NHK高校講座

ロンリのちから

Eテレ 隔週 金曜日 午前11:20〜11:30
※この番組は、前年度の再放送です。

ロンリのちから

Eテレ 隔週 金曜日 午前11:20〜11:30
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今回の学習

第10回

ロンリのちから (10)合意形成

  • 監修:立正大学教授 野矢 茂樹
学習ポイント学習ポイント

合意形成

  • 溝口先生を呼びにきたマリー

慌てた様子で溝口先生を呼びにきたマリー。


マリー 「溝口先生!」

溝口先生 「どうしたの?マリー。」

マリー 「杏奈と波が……。」

  • 険悪なムードの部室
  • 杏奈の案

険悪なムードの部室に、マリーと溝口先生がやってきます。

礼央 「溝口先生!」

溝口先生 「何をやってるのかしら?」

礼央 「杏奈の書いたラストシーンに波が納得しなくて。でも、波の提案するラストシーンには杏奈が納得しなくて。」

溝口先生 「そう。では、それぞれのラストシーンを聞かせてちょうだい。」

杏奈 「…私の台本では、アリスとテレスがジガを倒して、感情をもったアンドロイドとして人類の再生にとりかかる。っていうラストになってる。」

  • 波の案

溝口先生 「波は?」

波 「アリスとテレスはジガに倒され、二人の間に芽生えた愛は消去される。そうしてジガは、すべての愛が消え去った地球を後にする。これが私のアイデア。」

杏奈 「お涙ちょうだいのメロドラマみたい。」

波 「そっちこそ安っぽいハッピーエンドじゃない!」

杏奈 「自分が監督をやりたいから、私の意見になんでも反対してる。」

波 「私のこと嫌いだから、私の意見を受け入れられないんでしょ。」

「合意形成」とは
  • 誰が言ったかは考えない

溝口先生 「二人とももう少し冷静になって。確かに二人の考えは違う。でも、映画のラストシーンはひとつ。いろいろな考えの人たちが集まって一つのことをするとき、どうすればいい?」

マリー 「考えを、一つにまとめないとだめだよね。」

溝口先生 「そう。さまざまな考えを踏まえて、そこからみんなの合意を形成しなければならない。」

杏奈 「合意を形成する……?」

溝口先生 「合意形成のためには、心がけるべき大事なことがいくつかあるの。なかでも最も大事なことは、意見の対立を人と人の対立にしないこと。」

礼央 「今のままじゃ、完全に杏奈と波の対立だもんね。」

溝口先生 「そうならないためには、誰が言ったかは考えないで、意見そのものを冷静に検討するの。

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A案 アリスとテレスが生き残って 人類を再生させる
B案 アリスとテレスは倒れ 二人は結ばれずに終わる
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杏奈 「波の……じゃない、B案は悲しすぎる。」

マリー 「そっかなぁ、泣けるエンディングって好きだけどなぁ……。」

杏奈 「マリーひどい!なんで途中から参加した転校生の肩をもつの?もう!礼央はどうなの?どっちの味方?」

溝口先生 「杏奈。もう私の言ったことを忘れているわね。意見が対立したとき、それを敵、味方で考えてはダメ。相手に勝つことばかり考えていると、相手の考えが何も聞こえなくなるの。だから、さまざまな意見を第三者的な視点に立って見てみることが大事。・・・まだ納得できないって様子ね。ではこんなのはどうかしら。」

アリスとテレス、かみあわない議論をどうするか
  • 海がいいと言うテレス
  • 山がいいと言うアリス

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テレス 「今度の休み、どこかに遊びに行かないか?アリス。」

アリス 「デートか。そうであるならばうれしい。テレス。」

テレス 「そう、デートだ。海に行こう。私は泳ぎたい。」

アリス 「山がいい。山頂でおべんと食べたい。」

テレス 「海の方が断然いい。泳げないのか?」

アリス 「テレスこそ山を登る体力がないのではないか?」

テレス 「どうして私の言うことに賛成できないのだ。私のことが嫌いなのだな。」

アリス 「山がイヤなのではなくて、私のことがイヤなのだな。」

アリス・テレス 「ふんっ!」
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杏奈 「私こういうまどろっこしい痴話げんか、大っ嫌い!」

波 「私も。」

礼央 「でも、さっきの二人はまさにこんな感じでしたけど……。」

溝口先生 「意見の内容について、感情的にならずに検討する。そのときに大事なことは、自分の考えと違う意見の中に、取り入れられる良いところがないかを探すこと。他の意見から学ぼうとする姿勢がなければ合意形成はできない。」

波 「さっきのケンカの例だったら、解決策を探れると思う。例えば、泳げる湖がある山に行くとか。」

杏奈 「夏には海に行って、秋になったら山に行くとか。」

溝口先生 「そう。そうやってお互いに歩み寄って、みんなが納得できる案を考えていくの。波と杏奈も他人の例ならそれができた。つまりそれは、客観的に見ることができたから。」

杏奈 「そういうことなんだ…。」

溝口先生 「ではシナリオに戻りましょう。A案とB案、まずこの二つの案を客観的に見ること。そして、それぞれの良いところを探すこと。どちらかを選ばなければいけないと決めつけないで、A案とB案のよいところをあわせた新しい案が作れないかしら?」

合意形成のために、シナリオの再検討
  • 前向きで力強いA案
  • 切ないB案

マリー 「ハイハ〜イ !では、ここからは部長の私が仕切ります! まずはA案『アリスとテレスはジガを倒し、生き延びて人類再生へと歩み出す』っていうストーリーの良いところは?」

礼央 「人類再生へと歩み出すところが希望を描こうとしていて、ポジティブな気持ちで後味いいかも。」

波 「前向きで力強さがあることは確かだと思う。」

マリー 「それじゃ、次はB案『アリスとテレスはジガに倒され、二人の間に芽生えた愛は消去されてしまう』っていうストーリーの良いところは?」

礼央 「これ、切ないよね……。」

マリー 「胸キュンだよね〜!」

杏奈 「二人に芽生えた愛が摘み取られてしまうという切なさは、観客の心を引き寄せる力がある…と思う。」

礼央 「希望を取るか、切なさを取るか……。」


それぞれの案の良い所は、

A案 → 希望が感じられる「人類を再生させる」という部分
B案 → 切なさを感じさせる「二人は結ばれずに終わる」という部分

客観的に考えると、それぞれの良い所が浮かび上がりました。今度は、この二つをうまく組み合わせることができないか考えてみます。

  • 両者の良い部分を取る

マリー 「どっちもっていうのは、無理?」

杏奈 「う〜ん、できるかも……。」

波 「アリスとテレスは倒れてしまう。だけど希望は残るとか。」

マリー 「そうそう!」

杏奈 「アリスとテレスは倒れながらも、かつて生命を生んだ海に、再び人類を誕生させる力を与える。」

礼央 「ジガにも希望を託すというのは?ジガはアリスとテレスに共鳴して感情を持つ。それで、ジガは星に帰って革命を起こす、つまり、感情革命って、どうかな?」

杏奈 「消去されるアリスとテレス。それは同時に人類再生への新たなスタートになる。そしてジガにも希望が託される。二つの案が持つ希望と切なさが、一緒になる!」

波 「そのイメージをどう演出するかは、監督である杏奈に任せる!」

杏奈 「うん!」

そして完成した映画
  • コアを海に託そうとするアリスとテレス
  • 二人を倒すジガ

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ボロボロになり、支えあいながら海へと歩いていくアリスとテレス。
コアを海に託そうとする二人を、追ってきたジガが止めようとする。


テレス 「人類とアンドロイドのすべての英知である、このコアを……。」

アリス 「この海に託す。」

ジガ 「待て!何をするつもりだ。」

アリス 「ジガ、あなたももう気づいているはずだ。我々には感情が必要だという事を。」

ジガ 「だまれ!」


ジガが手をかざし、倒れ込むアリスとテレス。

  • 涙を流すジガ
  • 二人のコアは海へ帰った

テレス 「ジガ、君にはアンドロイドの未来を託す、再び過ちを繰り返すな……。」


アリスに手を伸ばすが届かずに機能停止するテレス。
ジガはしばし立ち尽くし、涙を流しその場から消え去る。
アリスとテレスのコアは二人の体を離れ、海へと帰っていった。
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  • できた!
  • 合意形成も「ロンリのちから」

杏奈 「できた…。」

礼央 「できたね。」

波 「できた。」

マリー 「できた〜!できたよ!」

溝口先生 「がんばったわね。良くできてたわ。」

波 「合意形成の難しさと大切さ、よく分かった。私たち意地を張り合ってお互いの良い所を見失っていたと思う。」

礼央 「合意形成のためには、他人の意見だけじゃなく自分の意見も客観的に見る必要がある。」

マリー 「みんなで話し合って、考えていくんだよね。みんなで。」

杏奈 「そして、さまざまな意見をもとに、そこからよりよい考えの可能性を探っていく。 もしかして、これも?」

溝口先生 「そう、これも、ロンリのちから。」

不思議の国の「合意形成」
  • 口々に主張する不思議の国の住人たち

帽子屋 「ヤムチャ! ヤムチャがいい。」

ハンプティーダンプティー 「そんなのやだ。ハンバ〜ガ〜!」

ヤマネ 「僕は辛〜い、スンドゥプチゲがいい!」

ディー&ダム 「和食がいいね。和食だ、和食。」

アリス 「ウサギさん、あの人たち、何してるの?」

ウサギ 「夕食を何にするか話し合ってるらしいよ。」

アリス 「みんなバラバラ! 不思議の国っていつもこんな感じね。」

ウサギ 「でも僕はそんな不思議の国が好きだな〜。」

アリス 「え〜、大変じゃない!」

  • 意見が一致した

ウサギ 「じゃあ、みーんなが同じことを言う国の方がいいかい?」

アリス 「う〜ん……それじゃ、つまらないかも。それに、そういう国って怖い。」

ウサギ 「誰か一人の意見に従うようにすれば、まとまりやすいけどね。」

アリス 「それって、もっと怖い。」

四人全員 「いろんな意見がある。それは素晴らしいことだ。 」

アリス 「あ、意見が一致した。」

帽子屋 「でもやっぱりヤムチャ!」

ハンプティーダンプティー 「ハンバーガー!」

ヤマネ 「スンドゥプチゲ!」

ディー&ダム 「和食がいい!」       

チェシャ猫 「合意形成への道はきびしい〜。」

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