NHK高校講座

家庭総合

Eテレ 毎週 金曜日 午前10:00〜10:20
※この番組は、前年度の再放送です。(2020年度 収録)

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今回の学習

第23回 食生活

自分のからだをつくる 〜食生活の課題は?〜

  • 東京都立駒場高等学校教諭 木村 裕美
学習ポイント学習ポイント

自分のからだをつくる 〜食生活の課題は?〜

今回のテーマは 「自分のからだをつくる 〜食生活の課題は?〜」
  • 英
  • 太哉

「家庭総合」では、これから生きていくために必要な知識や技術を、りゅうちぇるさんと一緒に学んでいきましょう!

りゅうちぇる 「僕は最近、食生活を見直して、朝食をちゃんととるようになりました。そうしたら、どんどん体調がよくなってきて、いい感じに変化してきたんですよね〜。」

今回のテーマは「自分のからだをつくる 〜食生活の課題は?〜」、現役高校生の英さん(高1)、太哉さん(高3)と話していきましょう。

りゅうちぇる 「僕自身の食生活を採点すると、好き嫌いもちょっとあるので、だいたい70点くらいかな。高校生の二人は、自分の食生活に点数をつけるとしたら、どれくらいかな?」

英 「私は67点ぐらい?」

りゅうちぇる 「それはどうして?」

英「お昼と夜は、お母さんが出してくれる(食事の)メニューのバランスがいいから、それを全部、食べることで バランスよくとれていると思うんですけど…。朝食は時間がなくて、全然、食べられないときもあるので。」

太哉 「僕は50点くらいかなと思います。」

りゅうちぇる 「低い!それはどうして!?」

太哉 「朝は本当に食べないんですよ。たまに食べないとかじゃなくて、食べなくて…」

りゅうちぇる 「そっか。二人ともそれぞれ、食生活に課題があるみたいですね。今回は、みんなの食生活について考えていきましょう!」

3つのポイントは「食生活チェック」「『食べる』を考える」「食生活の課題」です。
つい偏った食生活になっていないか、チェックしましょう!!

食生活チェック
「週に朝食を食べる回数」アンケート高校生

東京近郊の高校生400人に聞いたアンケートでは、「週に朝食を食べる回数」という質問に、朝食を「毎日食べる」という高校生は、男子と女子を合わせた 全体では73.3%という結果でした。

りゅうちぇる 「朝食食べない派の太哉くん、これどう思った!?」

太哉 「(高校生が朝食を)こんな食べているんだ!って、率直に思いました。」

  • 太哉が朝食を食べない理由は?
  • お腹が鳴らない?

りゅうちぇる 「太哉くんが朝食を食べない理由って何なの?」

太哉 「朝ごはんを食べなくても生活できちゃっているから…、無理して食べなくてもいいのかなって、思っちゃいます。」

りゅうちぇる 「授業中とか、お腹がぐーって鳴ったりしないの?」

太哉 「鳴ったからって、何か?!っていう…」

英  「そういう感じ!」

「週に朝食を食べる回数」アンケート20代

高校生は7割以上が食べていた朝食ですが、20代になるとどうなるのでしょうか?
東京近郊の20代の独身男女400人に聞いたアンケートでは、「週に朝食を食べる回数」について、朝食を「毎日食べる」は、男女の合計 全体で45.8%という結果になりました。

太哉 「(食べない人が多くなるって結果が)似ているから、僕はもう20代なのかなって思いました。」

英 「(20代になると)お母さんの管理下から離れることが、(朝食を食べる回数が減る)大きい原因ではないかなって思います。」

ここで、ひとり暮らし(単身)の20代のデータに注目!
ひとり暮らしの20代では、朝食を毎日食べる人は37.5%。
高校生の約70%(朝食を毎日食べる)に比べると、かなり少なくなります。

りゅうちぇる 「ひとり暮らしの食生活って、どうしても不規則になりがちだよね。そこで、初めてひとり暮らしを経験する学生も多い、ある大学で行われている取り組みを見てみましょう!」

  • 100円朝食
  • ボリュームのあるおかず

半数以上の学生がひとり暮らしをしている立命館大学では、学生に100円で朝食を提供しています。
ごはん・みそ汁、そして9種類のおかずの中から 自由に3品を選ぶことができます。
このボリュームでたったの100円。学生にも大人気です。

  • 山浮ウん
  • 食事に対する考え方が変わった

地元・福岡を離れ、ひとり暮らしをしている 山 透さん。
100円朝食が始まる前は、家を出る時間ギリギリまで寝ていて、朝食はとっていませんでした。

山浮ウん 「早めに学校に来て朝食を食べるようになったら、そしたら自分の時間も作れるようになって余裕ができました。」

100円朝食のおかげで、生活リズムが変化した山崎さん。
自炊を始め、夕食は自分で作ります。
食に対する関心も増したといいます。

山浮ウん 「実際 作って食べて、自炊は大事だなと、野菜の値段も初めて知ったので。正直、食事に対する考え方が変わったかなと思います。」

  • 朝食提供が全国各地へ広がっている
  • 朝食を食べないと頭がぼーっとした

この大学では、1限目がない学生も朝食を食べに来て、そのあと勉強するために図書館の利用者も増えたそうです。
そして、学生の授業の集中力がアップしたと感じているといった先生の声もありました。
“朝食をとると、勉強にもいい影響がありそう”ということで、全国各地のほかの大学や、小・中学校などでも、朝食提供の取り組みが広がっています。 

英 「(大学での朝食提供が)うらやましいなあと思いました。私も、どうしても急がないといけなくて、何も食べずに(朝)出ていった時、ボーッとして授業内容が何にも頭に入ってこなくて、『やっぱり(朝ごはんは)食べなきゃだめなんだな』って思ったことがあります…。」

太哉 「(朝ごはんを)食べてないせいなんだ!」

りゅうちぇる 「そう。その頭がボーッとしたというのには、ちゃんと理由があるんです!」

私たちの脳は、ブドウ糖をエネルギー源にしています。
でも、ブドウ糖は体内に大量に貯蔵することができません。

  • 脳にはブドウ糖が必要
  • 朝食をとらないとイライラ

空腹な状態で起きた朝の脳は、エネルギーが欠乏した状態。
朝食でブドウ糖を補わなければ、脳の働きが低下します。


朝食を抜いて学校に行くと、なんとなくイライラしたり、授業に集中できなかったりした経験はありませんか?
これは、脳のエネルギーが不足していることが原因なんです。

英 「“食べることで気合いが入る”みたいな、根性的な話かと思ったから、ちゃんと(朝ごはんを食べたほうがいい)科学的な理由があったんだなって、すごい納得しました。」

りゅうちぇる 「だから、少しでも朝食はとるようにしたほうがいいよね。というわけで、朝食を用意しました!」

  • 主食は必ず食べよう
  • 乳製品や果物を足すとよい

ごはん・パン・シリアル、どれでもいいので、主食は必ず食べるようにしましょう!

英 「朝からちゃんと主食をとることで、脳に必要なブドウ糖を補給することが大切ということですね?」

りゅうちぇる 「そのとおり!」

  • 乳製品を加えて
  • サラダなどもプラス

主食のほかにも追加できるのであれば、牛乳やヨーグルトなどの乳製品を加えてカルシウムを補給しましょう。
ほかにも、バナナなどの果物もしっかり食べるようにしましょう。

りゅうちぇる 「そんなに手間をかけなくても、朝食って用意できちゃうんだよね。追加でサラダとか、温かいみそ汁やスープ、卵料理なんかもあればプラスしたいよね。」

「食べる」 を考える
  • 和食
  • 加工食品

朝食を食べない人が増えるなど、食生活が不規則になったのは、戦後、日本の食生活が大きく変化していったことと関係があります。

日本人の食生活は、新鮮な魚や野菜など、素材のあじわいを生かした食事(和食)が中心でした。
しかし第二次世界大戦後、食卓の風景は大きく変化します。

  • 外食
  • 中食

1950年代には加工食品やインスタント食品が普及し始めました。
1970年代になると、ファミリーレストランやファストフードといった「外食」や、調理された惣菜や弁当などの食品を持ち帰ったり、出前したりといった「中食(なかしょく)」も急速に広がり、食の外部化が進みます。
こうした状況は、日本の食文化を大きく変化させました。

  • 共食
  • 孤食

家族の食事のとりかたも、そのひとつ。
これまでは、食事は家族一緒にとる「共食(きょうしょく)」が一般的でした。
でも、いまは家族と同居していてもひとりで食事をする「孤食」が増加。
家族それぞれ、生活パターンが異なるケースが増えたためです。

  • 個食
  • コミュニケーションの場が失われつつある

さらに、家族がそれぞれ違うものを食べる「個食」も増えました。
自分好みの食事を簡単に用意できるようになったからです。

このような食事をする環境の変化によって、家族との大切なコミュニケーションの場も失われつつあります。

英 「ひとりで食べる人が増えたり、とらえ方はいろいろあるとは思うけど、いいようにも感じるし、どうなのかなっていう部分もあるし…。」

  • 食事の意義
  • 豊かな食文化を作っていこう

食べること(食事)の意義には、次のような役割があります。
「生理的役割」 空腹を満たすという、生理的欲求に基づく行動。
「心理的役割」 家族や友人と一緒に食卓を囲んで食事をすることで、心が満たされます。
「社会的役割」 一緒に食事をとることで人間関係を円滑にしたり、仲間意識を強めたり、さらに、家族や地域に伝わる食文化の伝承や、食文化を創造する働きもあります。

太哉 「社会的役割というのは、『食』というのは みんなで会話する場、みたいな感じなのかなと思いました。」

りゅうちぇる 「そうだよね。だから、僕は朝ごはんも絶対に家族で一緒に食べるんですよ。どんなに仕事が遅くなっても朝は一緒に起きて、一緒に食べて、『きょう、こんな日だね』『どこどこに行くね』って会話をする。一緒に食べて 一緒に経験を積んで、みんなで心豊かな食文化を作っていけたらいいよね!

食生活の課題
栄養素等摂取量の年次推移

日本人の栄養素の摂取量は、どう変化したのでしょうか?
肉や乳製品などに含まれる「動物性脂質」、そして「動物性たんぱく質」の摂取量は1990年代半ばごろまで大幅に増加しました。
「脂質」が増加し、「炭水化物」は減少する傾向が続き、栄養素の比率は欧米型に近づきました。

  • 生活習慣病
  • 肥満

その結果、食や生活習慣が原因の「生活習慣病」の患者が増えているのです。
特に、「肥満」の問題は深刻です。
体脂肪が過剰に蓄積された状態をさす「肥満」は、摂取エネルギーが消費エネルギーよりも多いこと。
つまり、食べすぎと運動不足による場合が多くの原因となっています。

  • 肥満は生活習慣病の原因
  • 体脂肪率

肥満は、糖尿病・高血圧・脂質異常症など、生活習慣病の原因となります。
また、肥満が動脈硬化を進行させ、心臓病や脳卒中といった生死に関わる深刻な病気になるリスクも高まります。

また、見た目はふつう、あるいはやせていても、体脂肪率が高いと肥満となる場合もあります。

太哉 「やせているから大丈夫ではなくて、食生活をちゃんとしないといけないなと思いました。」

英 「私のお父さんも、(お腹が)ポコっとしているけど、それが病気につながっちゃうって思うと、すごく深刻なことというか、考えなくちゃいけないなと思いました。」

  • 生活のリズムを整える
  • 体内時計

りゅうちぇる 「生活習慣病を発症するリスクを避けるために、高校生の今のうちから心がけておいたほうがいいのは、栄養バランスのとれた食事を規則正しくとること。それは生活のリズムを整えることにつながるんですね。」

人間には「体内時計」があり、体全体のさまざまな働きをコントロールしています。
実は体内時計の周期は25時間。そのため、体内時計を24時間に調節する必要があるんです。

  • 太陽の光を浴びる
  • 朝食をとる

体内時計の調節に必要なのは、毎朝、太陽の光を浴び、刺激を受けること。
もうひとつは、朝食をとること。
朝食と光で体内時計をリセットして、規則正しい生活リズムを整えます。

  • マウスの時計遺伝子の活動
  • マウスに朝エサを与えた

マウスを使った実験で、体内時計が乱れると、どんな影響があるかチェックします。
マウスの脳にある「時計遺伝子」が活動する様子を見てみると、活動量は ほぼ24時間周期でリズムを刻み、全身に、いつなにをすべきかを伝えています。

続いて、マウスの体内時計を乱す実験では、本来 夜行性のマウスに、夜にエサを与えずに、朝にエサを与えました。
人間なら昼と夜が逆転し、夜に食べるのと同じことです。
すると、大きく変化したのは「体重」でした。

  • マウスの体重の変化グラフ
  • マウスの握力実験

左のグラフの青の線が普通の時間にエサを食べていたマウスの体重の変化です。
成長期のため、体重は緩やかに増えていきます。
一方、違う時間にエサを食べ、体内時計を乱された(昼夜逆転した)ほうのマウスは、1週間後には体重が10%も増えました。(ピンクの線)

ほかにどんな変化をしたか、筋力をはかる装置でも比べてみましょう。
通常の生活をしたマウスと、エサの時間が昼夜逆転して体内時計が乱れたマウスの尻尾を引っ張ると、体内時計が乱れたマウスは握力が弱っているため、引っ張られる力にほとんど抵抗できません。
普通のマウスと比べて、(体内時計が乱れたマウスの)握力は10%近くも減ってしまいました。

  • 食の時間に対する意識が大切
  • 食べることを意識しようかな

英 「リアルに影響が出ていてびっくりしたのと、ネズミにとって朝にたくさん食べることは、人間にとって夜にたくさん食べるということで…。(食事の)時間に対する意識があまりなかったから、すごく重要なんだと思いました。

太哉 「そうですね、食べることを意識しようかなって、思いました。」

りゅうちぇる 「どう!?できそう?」

太哉 「週1回でも(朝食を)増やしていって、最終的に毎日取れたらいいな…。」

りゅうちぇる 「そうだね!少しずつでも、からだに変化はあらわれると思うから。高校生のうちから体内時計を整えるために、規則正しい生活と朝食をとることが重要なんだよね。しっかり朝食をとれるようにしようね!」

2人 「はい!」

わたしたちの未来 〜SDGs17のゴール〜
  • SDGsの目標11
  • 子ども食堂

「家庭総合」を学ぶとき、ぜひ知っておいてほしい「SDGs」について考えるコーナーです。
今回は、SDGsの目標11「住み続けられるまちづくりを」について。
誰もが住み続けられるまちづくりをするためには、人と人がつながること、そしてひとりひとりにとっての「居場所づくり」が必要です。

食べることの大切さについて学んできた今回は、地域の子どもたちのために食事を提供し、大事な居場所づくりをしている「子ども食堂」を紹介します。

  • 与那原町の子ども食堂
  • 生麻くん

  • 歩里ちゃん
  • 博美さん

沖縄県那覇市の東にある、与那原町。ここに、子どもなら無料で朝ごはんが食べられる食堂があります。
集まったみんなは近所に住んでいる、小・中学生です。
中学生の仲宗根 生麻くん。そして妹の歩里ちゃんです。
お母さんの博美さんはシングルマザー。病院で働いているため、子どもたちより先に仕事に出かけなくてはならないこともたびたびです。

生麻くんと歩里ちゃんは朝ごはんを食べずに学校に行くこともありました。
そんなとき、家の近くにできたのが、この 子ども食堂です。

子ども食堂は地域の人たちが協力して運営しています。
朝6時を過ぎると、朝ごはんの準備がスタート!
食材は地元の企業などが無償で支援しています。

  • 朝ごはんの完成
  • おいしく食べる生麻くん

そして7時、自慢の郷土料理がいっぱいの朝ごはんの完成です!

生麻くん 「うまい!」

歩里ちゃん 「めっちゃおいしい」

てづくりの味は、大好評!

  • よろこんで食べてくれるとうれしい
  • 学校へ行く子どもたち

(子ども食堂 地域の人) 「やっぱり子どもたちがよろこんで食べてくれるの見たら、たまらない。」

(子どもたち) 「行ってきまーす!」

地域の人たちの愛情がたっぷりつまった朝ごはんを食べて、子どもたちが元気に学校へ向かう、新しい1日が始まります。

  • 英の感想
  • 太哉の感想

英 「みんな 朝ごはんに対してポジティブなイメージを持っているなって、だから(この子ども食堂は)すごくステキな空間だなって思いました。」

太哉 「沖縄は何回か行ったことがあるんですけど、みんなあったかくて、知らない人なのに話しかけてくれたりして。子ども食堂の人たちも、知らない人同士じゃないですか。それでもあったかい食卓を、家族じゃなくても囲んでいるから、人柄があったかいのかなと思いました。」

りゅうちぇる 「みんなで食べると楽しいんだと、地域の人たちがあたたかく子どもたちの成長を見守る子ども食堂。そして、子どもたちも地域のことが好きになるから、お互いにとってすごくステキな場になっているなと思いました。
でも、新型コロナウイルスの影響で、大人数でみんなで一緒に食べること自体が難しくなってきているんだよね。
食事を通して、人と人がつながることができるあたたかさは、これからも守っていけたらいいよね。

2人 「はい!」


それでは次回もお楽しみに!

【第23回 自分のからだをつくる 〜食生活の課題は?〜】3ポイント まとめ
  • 家庭総合 第23回 ポイント1
  • 家庭総合 第23回 ポイント2
  • 家庭総合 第23回 ポイント3

1:食生活チェック
朝食をとると、脳の働きがアップします。

2:「食べる」を考える
近年、家族や仲間との「共食」が減り、「個食」や「孤食」が増えています。

3:食生活の課題
健康なからだを作るため、生活のリズムを整え、規則正しく食事をとりましょう!

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