NHK高校講座

公共

Eテレ 隔週 月曜日 午前10:00〜10:20
※この番組は、2022年度の新番組です。

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今回の学習

第8回 法の働きと私たち

国民の司法参加

  • 監修・講師:福井大学教育学部教授・橋本 康弘
学習ポイント学習ポイント

第8回 国民の司法参加

(1)司法のしくみと役割
(1)問いかけ

これからの社会を生きていくために必要なことを学び、考える「公共」。
今回は「国民の司法参加」。

私「“ながらスマホ”をしながら自転車に乗っている人をときどき見かけて、怖いなと思うことが
ある。もしも自転車で人身事故を起こしてしまったら、その人は逮捕されたり、裁判にかけられたりするのかな?

  • 0039_司法権
  • 0116_裁判の種類

事件や争いが起こったとき、法律を解釈し適用することによって、国民の権利を保障し、
「法の支配」を実現する役割をもつのが司法権です。
司法権を行使する「訴訟」、すなわち裁判には、個人や企業どうしの争いなどを扱う民事訴訟、国家が犯罪を犯した疑いのある被告人を裁く刑事訴訟、政府や地方公共団体が行う行政行為の
適法性を争う行政訴訟があります。

  • 司法権の独立
  • 司法権の独立

公正な裁判が実現されるためには、司法権が立法権や行政権から独立していること、すなわち「司法権の独立」が必要です。
「司法権の独立」とは、裁判所が国会や内閣の影響を受けないこと、裁判官が他の裁判官などの影響を受けずに自由にその任務を果たせることです。

  • 司法権
  • 最高裁判所

日本では、司法権は最高裁判所と下級裁判所である高等裁判所、地方裁判所、家庭裁判所
属します。

最高裁判所は下級裁判所の裁判官の指名権をもち、最高裁判所が出した判決は、
その後の裁判で判例として尊重されます。

  • 三審制
  • 国民審査

裁判は原則として公開されます。
また民事裁判、刑事裁判では、裁判を慎重に行うために、同一事件で三回まで裁判を受けることができる三審制が採用されています。

既に任命されている最高裁判所の裁判官が、その職責にふさわしい者かどうかを国民が審査する国民審査の制度があります。

最高裁判所は、法律や命令、規則や処分などが憲法に反していないかを最終的に判断する
「違憲審査権」をもっています。
この意味で最高裁判所は「憲法の番人」ともいわれます。

(1)探究活動
  • (1)問いかけ

私「もしも自転車で人身事故を起こしたら、その人は逮捕されたり、裁判にかけられたりするのかな?

(1)高校生たち

高校生たちに聞いてみました。

かい「被害者が訴えれば、裁判になる可能性が高いと思います」

バンちゃん「自転車は車と同じ車両なので、自転車に乗って違法なことをすれば裁判にかけられてしまうと思います」

せいちゃん「相手の怪我の具合にもよると思いますが、骨折などの重傷だった場合は、裁判などにかけられたりすると思います」

水野先生「逮捕されたり裁判にかけられたりした時、どんな責任が求められるのかな?」

しゅんしゅん「人を傷つけてしまったことに対する責任と、自転車を運転している時の責任があると思います」

かい「僕が最初に思いついたのは、損害賠償です。民事裁判なら損害賠償、刑事裁判だったら懲役とかがあると思います」

(1)講師解説
  • (1)講師解説
  • (1)探究の進め

それではここで、橋本康弘先生からのアドバイスです。

訴訟には、民事訴訟、刑事訴訟、行政訴訟がありますが、自転車で人身事故を起こしてしまったら、刑事上の責任として、罪に問われる可能性があります。
そのために、事実と証拠にもとづいて刑事訴訟が行われます。

しかし、仮に有罪になったとしても、被害者の治療費や働けなかった間の給料などの損害は
回復されないので、刑事訴訟とは別に民事訴訟が行われることもあります。

高校生のみなさんは、自転車による人身事故の場合、刑事上の責任だけでなく
民事上の責任も生じる可能性があることを指摘してくれました。
不注意により他人にけがを負わせることは、民法上の不法行為となり、賠償義務が発生します。
その義務を負わない場合、民事訴訟に発展する可能性もあります。
みなさんも自転車だからと油断せず、日頃からよく注意してください。

みなさんも、「裁判で人を裁く意味とは?」をテーマに探究してみてください。
高校生のみなさんから見ると、裁判は、とかく遠い存在かもしれません。
しかし、自転車事故のように、いつ何時(なんどき)、自分が事件に巻き込まれるかも
しれません。裁判に関わることになるかもしれません。
「裁判とは何か」「裁判で人を裁く意味とは何か」について、
今からしっかり考えておきましょう。

(2)刑事司法と司法参加の意義
(2)問いかけ

私「18歳で成人すると、18歳で裁判員に選ばれることもあるかもしれないそうだ。
もしも私が裁判員に任命されたら、ちゃんと引き受けられるかな?

  • 刑事訴訟
  • 刑事手続

国家が刑法などに反する罪を犯した疑いのある被告人を裁くのが刑事訴訟です。

罪を犯した疑いのある被疑者は、警察の取り調べを受けます。
被疑者が逮捕された場合は、検察に送検され、検察官による取り調べを受けます。
容疑が固まり検察に起訴されると、被告人として刑事裁判にかけられます。

  • 刑事訴訟のルール
  • 刑事訴訟のルール

罪を犯した疑いがある者には、「法定手続きの保障」、逮捕されても供述を拒むことができる「黙秘権」などが認められています。
また、刑事訴訟は「無罪の推定」「証拠主義」などにのっとって進められます。

  • 国ごとの死刑の有無を示す図
  • 取り調べの可視化

世界では現在、死刑を廃止している国と地域が140以上ありますが、
日本には死刑制度があります。

死刑制度には、犯罪の抑止効果などを理由に存続を支持する人もいますが、
無罪の人を有罪にしてしまう冤罪(えんざい)などを理由に廃止を望む人もいます。

冤罪の原因とされてきた、密室での違法・不当な取り調べを防止するため、近年、取り調べの
映像記録などの可視化が一部の事件で義務づけられるようになりました。

  • 成人年齢
  • その他の司法制度改革

国民に身近で信頼できる司法の実現を目指し、1999年から司法制度改革が行われました。
その一環として、一般の裁判員が裁判官といっしょに刑事裁判に参加する裁判員制度が導入されました。
2022年4月から成人年齢が18歳になることにともない、裁判員に選ばれる年齢も18歳以上となりました。

検察官が不起訴にした事件は、検察審査会が二度起訴すべきと議決した場合、強制的に起訴できるようになりました。
また、殺人罪などの時効の廃止・延期、司法取引なども始まっています。

(2)探究活動
  • (2)問いかけ

私「もしも裁判員に選ばれたら、あなたは引き受ける?
私たちに被告人の判決や量刑なんて決められるのかな?

(2)高校生たち

バンちゃん「私は、裁判員を引き受けます。理由は、一人の意見とはいえ、選ばれたらやりたいと思います。また、裁判員をやっている間は生活も保障されるからやってもいいと思います」

しゅんしゅん「僕は、引き受けたくないです。理由は、自分の判断だけでその人の人生を変えてしまうかもしれないし、冤罪の可能性もあるので、やりたくないです」

せいちゃん「自分も、引き受けたくありません。18歳という若い年齢で、人の罪状を判断することができないと思うからです」

水野先生「もしも、裁判員に選ばれたら、法律にのっとって判決や量刑を決められると思う?」

しゅんしゅん「決められると思います。私情をはさむとよくないので、法律にのっとった方が
自分の感情を出さずにできるからやりやすいと思います」

バンちゃん「私も、法にのっとってやるならできると思います。だけど、自分の意見をしっかり出して話し合うことがいちばん大事だと思います」

せいちゃん「私情を出し過ぎるのは良くないですが、被害者側の意見をくんであげることも大事だと思います」

(2)講師解説
  • (2)講師解説

ここで、橋本康弘先生からのアドバイスです。

2009年に、裁判員制度が導入されました。
その背景には、国民が刑事裁判に参加することで、裁判の内容や手続きに国民の良識を反映させるとともに、司法に対する国民の理解が深まり、司法への信頼が高まるという期待があります。
2022年4月からは、裁判員に選ばれる年齢が、18歳以上となっています。
司法への信頼感を高めるために、国民が裁判員として参加することの意味を考えてみましょう。

裁判員制度では、裁判員に選ばれると、原則として辞退することはできません。
ですが、学生や、重い病気や怪我の人、妊娠中の女性などは辞退することもできます。

過去に裁判員に選ばれた多くの人も、不安だったと思います。
しかし、裁判員として裁判に参加した人の感想を読むと、「非常に良い経験だった」と回答する人が全体の63%を占めるなど、好意的な意見が多いことも知っておいてください。

みなさんも、「裁判員制度で日本の司法はどう変わったのか?」をテーマに探究してみてください。
日本の裁判の審理は「わかりやすくなった」という成果も出ています。
裁判員制度のメリットとデメリットの両方を探究してみることで、裁判員制度の意義を理解するきっかけにしてみてはいかがでしょうか。

(3)私たちと裁判員制度
(3)問いかけ

私「日本は死刑制度を存続させるべき?それとも廃止するべきかな?

  • 裁判員制度
  • 世論調査

裁判員制度の対象となる事件は、殺人罪や強盗致死傷罪などの重大犯罪です。
つまり、私たちが裁判員として、「被告人を死刑にするか否か」という究極の判断をする可能性があるのです。

世論調査によると、死刑制度の存続を「やむをえない」と考える国民が、近年は8割を超えています。

  • 正義の視点
  • 無辜の視点

もしも、あなたが裁判員に選ばれたら、死刑判断を下すことができると思いますか?
二つの視点から考えてみましょう。


▼正義の視点
死刑存続派は、「犯した罪は犯罪者の命によってしか償えない」と主張します。
一方、死刑廃止派は「犯した罪への償いを心からの反省と更生への努力に求める」と
主張しています。
このように、犯した罪に対してどのような罰を科せば「正義」に適うかという判断は、
個人によっても、時代や文化的背景によっても異なるのです。

▼「無辜(むこ)の不処罰」の視点
刑事裁判で最も重視しなければならないのは、「無辜の不処罰」すなわち、無実の人を罰する
ことほど、重大な人権侵害はないということです。

裁判員制度により司法が身近になった今、「より公正な司法制度とは何か」について考えてみましょう。

(3)探究活動
  • (3)問いかけ

私「日本は死刑制度を存続させるべき?それとも廃止するべきかな?

(3)高校生たち

かい「死刑制度を存続させるべきだと思います。理由は、大量殺人などの事件のニュースなどを聞いて、相応の対応が必要だと思うからです。しかし、冤罪の可能性もあるので、一回の裁判で決めるのではなく、何回かに分けて決めた方がいいと思います」

せいちゃん「被害者側の心情を考えると、ただでさえ苦しめられたのに、犯人が生きていることが苦しみにつながると思います。死刑と判決されるような犯罪であれば、死刑にするべきだと思います」

さーちゃん「死刑制度はあるべきだと思います。亡くなった人の家族は、“人を殺したのに、なぜ犯人は死なないの”という気持ちはあるかもしれないからです」

バンちゃん「死刑制度には反対です。たとえ人を殺した人でも、その人を粗末に扱ってよいことにはならないと思います。また、冤罪の場合 取り返しがつかないし、無期懲役にして償ってもらえばいいと思います」

水野先生「裁判員制度は、今後も続けていくべきだと思いますか?」

せいちゃん「より客観的に(判決や量刑を)見るというメリットがあるので、裁判員制度は続けるべきだと思います」

バンちゃん「裁判員制度は、続けるべきだと思います。一般人であろうとも、自分なりの考えがあるので、素人だけど、考えを出すのはよいことだと思います」

しゅんしゅん「裁判員制度は、続けるべきだと思います。今もまだ冤罪などがあるので、きちんと改善して続けるべきだと思います」

(3)講師解説
  • (3)講師解説

ここで、橋本康弘先生からのアドバイスです。

日本における死刑制度をめぐっては、「存続派」と「廃止派」に分かれ熱心な議論がなされてきました。
ここでは、「存続派」は、「人を殺した者は自身の命をもって償うべき」といった理由を主張しました。一方で、「廃止派」は、「冤罪が発生する可能性が避けられないこと」を理由として
主張しています。

高校生のみなさんから、被害者感情を重視し「死刑制度」を存続すべきという意見が出ました。
一方で、冤罪事件が起こる可能性があるため、「死刑制度」を廃止すべきという意見も出されました。
「死刑制度」の存続か廃止か、という二つの対立する議論以外にも、「終身刑」をどう位置付けるのか、といった論点もあります。

みなさんも、「日本は死刑制度を存続させるべきか?廃止すべきか?」をテーマに探究してみましょう。
このテーマを探究するためには、例えば、「死刑制度に賛成・反対の理由にはどのようなものがあるのか」「国民の意見はどのようなものなのか」など、多くの情報を集め、比較・検討する
中で、この難しいテーマについて、あなたなりの答えを考えてみてください。

振り返り
振り返り

私「そっか。私たちの生活の安全・安心を支えてくれているのが司法制度なんだ。もしも将来、裁判員に選ばれることがあっても、きちんと参加できるようにならないとね…」

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