NHK高校講座

生物基礎

Eテレ 毎週 火曜日 午後2:40〜3:00
※この番組は、前年度の再放送です。

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今回の学習

第17回

体液の循環

  • 生物基礎監修:東京都立八王子東高等学校教諭 長尾 嘉崇
学習ポイント学習ポイント

体液の循環

  • 岡田隆夫さん
  • ラットの心臓

今回訪ねたのは、心臓のはたらきや血液の流れについて40年研究されてきた、生理学者の岡田 隆夫(おかだ たかお)さん。
医療の現場で基礎的な研究を通して、心臓のはたらきを見てこられました。

これ(右画像)は、何ですか……?


岡田さん 「ラットから心臓を取り出して、ここにぶら下げています。」


し、心臓!動いています……。
何の実験なのですか?

  • 狭心症、心筋梗塞

岡田さん 「狭心症や心筋梗塞です。心筋梗塞だと完全に血流が止まってしまいますから、酸素がまったくこない。それをまねている状態といえると思います。要するに、酸素不足にするとどうなるか。しばらく酸素不足のあとにまた酸素をあげると回復するんですけれども、それがどのくらい回復するのかというのを調べる実験です。」


酸素のある・なしで心臓の動きが変わるんですか?


岡田さん 「酸素がきていますから、ATP……エネルギー源をつくり出すことができるので、それでこのように活発に、元気に拍動を続けています。」

  • 1分当たり300のペース
  • 低酸素に付け替える
  • 低酸素だとペースが減少

今は、1分間に300回くらいのペースで動いているということなんですね(左画像)。


研究員 「では、低酸素のほうに付け替えます。」


低酸素、酸素を少なくするんですね。
……おぉ、減っている!(右画像・右の数値)
ということは、酸素を少なくすると、心臓の動くペースが遅くなるんですね。


岡田さん 「ラットにはかわいそうですけれども、人間の病気を治すための情報を提供してもらうという意味で、ラットを使って実験しています。」


岡田さんは心臓の基本的なはたらきから、人の健康、命について研究をされてきたのですね。

人の命とロウソク
  • 炭素と酸素が反応して二酸化炭素ができる
  • ロウソクの燃えかすであるすすが出る

岡田さん 「人の命をロウソクにたとえるということはよくありますね。これは科学的に見ても非常にうまいたとえだといえるかと思います。」


ロウソクは、ロウが熱で溶けて芯を上ってきます。
これが空気中の酸素と反応し、熱エネルギーが発生します。
そのとき同時に、ロウソクのロウ、つまり炭素と酸素が反応した結果として二酸化炭素ができます。
さらに、ロウソクの炎の上にガラスを置いておくと黒くなるように、燃えかすであるすすが出ます。

私たちの体の中でも、非常によく似たことが起こっているといいます。


ロウソクの炎と、命の仕組みが、似ている……?

ロウソクとからだのはたらき

ロウソクにおけるロウ、すなわち炭素は、栄養素として腸から吸収されます。
腸で吸収された栄養素は、肺で取り込まれた酸素と反応し、エネルギーが発生します。
このエネルギーの大部分は、ATPという化学エネルギーとして蓄えられ、利用されます。

そのとき、その反応の結果として二酸化炭素が発生しますが、これは呼吸によって肺から外に捨てられます。

また化学反応の結果として、ロウソクでは燃えかすであるすすが出ますが、これはヒトの場合は老廃物とよばれ、腎臓から尿として捨てられます。

呼吸器、消化器、腎臓をつなぐ循環器系

岡田さん 「その、消化器と呼吸器と腎臓。これがそろえば生きていけるかというと、まだ無理なんですね。どうしてかというと、肺は胸、腸は主としておなか、腎臓は腰の背中側にあります。それぞれ勝手な場所にありますので、これらを結び付けてあげる必要がある。その仕事をしているのが、循環器系。」

  • 循環器
  • 体液の種類

肺や腸、腎臓などをつなげる役割をしているのが、循環器なのですね。
では循環器の中を循環しているものは、何なんですか?


ヒトの体を循環している体液は、主に3種類あります。

血管を流れる、血しょう
リンパ管を流れる、リンパ液
そして、細胞と細胞の間を満たす、組織液

このように体液は、どこにあるかにより呼び方が変わるのです。

  • 血しょう、リンパ液、組織液

岡田さん 「血しょうというのは、血液のうちの液体成分、水です。リンパは、血しょう成分が染み出してできています。」


血しょう、リンパ液、組織液。
たくさん「液」が出てきましたけれど、何が違うのでしょうか?

血しょう、組織液、リンパ液の違い

血しょうと組織液、リンパ液はどのような違いがあるのでしょうか。

毛細血管と毛細リンパ管の間に、細胞があります。

毛細血管は1層の細胞からできていて、壁が薄くなっている場所や、隙間がある場所があります。
毛細血管を流れる血液のうち、液体成分の血しょうの一部は、隙間などから染み出します。
これが組織液になります。

組織液は、細胞との間で栄養分や老廃物の交換を行います。
大部分は、再び毛細血管に戻り、血しょうとして心臓に戻ります。

そして、組織液の一部はリンパ管へ流れ込み、リンパ液となります。
リンパ管も1層の細胞からできていて、細胞同士の隙間からタンパク質なども通すことができます。
腸で吸収された脂肪などもリンパ液によって運ばれます。

  • リンパ管
  • 一定方向に流れる

リンパ液は、筋肉の運動やリンパ管自身の収縮運動によって、静脈に向かって一定方向に流れ、逆流を防ぐ弁が付いています。


それぞれの体液には、それぞれの役割があるんですね!
これは、循環しないと大変だ!
ですが、足の先から頭のてっぺんまで……どうやったらそんなことができるのでしょう?

体液はどうやって循環している?
  • 動脈
  • 毛細血管
  • 静脈

岡田さん 「脳は心臓よりも上にあります。この脳にも血液を送らなければいけませんから、心臓は高い圧力をかけて拍出します。これが動脈に出るわけですけれども、動脈はその高い圧力に耐えられるように、非常に弾性に富んだ構造をしています。」


組織との間で物質交換をする場所が毛細血管です。
毛細血管は壁が非常に薄くなっており、組織との間で物のやり取りがしやすくなっています。
そのあと、酸素を失っていろいろな老廃物を受け取った血液が、静脈に流れて、心臓まで戻ってきます。


岡田さん 「ここまでくると圧力はかなり下がっています。そういう低い圧力の血液が、足の先から心臓まで戻ってこられるように、たとえば静脈のところどころに弁があって、逆流を防いでいる。そういった、いろいろな工夫がなされています。」

  • 血管が全身に張り巡らされている
  • 閉鎖血管系

ヒトの血管は全身に張り巡らされ、動脈と静脈に分けられます。
動脈と静脈は毛細血管でつながっています。
これを閉鎖血管系とよびます。

動脈には、心臓から血液が送り出されます。
血流が高い圧力を持つので、それに耐えられるように血管の壁が厚くなっています。

体の末端から心臓に戻る静脈では、血圧が低く血管の壁は厚くありません。
また、逆流を防ぐように静脈弁が付いています。


そうやって、血液が酸素・二酸化炭素・栄養・老廃物を運ぶのですね!

隅々まで物質を届ける仕組み
  • 隅々まで物質を届けるしくみ
  • 拡散

岡田さん 「血流に乗って運ばれるんですが、行った先では拡散という現象によって移動します。たとえば酸素は濃度の高い血液中から濃度の低い組織中へと拡散していきます。この拡散という現象、これは短距離ですとそれで十分なんです。たとえば、毛細血管と組織との間の距離は最大でも10μm、ですから1/100mmくらい。その程度の距離ですと0.1秒もかからずあっという間に移動します。」

血液輸送は宅配便のイメージ

岡田さん 「距離が伸びると、距離の2乗に比例して時間がかかるという性質があります。長距離の輸送は血流で、短距離の移動は拡散で……と、ちょうど宅配便のような感じです。たとえば工場から自宅まで距離がありますから、こういうところはスピードの出るトラックで運んでくる。家の前まで着いたなら、そこから玄関まではお兄さんが徒歩で運んでくれる。つまり、トラック輸送が血流輸送、お兄さんが運んでくれるのが拡散。こういった2段構えで私たちは物質を移動させている。」


なるほど!長距離の高速道路が血管、短距離を移動するお兄さんが拡散現象。
この2つが合わさって、遠くの細かな場所までスムーズに物が運ばれるのですね。
それにしても、体液の役割って本当に大きいですね。

体液の役割
  • 体液の役割
  • 血液は輸送に適している

岡田さん 「私たちの体の中ではいろいろな化学反応が起こっています。体の中で起こる化学反応が代謝とよばれますけれども、その化学反応の場となっているのは水です。体液は水がベースにあるわけですが、水の特徴として、非常に流れやすいということがあります。油などのようにドロッとしていなくて、サラサラしていてよく流れてくれる。物質の輸送に非常に適している。」


だから、水分が多いのですね!

心臓は体じゅうに血液を送るポンプ
  • ラットの心臓
  • 心臓の模型

最初に見せていただいた心臓。
心臓が、大事な体液を循環させているんですよね。


岡田さん 「圧力をかけて、十分な量の血液を拍出する。圧力と量、これが大事です。ポンプです。」


体じゅうに血液を送るって、どんな仕組みになっているんですか?


岡田さん 「心臓は1つしかないんですが、右心と左心……右の心臓と左の心臓という2つのポンプが合体したもの。」


2つのポンプ……というのは、どういうことなんでしょうか?

  • 右心房と右心室
  • 左心房と左心室

心臓の仕組みを見てみましょう。

自分の右側に、右心房と右心室があります。
自分の左の心房が左心房、その下にあるのが左心室です。

この縦に並んだ心房と心室のセットが、1つのポンプになります。

血液が戻ってくる部屋が心房、血液を送り出す部屋が心室
です。

  • 肺で二酸化炭素を排出し、酸素を取り込む
  • 心臓には4つの弁が付いている

大静脈から右心房に送り込まれた血液は、右心室を通り、肺に送り出されます。
その後、肺で二酸化炭素を外に出し、酸素を取り込んだ血液は左心房に戻ります。
そして、左心室から大動脈を通り、全身に送り出されるのです。

このとき、血液が逆流しないように心臓には4つの弁が付いています(右画像・赤丸)。

心臓が動き続けるわけ
  • 心臓が動き続けるわけ

ところで、ラットの心臓。
ずっと動いていますが、どうして動き続けることができるのですか?


岡田さん 「心臓には自動性といって、自分で動く力がありますから、体から取り出して神経がまったくきていなくても、放っておけば何時間でも拍動を続けます。」

  • 自動性、自動能
  • 洞房結節

自発的に拍動を繰り返す心臓。
この性質を自動性、または自動能といいます。

この性質には、右心房の上側にある洞房結節(どうぼうけっせつ)という部位が関係しています(右画像・赤点線部)。
洞房結節からは、一定のリズムで電気信号が発生しています。
この電気信号が心臓に伝わることで、心臓が動いています。



心臓が自動的に動くなんて、なんだか不思議ですね!

動き続ける心臓
  • 80年で約21万tの血液を拍出する
  • 次回もお楽しみに!

岡田さん 「よく『なぜ心臓は止まらずにこんなに長く動くんだ』と聞かれるんですが、これは、まだ誰にもわかりませんね。」


心室が1回収縮して拍出される血液は、約70mLです。
これが1分間に約70回拍動するので、70×70=4900mLで、約5L拍出されます。
1時間で300L、1日(24時間)では7200L、7.2tです。
1年では2628tで、この人が80年生きるとすると、21万tになります。


岡田さん
「片方の心室がこれだけの血液を拍出するわけです。
これだけの量を長年月にわたって故障もせずに拍出する。
こんなポンプは人間にはつくれません、すばらしいものだと思います。

私たちの体のことを知るというのは、とてもおもしろいことです。
自分の体に起こるいろいろなこと……もちろん病気も含めてですが、そういったことを理解していく。
これはとてもおもしろいことじゃないかなと思います。」



それでは、次回もお楽しみに!

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