NHK高校講座

生物基礎

Eテレ 毎週 火曜日 午前10:00〜10:20
※この番組は、前年度の再放送です。

生物基礎

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今回の学習

第2回

細胞にみられる共通性と多様性

  • 生物基礎監修:成城学園中学高等学校教諭 中村 雅浩
学習ポイント学習ポイント

細胞にみられる共通性と多様性

  • 大西康夫さん
  • 研究の様子

応用微生物学研究者の大西 康夫さん。
微生物の生き方や、微生物がつくり出す物質について調べています。


大西さん 「微生物だけではなくて生物全般に通じるような、新しい概念につながるような、新しい発見があったっていうようなときは、『あっ!これはおもしろい』と。」


とはいえ、「微生物」といわれても、あまりピンとこない人もいるのではないでしょうか。

  • 冬のプール
  • ミジンコとゾウリムシ

微生物は身近なところにいます。
プールの水を、顕微鏡で見てみましょう。

右画像・左側はミジンコです。
大きさは0.5mm〜3mmで、水の中をピョンピョンと泳ぎ回ります。

右画像・右側はゾウリムシです。
大きさは0.1mmほどで、顕微鏡を使わないと、体のつくりを見ることはできません。

微生物は、いろいろな大きさや形を持った、多様なものがいます。

微生物の世界
  • 顕微鏡を覗く大西さん
  • 大西さんはさらに小さな微生物を研究

大西さんが研究をしているのは、さらに小さな微生物なのだそうです。


大西さん 「微生物は目に見えないので、あまり身近ではないですね。せいぜい、お風呂場に生えたカビとか、お餅やパンに生えたカビとかで、厄介者みたいになっていますけど。たとえばおなかの中ですね。生まれては、ウンチになって出て行きっていうのを繰り返しているわけです。おなかの中にも、ものすごい数の微生物がいますし、皮膚にももちろんいます。いたる所にいて、微生物がいないところなんていうのは、普通に考えるとほとんどないですね。」


おなかの中にも微生物がいるんですね!
私たちは、微生物と一緒に暮らしているのでしょうか?

  • 培地に手のひらを当てる
  • 2日後、手のひらを当てた部分に微生物が増殖

本当に私たちの体に微生物がいるのか、手のひらを調べてみます。

微生物の栄養となる物質が入った培地に、手のひらを当てます。

ふたをして2日経過すると、塊がたくさん見えます(右画像)。
微生物が増えて、目で見える大きさの塊をつくったのです。
手を当てた部分にだけ、微生物が増えているのがわかります。

  • 顕微鏡で覗くと小さな粒が
  • 拡大するとブドウのように連なった形
  • さまざまな微生物

一部を取り出して、顕微鏡でのぞいてみます。

小さな粒がいくつか見えており(左画像)、さらに拡大するとブドウのように連なった形をしています(中画像)。

ほかにも黄色い微生物など、手のひらにはいろいろな微生物がいるのです。

  • 乳酸菌
  • 細菌(バクテリア)

食品の中にも微生物はいます。
ヨーグルトの中には「乳酸菌」という微生物がいます。

手のひらや食品の中にいる微生物は、細菌(バクテリア)と呼ばれます。

薬をつくる微生物
  • 放線菌は薬のもとになる化合物を作る能力がある
  • 放線菌

大西さん 「『薬をつくる微生物』というのがいまして、実は私が研究している微生物は、それに近いんですけれども。抗生物質をはじめ、微生物はいろんな病気に効く、薬のもとになる化合物をつくる能力を持っています。放線菌は抗生物質をはじめとした、いろんな化合物をつくる能力がとても優れています。世の中で見つかっている抗生物質の6割以上は、放線菌という微生物がつくっている。」


顕微鏡ができて初めて、微生物のような非常に小さな生き物が存在することがわかりました。
しかし、それよりもはるか以前から、人は微生物を利用してお酒や発酵食品をつくってきました。
人と微生物のつながりは、とても長いものだと大西さんは話します。


微生物は小さすぎて目に見えませんが、いろいろなものがいて、私たちの体や生活に関わっているんですね!

微生物の多様性
  • 遺伝子の多様性
  • 教科書を指す大西さん

大西さん 「丸っこい『球菌』や、四角い『桿菌(かんきん)』だったりと、微生物は非常に限られた形をしています。実は、その細胞の中で起こっていることが、とても多様なんですね。これは、1つは遺伝子の多様性ということで、生物を分類したときにどうなるか。」


教科書の系統樹を見ながら、大西さんは続けます。


大西さん 「この(系統樹の)枝は、近ければ近いほど遺伝子が似ている。この枝でいくと、この中にヒトがいたりチンパンジーがいたり。ヒトとチンパンジーはほとんど同じなんですけど、カエルがいたり魚がいたり。微生物っていうのはこんなに広がりがあってですね……。」

  • 系統樹
  • 遺伝子をもとにした系統樹

地球上のすべての生物は、共通の祖先から生じてきたと考えられており、現在では多様な種が存在しています。
昔は動物や植物、微生物と、大まかに分類されていました(左図)。
しかし最近、分類のされ方が変化しました。

すべての生物に共通する遺伝子を比べると、乳酸菌や大腸菌などの細菌は非常に多様で、とても大きなグループをつくります。
右図の「遺伝子で見た系統樹」を見ると、「細菌」などがその大半を占め、動物や植物、菌類はほんの一部になります。

  • 生命の最小単位としての細胞

遺伝子で見ると、こんなにも変わるんですね!
でも……その違いって、いったい何なんでしょう?


大西さん 「生き物を考えるときには、細胞なしには考えられません。生命の最小単位としての細胞ということで、細胞がないと生命は語れない。」


これは、「細胞が違う」ということなのでしょうか?

  • 動物細胞
  • 動物細胞の図説

動物と植物の細胞を見てみます。

人のほおの内側の細胞を見てみると、真ん中に丸いものが見えます(左画像・赤矢印)。
これは核で、遺伝物質のDNAが入っています。

核の周囲には、細胞内を満たす液状の細胞質基質や、エネルギーを取り出す機能を持つミトコンドリアなどの細胞小器官があります。

これらすべてのものが、細胞膜で覆われています。

  • 植物細胞
  • 植物細胞の図説

次に植物、オオカナダモの細胞を見てみましょう。

左写真にたくさん見られる緑色の丸いものは、葉緑体です。
ここで光合成が行われます。

細胞の大部分をしめているのが液胞で、老廃物をためるなどのはたらきをします。
細胞膜の外側には、細胞の形を維持する細胞壁があります。

  • 動物細胞と植物細胞
  • 真核細胞

動物細胞と植物細胞を比べてみます。

核やミトコンドリアなどは、どちらの細胞にもあります。
葉緑体は植物にしかありません。

動物細胞や植物細胞のように、核を持つ細胞は真核細胞と呼ばれ、真核細胞からなる生物は真核生物と呼ばれています。

  • 多細胞生物
  • ミジンコも多細胞生物

動物や植物は細胞がたくさん集まって体がつくられていることから、多細胞生物と呼ばれています。

小さなミジンコも多細胞生物です。
目や心臓など、器官によって違う細胞で体がつくられています。

多様な細胞で成り立つ多細胞生物
  • 細胞はそれぞれの器官の役割を果たす
  • 細胞の多様性

多細胞生物においては、細胞の1つ1つがすべて同じ細胞から成り立っているわけではありません。
皮膚の細胞は、皮膚の細胞の役割を果たさなければなりません。
目の細胞、脳の細胞、心臓の細胞も同様です。


大西さん 「多細胞生物が作る器官だったり組織だったりが、うまくはたらくように、それぞれ独特の性質を持った細胞に変わっているわけですね。なので、細胞が多様性を持ってくれないと、多細胞生物は成り立たないというのが1つです。」

微生物の多様性
  • 微生物の多様性は細胞の多様性につながる

大西さん 「微生物のほうのことで考えてみますと、微生物そのものに遺伝的な多様性があって。微生物は単細胞のものが多いですから、微生物の多様性は、そのまま細胞の多様性につながっているわけなんですね。」

  • 細菌の細胞の図説
  • 原核細胞

左図は、細菌の細胞を表したものです。

真核細胞と違い、核がありません。
また、DNAは細胞質基質に存在します。
細胞内の構造は非常に単純です。

こうした細胞を「原核細胞」といい、原核細胞からなる生物は原核生物と呼ばれています。


微生物には非常にたくさんの種類がありますが、いったい何が違うのでしょうか?

  • 細胞の多様性は微生物の生き方・能力の多様性につながる
  • 人間の温度変化に耐えるしくみ

細胞の多様性は、その微生物の生き方の多様性や、能力の多様性につながっていると大西さんは話します。
多くの微生物は細胞1つで生きる「単細胞」です。
単細胞生物は、細胞のすぐ外側が「体の外」となるため、外界の影響を受けやすいといいます。


大西さん 「ヒトなどであれば、寒くても温度を一定に保つしくみができていたりしますけど、微生物は温度が下がると細胞の温度も同時に下がります。単純な分、周りの環境の影響をものすごく受けるのです。逆に、周りが変われば、その中で自分がすぐに変わらないといけないということです。」

  • 強い酸性の環境下でも生活する微生物
  • 深海にも微生物がいる

ヒトにとって極限の世界にも、微生物はいます。

たとえば、高温の温泉の中にも微生物や細菌がいます(左画像)。
この細菌は、金属が溶けてしまうような強い酸性の環境下で生活しています。

また、光がまったく当たらない、非常に強い水圧がかかる深海にも微生物がいます。
厳しい極限の世界からも、たくさんの微生物が見つかってきています。

単細胞生物の多様な生き様
  • 胞子状の放線菌
  • 泳ぐ細胞

大西さん 「単細胞で1匹で生きているんで、結構単純だし、何か弱いかなぁと思うんですけど、なかなか大したもので。場合によっては細胞を別の細胞に変えたり、胞子というような耐熱性のものをつくったり、泳ぐやつもいたり。微生物はヒトに比べれば単純ですが、結構複雑な生き方をしていて、いろいろな生き様を持ってがんばって生きています。」

  • 多くのバクテリアは単細胞
  • 菌糸状の放線菌
  • 胞子状の放線菌

多くの細菌(バクテリア)は単細胞で、シングルセル(1個の細胞)で生きています。


大西さん 「放線菌は菌糸状で伸び、さらに多くの放線菌が胞子をつくります。菌糸から胞子をつくるっていうところで、細胞が変身するわけですね。元々、同じ細胞だったものが、環境に応答していろんな形になる。とにかく微生物は多様で、いろんな種類のものがいて、独特の性質を持っているというのが、微生物を研究する中で魅力の1つだと思います。」

  • 子孫を残すのは生物の特徴の一つ
  • ウイルスはDNAを持つのに細胞を持たない

大西さん 「生命というのを考えたときには、もちろん『細胞から成り立っている』ということと、自分自身を残す……『子孫を残す』というのが、生命のもう1つの大事なところです。『自分と同じDNAを持った子孫を残す』というのが生き物の1つの特徴です。ウイルスというのがいまして。これは、DNAは持っているんですね。ただ、細胞は持っていなくて。」


DNAを持っているのに細胞を持っていない!?
ウイルスとは、いったい何なのでしょうか?

  • ウイルスの図説
  • ウイルスが増殖する過程

ウイルスは遺伝情報を持ったDNAやRNAと、それを覆う殻でできています。
ウイルスは自分だけでは増殖することができず、動物や植物、細菌などの細胞に感染して増殖します。

また、エネルギーをつくり出す代謝を行いませんが、自分と同じものをつくり出すしくみを持っているため、生物とも非生物ともいえない、不思議な存在なのです。

微生物の研究の魅力
  • 大西さん

動物も植物も微生物もみんな生物で、細胞レベルで見ると、共通しているところや多様性があるんですね。
知れば知るほど、生物がもっとおもしろくなりそうです!


大西さん
「そのまま細胞ごとに生きている、いろんな微生物がいて。いろんな生物が、細胞がいるということが、地球全体の生命を考えるときにはものすごく大事なことです。
全部が同じだったら……地球上で1種類の生き物しかいなかったら、多分、生物は成り立たないんじゃないかなと思います。

今の地球上では、微生物を含めていろんな生物が、お互い作用し合いながら、ときには助け合って、ときには競争したり、やっつけ合ったりっていうのもあるかもしれないですけれども。
うまく調和して、地球上の生き物のネットワークができあがっている。

その中の『微生物』というのは、目に見えないですけどとても重要だというのを、微生物の研究をしている身からはすごく思います。」



それでは、次回もお楽しみに!

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