6分の1の長さです。
                      つまり2π÷6=π/3 それが3つあるので、
                      π/3×3=π、になります。
                      ルーローの三角形も円の周の長さも
                      πになることが計算によって確かめられました。
                      差し渡し幅1の定幅図形ならば
                      周の長さはπになるのです。

                        定幅図形の面積
                        suukiso10-12

                        では、次に「定幅図形」の
                        面積について調べてみましょう。
                        ここに、円、ルーローの三角形、
                        ルーローの五角形、丸みを帯びた定幅図形、
                        の4枚の定幅図形があります。
                        どれも同じ材質、同じ厚さです。
                        差し渡し幅はどれも1としましょう。
                        この4枚の図形のうち、
                        どの図形が一番面積が大きく、
                        またはどの図形が一番面積が小さいのか
                        を調べたいと思います。
                        図形の重さは面積に比例するので、
                        それぞれの形の重さをはかりで測定し、
                        順位を調べます。
                        すると、

                         ルーローの三角形      49.0グラム
                         ルーローの五角形      52.5グラム
                         丸みを帯びた定幅図形   56.7グラム
                         円                58.2グラム

                          suukiso10-13

                          結果は、ルーローの三角形が一番軽く、
                          円が一番重くなりました。   
                          つまり、
                          面積ではルーローの三角形が一番小さく、
                          円が面積最大です。


                          さて、差し渡し幅を1とした4つの図形の面積を
                          計算によって求めると次のようになりました。

                           ルーローの三角形    0.7048
                           ルーローの五角形    0.7585
                           丸みを帯びた定幅図形 0.7764
                           円              0.7854

                            定幅図形の応用
                            suukiso10-14

                            さて、定幅図形では、
                            差し渡し幅が同じ定幅図形なら
                            周の長さが同になり、面積は円が最大で、
                            「ルーローの三角形」が最小になります。
                            これを考えを使用すると、
                            進む距離は同じでも、
                            材料が少なくてすむタイヤが作れます。
                            ここに、
                            車輪がルーローの三角形で出来ている
                            スケートの模型があります。
                            車体が上下せず移動しています。
                            ただし車軸が上下します。

                              suukiso10-15

                              さらに、
                              車軸自体がルーローの三角形になっていて、
                              外側の車輪は、車軸のルーローの三角形の
                              頂点をもとにして描いた
                              定幅図形になっているものがあります。
                              この車体は上下せず、なめらかに動きます。

                              どうしてでしょうか。

                                suukiso10-16

                                丸みを帯びた定幅図形を描くときに
                                定幅定規を使いました。
                                あの考え方を思い出してください。
                                車体を支えるルーローの三角形と
                                そこから地面までの高さを考えます。
                                車軸のルーローの三角形の幅をaとします。
                                そして
                                頂点からのびた直線の部分をbとします。
                                車体を支えているところまでの高さは、
                                大きな扇形が地面に接しているときか、
                                小さな扇形の半径bと、
                                ルーローの三角形の幅a
                                を足したもののどちらかになっています。

                                  suukiso10-17

                                  どの状態においても、
                                  長さを考えるとa+bになっており、
                                  車体が上下しないのです。

                                    suukiso10-18

                                    次に注目するのは、
                                    車軸の中のルーローの三角形の軌跡です。
                                    ルーローの三角形が回転するとき、
                                    つねに正方形の4つの辺に触れています。
                                    そして頂点に注目すると、
                                    正方形の辺をなぞっていきます。
                                    この事実に注目して、
                                    「四角い穴は空けられないか」考えた人がいます。
                                    イギリスのH・Jワットという人物です。
                                    そしてここには、そのミニチュア版があります。
                                    この刃の形が、
                                    ルーローの三角形をもとにして作られている。

                                      suukiso10-19

                                      実際に削ってみると、
                                      ほぼ正方形の穴が開きました。
                                      このように考えると、
                                      ルーローの五角形を使って、
                                      正六角形の穴があくドリルや、
                                      ルーローの七角形を使った
                                      正八角形の穴があくドリルも
                                      作れることになります。

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