NHK高校講座

世界史

Eテレ 毎週 金曜日 午後2:20〜2:40
※この番組は、昨年度の再放送です。

世界史

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今回の学習

第10回

西アジア・中東の新展開

  • 世界史監修:東京大学教授 羽田 正
学習ポイント学習ポイント

1.イスラームの教え 2.イスラーム世界の拡大 3.アッバース朝とバグダードの輝き

  • 今回のミッション

「マジカル・ヒストリー倶楽部」にようこそ!
今回のミッションは、「西アジア・中東の新展開」です。

眞鍋さん 「西アジア・中東の新展開ということは、以前にオリエントの歴史を学んでから、何か新展開があったということ?」

永松さん 「はい、その新展開とは『イスラーム』の登場なんです。」

眞鍋さん 「イスラームっていうと、仏教、キリスト教と並ぶ世界三大宗教の一つだよね。」

永松さん 「そうです。それではさっそく、私が作ったマジカル・ヒストリー・ツアーに出かけましょう!」

  • 訪れる場所と時代
  • イスラームの時代

今回のマジカル・ヒストリー・ツアーは、イスラームの歴史をたどる旅です。
イスラームとは、絶対の神の指示に従って、この世で正しく生きることを目指す一神教のことです。

ビューポイントは、

1.イスラームの教え
2.イスラーム世界の拡大
3.アッバース朝とバグダードの輝き

の3点です。

訪れる場所は、アラビア半島を中心とする西アジア。時代は、7世紀から12世紀ごろまでです。

まずはイスラームの誕生と、その国家がわずか1世紀のうちに、アジア・アフリカ・ヨーロッパの三大陸に広がった背景を探ります。

そして、繁栄を極めたイスラームの文明が、どのようなものだったのかを見ていきます。

  • アッラー=神

眞鍋さん 「一神教ということは、イスラームもユダヤ教・キリスト教と同じなんだ。」

永松さん 「そうです。イスラームは、ユダヤ教・キリスト教に影響を受けた宗教です。唯一の神を信じ、信者はすべて神の前で平等であるとした一神教です。」

眞鍋さん 「イスラームでは、神様のことを『アッラー』と呼んでいるよね。」

永松さん 「アッラーとは、アラビア語で『神』を意味しています。アッラーという名前の神がいるわけではなく、アッラーは神そのものなんです。」

眞鍋さん 「そういう意味だったんだ。」

永松さん 「それでは、イスラームの誕生と、その教えについて見ていきましょう。」

1.イスラームの教え
  • メッカ
  • カーバ神殿

マジカル・ヒストリー・ツアー、まずは、アラビア半島にあるサウジアラビアの都市メッカを訪れます。
メッカは、イスラームが誕生した土地であり、イスラーム第一の聖地です。

ここにある「カーバ神殿」には、世界中から多くの信者が巡礼に訪れます。
現在、イスラームの信者数は約16億人にのぼると言われ、世界三大宗教の一つとなっています。

「イスラーム」は、どのようして生まれたのでしょうか。
時間をさかのぼって、マジカル・ジャンプ!

  • ムハンマド誕生
  • 隊商貿易

570年ごろ、後にイスラームの創始者となるムハンマドが、メッカで誕生しました。
ムハンマドは、メッカの商人の家に生まれ、砂漠の隊商貿易に従事しました。

610年ごろ、ムハンマドはメッカ郊外にそびえるヒラー山の洞窟にこもり、瞑想を始めます。
ある日、ムハンマドに、唯一絶対の神「アッラー」の言葉が伝えられました。
その最初の言葉は「詠め」、すなわち口に出して唱えよということでした。
ムハンマドは、神の言葉を預かった者、つまり「預言者」となったのです。

ムハンマドは、アッラーの言葉を人々に伝え、アッラーの導きに従って新しい社会を築いていこうと活動を始めます。
しかし、メッカでは部族や土地ごとの神に対する信仰心が強かったため、彼の教えは危険な思想として迫害を受けました。

  • メディナへ逃れるムハンマドと地図
  • ウンマ

そのため、ムハンマドは少数の信者とともに、メッカから300キロメートル北にあるメディナに逃れます。
この地で徐々に信者が増え、イスラーム教徒、すなわちムスリムによる共同体が作られました。
この共同体は「ウンマ」と呼ばれ、これにより、ムスリムの共同意識が生み出されていきます。

  • アラビア半島統一時の地図
  • コーラン

ムスリムは次第に増え、兵力も整っていきました。
630年、ムハンマドは、故郷のメッカを征服します。
様々な部族の聖地だったカーバ神殿から偶像を撤去し、イスラームの聖地としました。
その後、アラブの部族はムハンマドの支配下に入り、ムハンマドはアラビア半島を統一します。

632年、ムハンマドは健康が衰え、メディナで息を引き取りました。
ムハンマドの死後、神・アッラーの言葉は書物にまとめられ、聖典「コーラン」となります。

コーランはアラビア語で記されました。
その教義の中心は、神がムハンマドを通じて伝えた教えに従うことです。
守るべき規範は、政治や社会、文化の活動すべてに及んでいます。

  • イスラームの教えの文言「最後の預言者ムハンマド」
  • 偶像崇拝を禁止

永松さん 「イスラームの教えでは、キリスト教とユダヤ教、そしてイスラームの神はすべて同じ神様なんです。」

眞鍋さん 「宗教が違うのに、神様は同じなんだね。」

永松さん 「そうなんです。(イスラームの教えでは)『アッラーは、かつてユダヤ教、キリスト教の預言者に自分の言葉を伝えた。そして、最後の預言者ムハンマドには、アラビア語でその言葉が伝えられた。』とされています。いわば、一神教の決定版であるとしたんですね。」

眞鍋さん 「預言者はムハンマドで最後、ということだったんだね。ところで、ムハンマドが描かれている絵画で、その顔が白くなっている(描かれていない)のはなぜ?」

永松さん 「イスラームの教えでは、偶像崇拝が禁止されています。そのため、後に描かれた絵画には、顔は描かれてないんです。」

眞鍋さん 「なるほどね。そのムハンマドが亡くなった後、イスラームはどうなっていくの?」

永松さん 「その後、危機に直面するんですが、イスラームの教えを旗印に勢力を広げていきます。」

2.イスラーム世界の拡大
  • エルサレム旧市街と城壁
  • 3つの宗教の聖地

マジカル・ヒストリー・ツアー、続いては、世界遺産「エルサレムの旧市街」を訪ねます。
エルサレムは、イスラエル東部にある都市です。

エルサレムは、ユダヤ教・キリスト教・イスラームの3つの宗教の聖地とされています。
イスラームの聖地は巨大な岩で、ムハンマドが「ここから一夜、天に昇り神の御前に至った」と言われています。
岩は現在、建物で覆われています。

638年、イスラーム勢力はエルサレムを征服しました。
その支配体制は、ユダヤ教・キリスト教と共存するという形をとりました。

一体、どのように共存したのでしょうか。
時間をさかのぼって見ていきましょう。マジカル・ジャンプ!

  • 正統カリフ時代(632〜661年)
  • 正統カリフ時代の勢力拡大

ムハンマドの死後、ムスリムの中から、アブー・バクルがその後継者「カリフ」に選ばれます。
カリフは、共同体ウンマの政治指導者となり、以後第4代まで選挙で選ばれました。
この時期を、「正統カリフ時代」(632〜661年)といいます。

この時代、カリフはアラビア半島から各地に征服軍を派遣しました。
イランやイラクを領土とし、ビザンツ帝国からシリアとエジプトを奪う大征服を成し遂げました。

  • 661年 ウマイヤ朝樹立
  • ウマイヤ朝時代の勢力図

第4代カリフのアリーのころ、カリフの座をめぐって有力者の間で争いが起こり、アリーは暗殺されます。
そして661年、敵対していた勢力が、シリアのダマスカスを都としてウマイヤ朝を樹立しました。

ウマイヤ朝では、カリフはウマイヤ家が世襲しました。
ウマイヤ家のカリフを君主とする王朝の始まりです。

ウマイヤ朝は、8世紀の初めには、東は中央アジアから西はイベリア半島まで領土を広げていきました。
こうして、広大な地域が、ムスリムの君主によって統治されるようになります。

征服地では、ユダヤ教徒やキリスト教徒など、異教徒であってもイスラームを強制されることはありませんでした。

税金を支払えば、生命・財産の安全と、信仰の自由を保障されたのです。

それは、イスラームの聖地、エルサレムでも同じでした。
ムスリムの支配者を認め、税を支払えば共存することができたのです。

  • スタジオ写真

眞鍋さん 「他の宗教に寛容で共存してきたからこそ、イスラームの勢力が拡大できたのかもしれないね。」

永松さん 「そこが重要ポイントだったんです。しかしウマイヤ朝では、征服された民族がイスラームに改宗しても、税金が免除されることはありませんでした。それで、イスラームに改宗した征服民の不満が高まります。こうした不満と、ウマイヤ朝に対する別の反体制運動が結びついて、新しいアッバース朝が作られるんです。」

3.アッバース朝とバクダードの輝き
  • アッバース朝が建設した都 バグダード

マジカル・ヒストリー・ツアー、最後は、イラクの首都 バグダードです。
750年、ウマイヤ朝を倒して成立した、アッバース朝が建設した都です。
首都バグダードの人口は、最盛期には100万を数え、当時世界最大規模の都市でした。

バグダードが繁栄を極めたアッバース朝の時代に、マジカル・ジャンプ!

  • バグダード中心に円形の都城
  • アラブ人の特権を廃し不公平をなくした

8世紀、バグダードの中心には、王宮や官庁街からなる円形の都城がありました。
この都城は、周囲7キロメートル、高さ18メートルの城壁で囲まれていました。
その内側では、様々な民族から登用された、多くの官僚や軍人が働いていました。

アッバース朝は、アラブ人の特権を廃止し、アラブ人ではないムスリムに対する税制上の不公平をなくします。
こうして、アラブ人以外の民族も活躍することができるようになりました。

  • 4つの幹線ルート
  • 貨幣経済

また交易にも力を入れ、アジアやアフリカに4つの幹線ルートを伸ばします。
この交易の大動脈を通り、東西のさまざまな産物や文化が、バグダードに集まってきました。

城壁の外側にはたくさんの市場が建てられ、数多くの店が軒を連ねていました。
そこでは商人たちの活躍で、世界各地から莫大な富が集まり、貨幣経済が発達します。

  • 古代ギリシアの著作も研究された
  • 外科、内科、入院施設もあった

この時代、学問も発達しました。
イスラームの教えを極める学問だけでなく、古代ギリシアの著作も研究されました。

同様に、医学の分野も発達します。
12世紀に建てられた総合病院の跡から、外科や内科などが設置され、入院施設もあったことが分かっています。

アッバース朝当時のイスラーム文化は、さまざまな分野で世界の最先端を誇りました。
これが後に、西ヨーロッパのキリスト教世界に伝わり、影響を与えることになります。


眞鍋さん 「アラブ人の特権が廃止されて、みんなが平等に能力を発揮できるようになったからこそ、商業や学問、そして医学まで発展していったんだね。」

永松さん 「そうですね。同じころ、西ヨーロッパの地域では、そういった分野は発展しませんでした。古代ギリシアの哲学や自然科学は、知られていなかったんです。それらは後の時代に、イスラーム世界から、西ヨーロッパのキリスト教世界に伝えられていくんです。」

眞鍋さん 「古代ギリシアの知識が、一度中東を経由して、西ヨーロッパに伝わるというのが面白いね。歴史の伝わり方っていろいろなんだ。」

Deep in 世界史
  • 羽田 正先生

マジカル・ヒストリー倶楽部の歴史アドバイザー、羽田 正先生(東京大学 教授)に歴史の深い話をうかがいます。

羽田先生 「みなさんは『イスラーム』というと、とても厳しい宗教だとお考えじゃないでしょうか。今日は、イスラームというのは、実は柔軟で寛容な宗教だということをお話ししてみたいと思います。」

  • イスラームの根本的な教え
  • その教えはムハンマドを通じて伝えた

羽田先生によると、イスラームの一番根本的な教えとは、「この世はいつか終わるかもしれない。いつ終わるかわからないから、その準備をする。」ということだといいます。

羽田先生 「(イスラームの教えでは)この世が終わるときには、最後の審判があります。その最後の審判で、天国に行くか、地獄に落ちるかが決まります。楽園に行くためには、現世で神の教えに従って生きていくことが大事だということです。その神様の教えは、ムハンマドを通じて人々に伝えてあるはずだというのが、神様の考えていることなんです。」

  • 人間の行為は5つに分類される

コーランには、具体的にどのような生活をすればいいのかということが、たくさん書いてあるといいます。
それによると、人間のあらゆる行為は、上写真の5つに分類されます。

羽田先生 「点数は分かりやすくするためにつけているだけで、実際のイスラームの教えにこのような点数はありません。すべきことをたくさんすれば点数が上がり、してはいけないことをしなければ、最終的にこの世を去る時にプラスの点数で終わります。そうすると楽園に行けます。トータルがマイナスだと、地獄行きです。」

すべきことの代表例は、礼拝や巡礼などです。してはいけないことの例には、飲酒などがあります。
しかし、飲酒をしてもその後に礼拝をすれば、差し引きゼロとなり取り戻すことができるといいます。

  • イスラームの知識人たちが議論して決める
  • 次回もお楽しみに!

礼拝を行うことなど、神のメッセージとしてムハンマドによって伝えられ、当時から決まっていたルールは分かりやすいといいます。
しかし、コーヒーを飲むことについてなど、後の時代に決まったこともあります。
ムハンマドの時代になかった問題については、イスラームの知識人たちが議論して決めているといいます。

眞鍋さん 「有識者会議のようなものがあるんですね。」

羽田先生 「ただ、人々は有識者会議の言うことを、いちいち聞かないのが現実ですよね。美味しい物は、どんどん飲んだりします。結果として、コーヒーの場合は、みんなが飲んでいるからもうどっちでもいいことになってしまいました。」

眞鍋さん 「じゃこれは、3番のどちらでもよいことにあてはまるわけですね。」

羽田先生 「人間の行為は、大部分が3番になるんです。ひとつ言えることは、私達が良いと思っていることは、ムスリムの人達も良いことだと考えています。これは良くない、やめた方がいいというようなことは、やっぱりマイナスになっています。(ムスリムの人達と)そんなに価値観に違いがあるとは思えないですね。」

また、地域や時代によっても、判断は異なるといいます。
例えば、異教徒がモスクに入ることについて、許可しているところもあれば許可していないところもあります。

眞鍋さん 「かなり厳格だと思ってたんですけど、イメージが変わりました。さて、文太くんは、ちゃんとすべきことはやってる?」

永松さん 「ちゃんと旅のプランを考えてますから。」

眞鍋さん 「先生、これは1から5番で言うと?」

羽田先生 「すべきことまでいかないんじゃないですかね。(笑)」

永松さん 「ええ?!」


次回もお楽しみに!

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