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※この番組は、2022年度の新番組です。

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今回の学習

第3回 公共的な空間における基本的原理

私たちの民主的な社会

  • 監修・講師:法政大学法学部教授・杉田 敦
学習ポイント学習ポイント

私たちの民主的な社会

(1)民主主義とは
問いかけ

これからの社会を生きていくために必要なことを学び、考える「公共」。

今回は「私たちの民主的な社会」。

私「町の歴史的な建物に、エレベーターを設置するかどうかでもめているらしい。お年寄りや車いすの人にはエレベーターが必要だけど、歴史的な建物を守りたいという人もいる。こんなときは、やっぱり多数決で決めるのかな?

  • 政治の役割
  • 民主主義

政治の役割は、私たちの社会生活を支えるルールやしくみをつくる決定を行うことです。
日本を含め多くの国々では、政治の仕組みとして民主主義を採用しています。

民主主義とは、私たち自身が政治的な決定を行うことです。
「国の政治を決めるのは私たち国民である」ことを、「国民主権」といいます。

  • 直接民主制
  • 間接民主制

民主主義は、直接民主制間接民主制に大きく分けられます。

直接民主制では、私たちひとりひとりが、直接決定に参加します。
ただし、国など大きな規模で実現することは難しいという課題があります。

一方、間接民主制では、まず自分たちの代表者を選び、選ばれた代表者たちが政治的な決定を行います。間接民主制では、決定されたことが民意から離れてしまう可能性があります。

日本の政治では、選挙などの間接民主制と、国民投票などの直接民主制が組み合わされています。

  • 多数決の欠点
  • 熟議

何らかの利害が対立したとき、民主主義の決定の方法として用いられるのは多数決です。
多数決の典型は、選挙です。

ただ、多数決は数の力で決めるので、決定したことが間違っていたり、少数派の意見が軽視されるという可能性もあります

そこで、多数決以外にも「熟議」、つまり十分に話し合って決定するという方法があります。
これも民主主義のひとつです。

(1)探究活動
  • 問いかけ

私「何かの利害が対立したとき、多数決で決めるのは民主主義的だと思う?

高校生のみなさん

高校生たちに聞いてみました。

おお「多数決で決めるのは、民主主義的だと思います。自分の意見が少しでも反映されるということは、民主主義なんじゃないかなと思います」

こう「多数決の方が、民主主義的かなと思います。多数決で票が集まるということは、その意見に対して賛成の人がたくさんいるということなので、多数の人が納得できる決定になると思うからです」

木村先生「では、多数決なら、間違った決定にはならないのかな?」

のぼる「何かを多数決で決めるのは、民主主義的ではないと思います。やはり、少数派の意見が削られてしまうのはよくないと思います」

ゆう「多数決が間違うことはあると思います。自分の意見をもたずに、大勢の人が言っている意見に流されてしまう人もいるので、多数決で決まったことが“正しい”ということとイコールにはならないと思います」

(1)講師解説
  • 杉田先生
  • 探究のすすめ

それではここで、講師の杉田敦先生からのアドバイスです。

私たちに関わるルールや方針を決めるのが、政治です。
そして決定の際に、私たちがなんらかの形で関わるのが民主主義です
民主主義が多数決で運営されることが多いのは、多くの人が納得しやすい決め方だからです。
しかし、多数意見が間違うこともあるので、少数意見にもよく耳を傾けるべきです。

いきなり多数決をするのではなく、しっかりとした議論が必要なのです。

多数決という抽象的な探究テーマでしたが、高校生のみなさんは、しっかりと議論していましたね。
一人の人の考えよりも、多数の人の考えの方が正しい確率が大きい、というのが多数決の根拠の一つです。
しかし、他の人の意見につられてしまって自分では考えない人々が多くなれば、こうした根拠は崩れてしまいます。

この多数決の落とし穴にも気づいたことで、より深い探究活動になりました。

みなさんも、「民主主義のよい面・悪い面」をテーマに探究してみましょう。
民主主義では、すべての人々が政治に関わります。
ある一人の人が政治のすべてを決定するのに比べ時間はかかりますが、みんなで決めたことだから守ろう、という意識が高まるかもしれません。
なぜ、多くの国で民主主義が採用されているのか、探究してみてください。

(2)立憲主義とは
問いかけ

私「憲法って何のためにあるの?

  • 法の支配
  • マグナカルタ

どんな権力者や支配者も、法に従わなければなりません。
これを、「法の支配」といいます。

「法の支配」は、13世紀イギリスのマグナ・カルタで宣言されました。
この原理は、17世紀末のイギリスの名誉革命の際に定められた権利章典に明記されました。

その後、「法の支配」は、「立憲主義」に発展します。
「立憲主義」は、憲法に基づいて政治を行うという考え方です。
立憲主義は、中世ヨーロッパで君主の権力を議会が制限する原理として生まれ、フランス革命などの市民革命を経ながら確立していきました。

日本国憲法にも、立憲主義の理念が取り入れられています。

  • 国家の目的
  • 三権分立

国家の本来の目的は、人が生まれながらにもつ人権をよりよく実現することで、
政治権力が人権をみだりに侵害することは許されません。


立憲主義には、権力が暴走しないよう「権力分立」のしくみがあります。
立法・行政・司法という、三つの権力が互いに抑制・均衡しあう三権分立はそのひとつです。

例えば、立法を担う国会には、行政を担う内閣不信任の権限が与えられています。
また逆に、内閣は国会を解散することができます。

  • 立憲主義
  • 日本国憲法

立憲主義によると、選挙で民主的に選ばれた議会が、民主的な審議を経て成立させた法律でも、憲法に違反していれば無効となります。

日本国憲法は、主権者である国民の総意によってつくられています。
憲法を制定する権力をもつのは、私たちです。

ですから、国民が必要と認めれば憲法を改正することができます。
しかし、基本的人権の保障や権力分立という、立憲主義の中心的理念を放棄することはできません。

(2)探究活動
  • 問いかけ

私「憲法って何のためにあると思う?私たちとどんな関係があるのかな?」

高校生のみなさん

あむろ「日本国憲法は、日本の国民がよりよく生きるために、必要なものだと思います」

ゆう「憲法は人々がよりよく生活するためでもあるし、人権などを守るためにもあるものなんだなと思います」

こう「憲法は、あえて変えられない法律のようなものなのかな、と思います」

木村先生「じゃあ、憲法は、みんなとどんな関係があるのかな?」

おお「平等を維持するためにも、憲法は必要なのかなと思います」

ゆう「おだやかな暮らしができているのは、憲法で平和や人権が守られているからだと思います。そうやって憲法は自分たちの生活と、知らないうちに関わっているのだと思います」

(2)講師解説
  • 講師解説

ここで、杉田敦先生からのアドバイスです。

私たちの政治は、民主主義です。
しかし、民主主義でさえあれば、それでいいのでしょうか。
実は、「立憲主義」という、もう一つの柱が必要なのです。
これは、政府のしくみや人権のあり方について、憲法という形であらかじめ決めておいて、その範囲内で法律を作ったり、政策を決めたりする、という考え方です。
「民主主義が暴走しないように枠をつくる」それが憲法の大切な役割です。

“憲法が、私たちにとってどんな意味をもつのか?”
なかなか難しい問題ですが、高校生のみなさんは、「私たちの暮らしを、憲法が“知らないうちに”支えているのではないか」と直観したようですね
何かある物事や制度の意味を考えるには、「それがなかったらどうなるか」と考えてみることが必要です。
例えば、水道や電気がなかったらどうなるかと考えると、その大切さがわかるはずです。

憲法が保障している人権の一つに、「言論の自由」があります。
世界には、政府に対して批判的なことを発言したり報道したりしただけで、逮捕されてしまうような国もあります。
そうしたところでは、政府が間違った方針を採用しても、民意によってそれを正すことができなくなってしまいます。
みなさんも、憲法の条文の中から選んで、「憲法と私たちの接点」について探究してみましょう。

(3)人権保障の意義と展開
問いかけ

私「アメリカの履歴書には、生年月日・年齢・性別を書いたり、顔写真を貼ったりすると、差別だから違法になるかもしれないんだって。人権や平等って難しいけど、どうしたら守られるのかな?

  • 世界人権宣言
  • 人権

国連の世界人権宣言では、どの人間も、人間であるだけで尊重される存在であることを
「人間の尊厳」としています。
すべての個人は、尊厳を持つものとして互いに平等であり、尊重しあわなければならないのです。

人権は、「人が誰もが生まれながらにしてもつ」とされる権利です。
そして、人権は憲法と、憲法にもとづく法律によって保障されています。

  • 自由権
  • 社会権

人権は、近代ヨーロッパの市民革命などで、それ以前の身分制的な特権が否定されることで成立しました。
アメリカ独立宣言フランス人権宣言にも、人権の保障がうたわれています。

人権は、まず、「自由権」として確立しました。
人は、国家によって不当な束縛・抑圧を受けず、社会的身分にかかわらず精神の自由・身体の自由・経済の自由が保障されます。

産業革命以降、資本主義の発達にともない、労働環境の悪化や貧困が深刻になりました。
20世紀になると、労働者たちは、人々の生活を保障する「社会権」を主張するようになったのです。
1919年に成立したドイツのワイマール憲法は、社会権を保障した20世紀型憲法の先がけとされています。

さらに、近年では、環境権やプライバシーの権利などの「新しい人権」もとなえられるようになりました。

  • 世界人権宣言
  • LGBTQ

人権の保障は、国際的にも取り組まれています。

国連で1948年に採択された世界人権宣言では、国籍・人種・民族・言語・性別・思想・信条・宗教にかかわる差別の禁止を定めました。
また、1965年に人種差別撤廃条約、1989年には子どもの権利条約など、人権を守るための条約も採択されました。

20世紀後半になると、社会的弱者の権利保障が大きく課題になり、1979年に女子差別撤廃条約、2013年には障がい者差別解消法なども制定されました。

近年では、LGBTQなど、性的マイノリティの人々の権利保障なども進められています。

(3)探究活動
  • 問いかけ

私「人権や平等を守るのは難しいけど、どうすれば守られると思う?

高校生のみなさん

おお「みんなが、自分のことだけを考えるのではなく、みんなのことを考えることによって、人権とか平等は守られると思います」

ゆう「人権や平等がどういうものか、どうすれば守られるのかについて、知ることが大切だと思います」

木村先生「人権や平等が守られていない、と感じることはありますか?」

こう「僕は、よく図書館に行きますが、車いすなどの方だと手が届かない所に置いてある本があります。そういう点は、あまり平等ではないと思います」

のぼる「足の悪い方などのために、階段にスロープがない所は整備した方がいい場所があると思っています」

おお「ニュースとかを見ていると、人種的、宗教的、政治的差別の話を聞くので、自分の知らないところで平等ではないことが起きているんだなと感じます」

(3)講師解説
  • 探究のすすめ

ここで、杉田敦先生からのアドバイスです。

憲法には人権保障についても書かれており、例えば差別を助長するような法律や政策は、民主主義的に決められても無効となります。
しかし、憲法に書いてあるというだけで、権利が十分に守られたり、社会の平等が実現するわけではありません。
差別や格差をなくすための具体的な政策によって、さらには社会の中での私たちの取り組みによって、進めていく必要があります。


高校生のみなさんは、障がいのある方々が生活する上で、私たちの社会にまだまだ多く残っているさまざまな壁にも気づいたようですね。
他にも、身の回りを見渡せば、貧困に苦しんでいる人々や、学校や職場での「いじめ」に悩んでいる人々など、困難に直面する人々の姿が見えてくると思います。

人権は、人が人であるというだけでもつものであって、国籍などによって左右されません。
今、世界ではグローバル化と言われる中で人の移動が多くなり、戦争や迫害を逃れる難民も増えています。
私たちの社会の一員となりつつある外国人の方々が、生活に困っていたり、十分な教育を受けられないなどの問題に直面しています。
みなさんも「日本に暮らす人の人権は守られているか?」をテーマに探究してみてください。

振り返り

私「そっか。憲法って自分とは関係ないと思ってたけど、私たちの権利や人権を守るためにある、大事なものなんだ…」

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