NHK高校講座

生物基礎

Eテレ 毎週 火曜日 午後2:40〜3:00
※この番組は、前年度の再放送です。

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今回の学習

第22回

ホルモンによる調節 (1)
〜血液によって送られる指令〜

  • 生物基礎監修:東京都立国立高等学校教諭 板山 裕
学習ポイント学習ポイント

ホルモンによる調節 (1) 〜血液によって送られる指令〜

  • 高橋 伸一郎さん
  • 今回のテーマはホルモン

「生命活動を支える代謝」の回(第3回)にも出演していただいた、内分泌学者の高橋 伸一郎(たかはし しんいちろう)さんです。

第3回で高橋さんは、次のようにお話しされていました。


「脂肪肝にヒトがなったら、病気ですよね。でもこれを食べ物にすると、フォアグラ。肝臓に脂肪がたくさんたまった、おいしい食べ物になるわけです。逆に、霜降りというのも筋肉に脂肪がたまっているわけですけれども、これが我々の体だったらやはり病気ですよね。」

「生きている以上、正常なわけです。病気になると異常だということがわかりますよね。その異常だということを研究すると、正常がわかるわけです。」


ところで、今回はホルモンがテーマですよね。
脂肪がたまったり、分解されたりすることと、どのように関係するのでしょうか?

ホルモンって?
  • 研究室の様子

高橋さん 「細胞をあるホルモンで刺激したあとに、あるいは処理したあとに、どういう反応をするかというのを調べているので。」


細胞をホルモンで刺激すると、細胞が変化するのですか?
ホルモンとは何なのでしょうか?

  • 環境の変化その1
  • 環境の変化その2
  • 環境の変化その3

高橋さん 「生命を維持するためには、環境の変化をモニターする必要があるわけです。」


環境の変化?モニター?
う〜ん……暑いとか寒いとか感じることでしょうか?


高橋さん 「それを、どうやってそれぞれの細胞に伝えていくか。」


どんな方法があるのでしょうか。


高橋さん 「外界の状況が変わると、自分の代謝を変えて、それに反応・応答して自分の体を変えていかなければいけないという状態になります。」

  • 気温が低いと、体を震わせ体温を上げる
  • 恒常性=ホメオスタシス

気温や気圧など、場所・時間によって変化する体外環境。
その変化は、私たちの細胞にも影響を与えます。
体には、環境が変化しても体内環境を一定に保とうとするしくみがあります。

たとえば、気温が高くなり体温が上がると、汗を出して下げようとします。
気温が低くなると、体を震わせて体温を上げようとします。
このようにして、体内環境を保つようにしています。

このしくみを「恒常性=ホメオスタシス」といいます。

外界の状況を伝える3つのしくみ
  • 3種類の情報伝達系で情報を伝える

高橋さん 「外界の状況が変わると、情報伝達系というのが必要です。」


情報?
暑い、寒いの情報ですか?


高橋さん 「大きく分けて3つあるといわれています。神経系という系統か、内分泌系という系統か、あるいは免疫系という系統を使って、標的細胞にその情報を伝えて、外界の環境に対してその中でも生きていけるような恒常性を保っていくしくみがあると考えられています。」


神経、内分泌、免疫……。
3つの方法で、情報を伝える……うーん、どういうことなのでしょうか。

神経系は、どんなことをするのですか?

神経系のしくみ
  • 神経系では電気的に刺激を伝える

高橋さん 「神経系というのは、神経伝達物質を使って、特定の細胞にいち早く電気的に刺激を伝えていくという特徴があります。電話のように、はやい反応で確実に相手に伝えていくためにあるしくみだと考えています。」


電話をするように、1対1で特定の相手に連絡をするのですね。
確かに、はやそうです!

神経系

体外環境の変化により無意識に起こる反応は、自律神経系により調節されています。
中枢神経から自律神経を通して、体の各器官へ必要に応じた指令が伝えられます。


前回(第21回)は自律神経についても勉強しました。
内分泌系は、何でしたっけ?

内分泌系のしくみ
  • ホルモンはゆっくりとみんなに情報を伝える手紙のよう

高橋さん 「内分泌系というのは、伝達物質はホルモンといわれています。ホルモンは血液中をまわって、体じゅうをまわるので、基本的にはたくさんの細胞に均一な、同じような情報を伝えることができます。その代わり時間がかかるし、それなりに状況に対して、いろいろな外からの情報、ほかの情報も統合できるというのが特徴だといわれています。そういう意味では、ホルモンはゆっくりと手紙のように、みんなに情報を伝えるというような特徴があります。」


手紙、ですか。
それは、誰が差出人で、誰に届けられるのでしょうか。

  • 内分泌線

ホルモンは、内分泌細胞という特定の細胞でつくられ、内分泌細胞の集まりを内分泌腺といいます。

代謝をコントロールするホルモン
  • ホルモンは全身にいきわたる
  • 標的細胞

内分泌細胞でつくられたホルモンは、体液の循環によって全身にいきわたり、特定の細胞に作用を及ぼします。
ホルモンが作用する特定の細胞を、標的細胞といいます。


神経との違いは、体液に乗っかって体じゅうに広がっている、ということなのでしょうか?
標的細胞に到着すると、何をするのでしょうか。


高橋さん 「その中では代謝をコントロールしていると考えられていて。代謝をコントロールする、あるいは新しいシグナルのタンパク質をつくるというようなことをして、細胞の応答を出す。『外の環境に対してこういう反応をしないと、我々は生命を維持できないよ』ということで、その反応、代謝系を変化させて引き起こすということになるのだと思います。」


ホルモンは代謝をコントロールしている、ということなのですね。
だから高橋さんは、ホルモンと代謝と、両方を研究されているのですね。

それでは、免疫系のはたらきは何なのでしょうか?

免疫系のしくみ
  • 3つの方法で体内環境は保たれる

高橋さん 「免疫系は、異物が入ってきたときに反応するというしくみなので、いろいろな血球系をそこに集めて、抗体などを使って除去する。局地的に反応を引き起こして、それを取り除くというシグナル系だといえると思います。」


神経系は素早く、内分泌系はゆっくりといろいろなところに、免疫系は敵が来たときのために。
3つの方法で体内環境は保たれているのですね!

しかし、どうしてそんなにいろいろな方法が必要なのでしょうか。

多細胞だから発達した情報伝達
  • 単細胞生物
  • 多細胞生物

高橋さん 「1つの細胞があったときには、直接外界の環境の変化を自分の代謝系に反映して、少し変えれば、自分は恒常性を保つことができて、生命は維持できたのだと思います。これがだんだん、たくさんの細胞になってくると、その間でコミュニケーションをしなければいけなくなる。」


単細胞生物の場合は、外が変わったらすぐに対応できたのですね。
進化して多細胞生物になると、それぞれの細胞に情報が必要になり、その伝え方も変わっていったのですね。


高橋さん 「我々の体は40兆〜60兆個の大きな細胞集団ですから、それが外界の環境の変化に対して、軌を一にして同じ方向を向いて反応しなければいけない。そのためには、情報伝達系というのが必要になってきたと。」

  • 多細胞生物のしくみは社会のよう

多細胞生物は、そのしくみが社会のようなんですね。


高橋さん 「まさに人間社会です。人間社会に、たぶんいちばんいい方法というのは、我々が生命を維持するしくみを模倣することだったというふうに考えることもできるかなと思います。」

  • 内分泌細胞
  • 光る白い部分にホルモンがある

内分泌細胞を観察してみましょう。
左画像の白い部分が、1つの内分泌細胞です。
暗くしてみると、細胞の中に光っているところがあります(右画像)。
ここにホルモンがあります。


すごく動いていますね〜!
高橋さんの研究室でも、ホルモンは見られるのですか?

  • 成長ホルモン

高橋さん 「今、冷蔵庫から出してきたんですけれども……。これは人に投与するものなので、ちゃんと鍵のかかるところに入っているんですけれども。今日のために持ってきたんですが。」


何ホルモンですか?


高橋さん 「これは、成長ホルモン。この中に入っている白いものが、塩(えん)と成長ホルモンが一緒に入っているものです。」


ホルモンは何種類くらいあるのでしょうか?

進展するホルモンの研究
  • ホルモンの定義が変化してきた

高橋さん 「昔に比べると、内分泌腺という定義が少しずつ変わってきて。『血液中に出る』というのが1つの定義だったのが、最近は『自分でつくって、隣の細胞に効いてしまう』、逆にいうと血液中に出ないホルモンというのもあります。自分でつくって自分に効いてしまうというようなホルモンもあるということがわかってきて……。」


ホルモンは、内分泌細胞でつくられて、血液に乗って標的細胞に届いてはたらきかけるんでしたよね。
それが、隣の細胞や自分にも影響するホルモンも見つかっているのですか?


高橋さん 「そういう意味では、もう50種ぐらいの細胞がホルモンをつくるのではないか、30〜50種くらいのホルモンをつくるのではないかといわれていますし。ホルモンというカテゴリーも、血中に乗らないで自分のところで効くというようなものも、ホルモンの定義に広義ではなってきているので。昔に比べるとすごく数は増えていると思います。」


調べれば調べるほど、新しい発見がある分野ということなんですね!

視床下部、脳下垂体から分泌されるホルモン

主な内分泌腺と、ホルモンを見てみましょう。

視床下部からは、脳下垂体前葉のはたらきを調節するいろいろなホルモンが分泌されます。

視床下部の下にある脳下垂体前葉からは、成長を促進する成長ホルモン、チロキシンの分泌を促進する甲状腺刺激ホルモン、糖質コルチコイドの分泌を促進する副腎皮質刺激ホルモンが分泌されます。

脳下垂体後葉からは、腎臓の集合管で水の再吸収を促進するバソプレシンが分泌されます。

甲状腺から分泌されるホルモン

のどの近くにある甲状腺からは、代謝を促進するチロキシンが分泌されます。

副腎・すい臓から分泌されるホルモン

副腎の皮質からは、血糖値を上げる糖質コルチコイド、髄質からは血糖値を上げ心臓の拍動を促進するアドレナリンが分泌されます。

すい臓のB細胞からは、血糖値を下げるインスリン、A細胞からは逆に血糖値を上げるグルカゴンが分泌されます。

  • ネズミの子宮にオキシトニンホルモンをかける
  • 子宮が縮む

ホルモンが作用する様子を見てみます。

左画像は、ネズミの子宮の一部です。
オキシトシンは出産や子育てに関連します。
子宮にかけてみると、収縮を始めました(右画像)。
子宮の細胞が、オキシトシンに反応したのです。


ホルモンをかけて、子宮が収縮を始めたということは、ちゃんと子宮の細胞がホルモンに応答したということなんですね。

疎水性ホルモンと親水性ホルモン
疎水性ホルモンと親水性ホルモン

高橋さん 「ホルモンには実は2種類あって。1種類は水に溶けるもの、もう1つは水に溶けない、疎水性といわれているようなホルモンがあります。」


ホルモンには水に溶けやすいものと、水に溶けにくいものとがあります。
親水性ホルモンは細胞膜を通過できません。
標的細胞は親水性ホルモンを、細胞の外側で受け取ります。
この受け取る部分を、受容体といいます。

一方、疎水性ホルモンは細胞膜を通過できます。
細胞膜を通過した疎水性ホルモンは、細胞質や核の中にある受容体と結合します。
それにより、特定の遺伝子の発現を進めるなど、細胞内に必要な情報が伝わります。

高橋さん 「2つあることによって、細胞の中にあるほうがゆっくりした反応を得意としていて。細胞の外に受容体がある場合は早い反応が得意。それもまた組み合わせて、我々の体は環境に反応できるようになっていると。」


外で受け取るものは早く反応して、中で受け取るものはゆっくり反応して、それぞれのホルモンの役割ではたらきかたも変わるんですね。

  • 次回もお楽しみに!

高橋さん
「環境に対して、我々が生命を維持するためにどうしているのか。
そういう機構を知りたいという意味では、我々の生命現象を明らかにするための命題なんですね。

ホルモンは、それの1つの題材で。
我々の体、生態の外あるいは中で何か変化があったときに、それをそれぞれの細胞にどう伝えて、我々の生命を維持しているかというところに非常に興味があって。
それを実際にいじってみると、たとえば病気がよくなったり、あるいは病気になってしまったり。
あるいは、モデル動物を使っても、すごく脂肪細胞がたまったり、いろいろして。

生態のからくりを使って我々の体の状況を変えていくことができるということに、すごく興味を持っています。」



ホルモンが健康に大きく影響しているんですね!
次回は、ホルモンの量がどのように調節されているのかをお聞きしますので、お楽しみに!

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