NHK高校講座

ロンリのちから

Eテレ 毎週  金曜日 午後3:30〜3:40
※この番組は、前年度の再放送です。

ロンリのちから

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今回の学習

第7回

ロンリのちから (7)仮説形成

  • 監修:立正大学教授 野矢 茂樹
学習ポイント学習ポイント

仮説形成

  • シナリオが荒らされてる

放課後、部室に入ってきた映像部のメンバーたち。杏奈は机の上にシナリオを置いてあるシナリオを見つけます。どうやら置き忘れていた様子です。

杏奈 「やっぱり部室にあった。あ……。」

ほっとした表情を浮かべる杏奈。しかしシナリオを手に取ると、表情がみるみるうちに曇っていきます。

マリー 「どうしたの?」

杏奈 「シナリオが荒らされてる……。」

礼央・マリー 「え〜!」

杏奈のシナリオには、何者かによってたくさん書き込みがされていたのです。

礼央 「これって、演出や撮影のアイデアだよね。」

杏奈 「ロングショットを多用、ジャンプカットでつなぐ、シャローフォーカスでマクガフィンをおく……って専門的な事ばかり。」

礼央 「すごい。僕には難しくて半分も分からないや。」

マリー 「私、全然わからない。」

杏奈 「みんなは?」


部員たちはみな首を横に振ります。

  • そっと入ってくる犯人
  • 杏奈が出て行った後で書き込む犯人
  • みんなが驚いている隙に出て行く犯人

礼央 「ということは、僕たち映像部以外の生徒がやったってこと?」

杏奈 「それはありえない。だって鍵をかけておいたもの。」

礼央 「じゃあ、犯人は鍵が自由に使える人物?」

杏奈 「そして、映画に詳しい。」

マリー 「溝口先生?」

まさか溝口先生……。しかし礼央がそれを否定します。

礼央 「溝口先生の字、こんなに汚くないよ。」

マリー 「わざと汚く書いたのかも。」

杏奈 「そうね、溝口先生より映画に詳しい先生はいない……。」

礼央 「これは、密室のトリックだね。つまり、こうだよ。」

礼央はどこか嬉しそうです。

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杏奈がいるときに犯人はそっと入ってきた。そして物陰に隠れている。そのままこの部屋にいて、書き込みをする。そして、僕たちがシナリオの書き込みに驚いているときに、そっと出ていった。
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ガラガラガラ。突然ひらくドアの音にびっくりするメンバーたち。

溝口先生です。

  • 仮説形成を行い、仮説が正しいか検証する必要

一同 「溝口先生!」

溝口先生 「続けて。」

杏奈 「礼央が言うような可能性は考えられるけど、そこまでしてシナリオに書き込みをする動機が分からない。」

溝口先生 「おもしろいわね。あなたたちが今やっていることは、仮説形成というの。」

一同 「仮説形成?」

溝口先生 「仮説形成とは、あることがらに対して『なぜ? どうして?』という謎に答えるために、その謎を説明する仮説を立てること。だけど、仮説はまだ仮の説にすぎない。だから、仮説を立てたら、その仮説が正しいかどうかを検証しなくてはいけないの。あなたたちに、有名なエピソードを紹介してあげるわ。」

  • 病棟による、産後の母親の死亡率の高さの違いはどこから?

溝口先生が説明したのは、「仮説形成」の実例としてよく取り上げられるエピソードです。

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19世紀のウイーンの病院。ここには第一病棟と第二病棟があって、それぞれでお産が行われていた。ところが、第一病棟の方が第二病棟よりも産後の母親の死亡率が高かった。それはなぜか?
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マリー 「謎が現れた。」

溝口先生 「謎に対する仮説は通常複数考えられる。だから、想像力をふくらませてさまざまな仮説を考えてゆくの。」

ポイント1 『謎』を説明する仮説を考える
  • 医療設備や環境の違い?
  • 評判が妊婦に不安を与えた?
  • 第1病棟の医者は新米だった?

杏奈 「例えば医療設備とか、環境の違いが原因かしら。」

礼央 「第一病棟の方が死亡率が高いっていう評判が立って、それがお産をする人に不安を与えた、とか。」

マリー 「第二病棟の医者はベテランなので、第一病棟の医者の方が新米だったのかも。」

溝口先生 「いいわね。仮説を考えたら、それを検証していきましょう。」

  • 両者で大きな違いは見出されなかった
  • 妊婦の不安説には無理がある
  • 第1病棟は医者が、第2病棟は助産婦がお産を担当

杏奈 「私が立てた『環境の違い』という仮説はどうかしら。」

溝口先生 「当時もそれが疑われたわ。だけど調査した結果、大きな違いは見出されなかった。」

杏奈のたてた仮説では、事実をうまく説明できないようです。

礼央 「じゃあ、不安を与えた、という仮説は……。」

杏奈 「それが大きな死亡率の違いに繋がるのかなあ。」

溝口先生 「そうね。少し無理があるわね。」

確かに、不安が死亡率の違いにつながるという説明も妥当ではありません。

マリー 「医者の経験の違い、というのはどう?」

溝口先生 「でもね、死亡率が高い第一病棟では医者が出産を担当し、死亡率が低い第二病棟では、医者に比べると医学の専門知識を持たない助産婦が担当していたの。」

礼央 「え? 医者が担当していた方が死亡率が高かったの?」

溝口先生 「そう。」

3つ目の仮説もダメ。しかし「死亡率が高い第一病棟では医者が、第二病棟では助産婦がお産を担当していた」という新しい事実が浮かび上がりました。

マリー 「そこに新たな謎がありそう。」

  • 仮説が検証された

杏奈 「医者と助産婦の違い……。医者はお産以外にもいろいろな病気を診る。何か関係ないかな。」

溝口先生 「いいところに気がついたわね。第一病棟の医者は解剖などもしていたのよ。しかも、当時は病原体という考え方も感染という考え方もなかったから、消毒もきちんとしなかったの。」

礼央 「院内感染だ。」

溝口先生 「そこで、消毒を義務付けたら死亡率が減少した。」

杏奈 「仮説が検証された。」

そうです。院内感染が原因だったのです。

溝口先生 「これは当時その病院の医者だったゼンメルワイスという人が実際に行った仮説形成よ。あなたたちのシナリオ書き込み事件も、こんなふうに考えていくの。」

杏奈 「よし。私たちも仮説形成で、にっくき犯人を必ず見つけてやる!」

マリー 「まず『謎』を説明する仮説を立てるんだよね。」

  • 仮説1 映像部以外の生徒が犯人
  • 仮説1は不自然

ポイント1 『謎』を説明する仮説を考える
→仮説1:犯人は映像部以外の生徒だ

礼央 「最初に、映像部以外の生徒がやったという仮説が出された。」

マリー 「仮説を立てたら、検証しないとだめだよね。」


ポイント2 仮説の正しさを検証する

杏奈 「でも、部室には鍵がかかっていたし、映像部以外の生徒は部室の鍵を自由に使えない。」

マリー 「そこで密室のトリック!」

杏奈 「も、不自然でありそうにない。だから、映像部以外の生徒という仮説は否定される。」

  • 鍵が自由に使えて映画に詳しい人物
  • あんなに字はきたなくない

ポイント1 『謎』を説明する仮説を考える
→仮説2:犯人は鍵が使えて映画に詳しい人物

礼央 「次に、犯人は鍵が自由に使えて映画に詳しい人物だ、という仮説が立てられた。」

杏奈 「その仮説が正しいとすると、犯人は溝口先生しかいない。」


ポイント2 仮説の正しさを検証する

礼央 「だけど溝口先生の字はあんなに汚くない。とすると、この仮説も否定される。ここで行き詰まったんだよね。」

溝口先生 「では、その仮説のどこが間違っているのか、そこを修正する新しい仮説はない?」

礼央 「鍵が使えて映画に詳しい人物が書き込みをしたという仮説が否定されると……。」

杏奈 「でも、映画に詳しくなければあんな書き込みはできないし、鍵が使えなければ入れない。」

マリー 「あ!」

礼央 「何か思いついた?」

マリー 「一人じゃないかも!」

杏奈 「え?」

  • 犯人は二人?

マリー 「鍵を持っている人と映画に詳しい人が別々で、二人。」

杏奈 「鍵を使える先生が、映画に詳しい誰かを、連れてきた……。」

礼央 「なるほど、複数犯人説か。」

杏奈 「そんなことをしそうな先生は。」

礼央 「やっぱり溝口先生しかいない。」


ガラガラガラ。再びドアが開きます。

  • 転校生 新井波の登場
  • 波に詰め寄る杏奈

杏奈・マリー・礼央 「うわっ!」

黒髪の女子生徒が入ってきました。見慣れない顔です。

溝口先生 「紹介するわ。転校生の新井波さんよ。」

杏奈・マリー・礼央 「転校生〜!」

波 「新井波です。よろしく。私、映像部に入って監督と役者をやろうと思ってます。」

杏奈 「え、ちょっと待って……いきなり監督って。」

波 「もちろん次回作でかまわない。あ、溝口先生、これ入部届、書き込んできました。」

礼央 「これ、キミが書いた字?」

杏奈 「あなたが勝手に私のシナリオに書き込みをしたの!?」

波 「さっき溝口先生に入部届をもらいに来た時、部室も見学させてもらったのよ。そしたら台本が置いてあって、惜しいところがあったからアイデアを書いといたわ。それじゃあ今日はこれで。」

杏奈 「ちょ、ちょっとま……。」

  • 出て行ってしまった波
  • おしゃぶりを落としていった?

波は一方的にしゃべり、出て行ってしまいます。残されたみんなはあぜんとした表情です。

マリー 「なんかスゴいのが来たね……。」

礼央 「でも、キレイな子だなぁ。」

杏奈 「でもって何よ、何あの子!私ぜったい負けない。」

溝口先生 「あの子の父親は、私が昔お世話になった映画監督。彼女の映画に対する知識は父親譲りよ。これでマリーの仮説は完全に検証されたわね。」

マリー 「やった! 大金星!」

杏奈 「マリーは単純に喜んでるけど、何だか……。」

礼央 「でも仮説形成って、おもしろいね。ミステリーファンとしてはワクワクする。謎を解くときこそ、論理的に考えていかなくちゃいけないんだね。」

杏奈 「確かに、仮説形成はシナリオにも使えるし、自分の考えを整理する時にも使えそう。だけど……。」

礼央 「あ、あの子なにか落としていった。」

マリー 「赤ちゃんのおしゃぶり?」

杏奈 「何の意味が……。」

マリー 「全く分からない。仮説すら思いつかない。」

礼央 「先生、これは……?」

溝口先生 「仮説を思いつくかどうかは、発想力の問題。だから、ロンリだけではどうにもならないわ。言うなればこれは、ロンリの無力ね。」

鏡の国の仮説形成
  • 鏡の国に入るアリスとうさぎ
  • いろいろなことが あべこべになっているはず

アリス 「ねえねえ、うさぎさん。仮説が正しいかどうかは、どうやって確かめるの?」

うさぎ 「その仮説が正しいとどうなるかを予想して、その予想のとおりになるかどうかを調べるのさ。やってみるかい?」


二人は鏡の中に飛び込み、「鏡の国」にやってきます。


アリス 「ここはどこ?」

うさぎ 「鏡の国かな。」

アリス 「本当に?」

うさぎ 「ここが鏡の国だっていうのは、まだ仮説さ。だから仮説を確かめるのさ。」

アリス 「予想するのね。もしここが鏡の国なら、きっといろんなことが あべこべになってるはず。」

うさぎ 「ご飯を食べるとお腹が空くし、ねずみが猫を追いかける。」

  • この井戸に飛び込むと?
  • 飛び上がってしまう二人

アリス 「じゃあ、この井戸に飛び込んだら!?」

うさぎ 「おっこちないで、上に飛び上がっていくはず!」

アリス・うさぎ 「せーの!あ〜れ〜!」


空高く飛び上がり、どこかへ行ってしまった二人。

  • ヤマネに追いかけられるチェシャ猫

チェシャ猫 「他のことも あべこべかどうか調べなくちゃいけないのに、いなくなってしまった。」

ヤマネ 「ひひひひひ!」

チェシャ猫 「うわっ!ヤマネだ!逃げろー!」

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