NHK高校講座

科学と人間生活

Eテレ 隔週 木曜日 午後2:00〜2:20
※この番組は、前年度の再放送です。

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今回の学習

第19回 地学

太陽がもたらす景観と災害

  • 科学と人間生活監修:慶應義塾高等学校教諭 杵島 正洋
学習ポイント学習ポイント

太陽がもたらす景観と災害

  • ラジオを聞く僕蔵さん
  • 雲はどうやって雲になった?

僕蔵さんのところへ、今日も理陽くんと実穂さんがやって来ました。
ところが、ラジオで天気予報を聴いている僕蔵さんは、浮かない顔をしています。

実穂 「僕蔵さん、どうしたの?」

僕蔵さん 「明日、河原にピクニック行く予定だったんだけど、天気が悪そうでさ。」

理陽 「僕蔵さんって、雨男なんじゃない?」

僕蔵さん 「そうです、僕は雨男ですよ!昔からここぞというときには雨が降る。でもね、そんな雨男の自分をいつも慰めてるんだ。『雨を降らせているのも太陽なのさ』とね。」

今日のテーマは、「太陽がもたらす景観と災害」です。太陽が雨を降らせるという仕組みから考えていきます。


理陽 「太陽が雨を降らせているって、どういうことなの?」

僕蔵さん 「雨は雲、すなわち雨雲から降るというのは分かるよね。では、その雲はどうやって雲になったのかな?」

  • 海水が蒸発して雲になる
  • 雲の中で水が集まって大きくなる

雨雲の誕生から、雨が降るまでのメカニズムを見ていきます。

雨雲誕生のはじまりは海にあります。まず、海水が蒸発し水蒸気になります。この海水を蒸発させているのが太陽エネルギーです。太陽の力で上空へと向かう水蒸気はやがて冷やされ、小さな水の粒になります。それが雲です(左図)。

雲が集まると、雲の中で水の粒がぶつかり合って大きくなっていきます。粒が大きくなると、空に浮かんでいられなくなり、落下して雨となります。

雨は河川を通って海に戻り、水が循環しています。

  • 黒部峡谷
  • ∨字谷

太陽からエネルギーを得た水蒸気は、元の海に戻るまでにいろいろな仕事をします。
川を例に見ていきます。
川はさまざまな景観をつくり出しています。

富山県にある黒部峡谷の深い谷も、川がつくりました。
アルファベットのVに似ているため、V字谷といいます。

  • ∨字谷ができる前の川
  • 侵食が進んで∨字谷になった

山岳地域を流れる川は流れが速いため、川底を掘り下げる ”侵食” が進んで、断面がV字型になります。

  • 扇状地

川がつくる景観には、扇状地もあります。

  • 扇状地になる前の様子
  • 土砂が堆積して扇状地になった

川が山から平地に入ると、川の流れが急に遅くなり土砂が “堆積” します。扇状に広がった、この地形が扇状地です。

  • 三角州

川がつくる景観は他にもあります。三角州です。
三角州は、川が海に注ぎ込む河口に広がる平野です。

  • 三角州になる前の様子
  • 土砂が堆積して三角州になった

三角州は、川の流れがとてもゆるやかになり土砂を “運搬” する力が弱まることで、土砂が “堆積” してできます。

このように、川は侵食・運搬・堆積などの作用によって、さまざまな景観をつくり出しています。

  • 緯度による太陽エネルギーの差が風を生む

理陽 「大地を削り、景観をつくり出す川……。その川は雨がつくり出す。」

実穂 「そして雨を降らせるのは太陽!」

僕蔵さん 「ね、つながってるでしょ。でもね、景観をつくるのは川だけじゃないよ。風も景観をつくるんだ。そして、風を起こすのも太陽。前にその話したよね?」

理陽 「赤道と北極に照りつける太陽エネルギーの差が、風を生むんだよね。」

実穂 「地球は丸くて、赤道と極地方に当たる光の量が違うからね。」

理陽 「赤道付近は暖かい空気で、北極付近は冷たい空気。その2つが風を生むんだよね。」

僕蔵さん 「その赤道と北極の間の、日本があるあたりは “温帯” といって、暖かい空気と冷たい空気が頻繁にぶつかり合っているんだよ。」

実穂 「ぶつかると、どうなるの?」

僕蔵さん 「それを、実験でお見せしましょう。」

  • 実験に使う道具類
  • ビーカーにドライアイスを入れると白い煙が出てきた

実験には以下のものを用意します。
・ドライアイス
・水の入ったビーカー
・二つの部屋に区切られ、蓋で密閉されている透明な容器

まず水の入ったビーカーに、−79℃のドライアイスを入れます。すると、白い煙が出てきました。

このドライアイスの冷たい白い煙と、透明な容器を使い、暖かい空気と冷たい空気がぶつかったときに何が起きるのかを確かめてみます。

  • 小さい部屋にビーカーを入れる
  • 冷たい空気が底に沿って流れた

ドライアイスを入れたビーカーを、透明な容器の小さい方の部屋に入れます。蓋をすると、冷たい空気が充満しました(左写真)。
一方、大きい部屋の方には理陽くんと実穂さんの紙人形が置かれ、暖かい空気で満たされています。

箱の仕切りを持ち上げると、白い煙が容器の底に沿って流れ、紙人形を倒していきました(右写真)。
このように、冷たい空気が暖かい空気の下に潜り込んで風になった様子を見ることができました。


僕蔵さん 「この動きが風なんです。暖かい空気を押し上げるということです。」

理陽 「風ってこうして、できているんだね。」

  • 自転していないと仮定した場合の風の動き
  • 自転運動が加わった実際の風の動き

地球は丸いため、太陽エネルギーを受け取る量が極地方と赤道では異なります。こうして温度差が生じ、それが風を生みます。

左図は、地球が自転していないと仮定した場合の風の動きです。右図は、自転運動を考慮した実際の風の動きです。この風も川と同じように景観をつくっています。

風は波を起こします。風が起こした波は砂を運んで砂浜をつくったり、海岸に打ち付けて崖をつくったりします。

  • 屏風ヶ浦1
  • 屏風ヶ浦

千葉県の海岸にある屏風ヶ浦(びょうぶがうら)は、波に削られた断崖が10キロメートルも続いています。

  • 土砂災害
  • 竜巻

実穂 「太陽は雨を降らせ、川をつくる。また太陽は風をつくり、波を起こす。」

理陽 「その川と波が大地を削り、さまざまな景観をつくり出している。」

僕蔵さん 「太陽のはたらき、納得してもらえた?でもね、太陽は美しい景観をつくり出すだけではなく、ときには災害も もたらすんだ。」


大雨による河川の氾濫や土砂災害、突風や竜巻の被害などの災害も、元をたどれば太陽のはたらきによる雨や風によるものです。


僕蔵さん 「日本は1年間に降る雨の量が世界平均の2倍以上で、しかも山から海岸までの距離が短いから、大雨や洪水の被害が多いんだよ。でも、ただ手をこまねいているわけじゃないんだ。例えば河川の氾濫を防ぐための、すごい施設があるんだよ。」

リサーチモード! 河川の氾濫を防ぐ施設?!
  • 大須さん
  • 春日部市は土地が低く水があつまりやすい

河川の氾濫を防ぐための施設とはどのようなものなのでしょうか。実穂さんは、埼玉県春日部市にある首都圏外郭放水路管理支所を訪れました。

まず、支所長の大須栄一さんに春日部市がどのような場所なのか、話をうかがいました。春日部市を含むこの一帯は周囲よりも土地が低いため、水が集まりやすくなっています。そのため、ひとたび大雨が降ると浸水被害が起きやすい場所だといいます(右図)。

  • グラウンドの下に巨大な地下空間
  • 地下神殿

そんな浸水被害を防ぐための施設が屋外のグラウンドの下にあるといいます。
入り口から116段もの階段を降りると、巨大な地下空間にたどり着きました(右写真)。

浸水被害から私たちを守る この調圧水槽は、通称「地下神殿」と呼ばれ、内部には1本の重さが500トンもある巨大な柱が立ち並びます。
空間内部の広さは、高さ18メートル、幅78メートル、長さ177メートルもあります。

実はこの地下神殿は、大雨で増水した水が集まる場所で、春日部市を流れる5つの川とつながっているといいます。

  • 地下神殿は5つの川と地下でつながっている
  • 地下神殿に達した水は江戸川に排出される

地下神殿(左図星印部分)は、5つの川と地下でつながっています。その深さは50メートルで、長さは6.3キロメートルにもおよびます。そして、この施設全体を首都圏外郭放水路といいます。

大雨で川が増水した場合は、その川の水を地下の水路へと引き込むことができるようになっています。そしてその川の水は、やがて地下神殿へと達します。
地下神殿にまで達した水は強力なポンプを使い、より大きな河川である江戸川へと排出されます(右図黄色枠内)。

浸水の被害に悩まされていた春日部市も、この施設の完成で、被害が大幅に軽減されることになりました。


結論:洪水を防ぐための巨大施設は地下につくられていた!

  • 気象衛星
  • 気象衛星の画像

高度な建築技術による治水の一例として、「地下神殿」を見ました。
他にも、災害から私たちを守る大切なものがあります。気象観測です。

天気予報には、気象観測が不可欠です。
もし天候を気にせず大雨の日に河原に出かけてしまえば、大変な目にあうかもしれません。
このように危険な状況を避けるため、私たちは気象情報から外出について判断する場面がしばしばあります。

そして、この気象情報を出すのに必要な気象観測も、私たちが災害から身を守るための大事な技術やシステムといえます。


災害から安全を守るため、空と地上から気象観測をするシステムがあります。

空からの気象観測が、気象衛星です。右図は2015年9月に関東地方に大雨をもたらした雲の画像です。ひまわり8号が送ってきたこの映像から、雲が激しく発達し、移動する様子を詳しく観測することができます。
しかし、気象衛星では、この雲の中でどれだけ雨が降っているのかは分からないといいます。

  • 気象レーダー
  • 気象レーダーが記録した雨雲の映像

それに対して雲の中の様子を知ることができるのが、地上から観測を行う気象レーダーです。気象レーダーは、全国に20か所ほど設置されています。

右図は気象レーダーが記録した雨雲の画像です。降っている雨の量の違いが、色で分かります。気象レーダーでは観測した雨粒の大きさや動きなどから、気象衛星では知ることのできない、雲の中の雨の様子を知ることができます。

  • 気象庁観測部観測課 調査官 山内 洋さん
  • レーダーと衛星のデータを組み合わせる

気象庁観測部観測課の調査官 山内 洋さんに話をうかがいました。

山内さん 「雨雲というのは、元々はレーダーにも映らないような非常に小さな雲粒から発生します。レーダーは雲の発生のところは見ることができません。雲粒ですので、レーダーでは映りませんが、実は人工衛星では雲の発生から見ることができます。気象レーダーと気象衛星の両者を組み合わせることで、雲の発達と特徴を十分とらえることができます。」

このように気象観測では、空からの観測と、地上からの観測がどちらも必要不可欠だといえます。こうした観測情報をもとに、私たちは天気の変化を予測することができます。

  • 次回もお楽しみに!

理陽 「気象観測の技術が向上すれば、災害予測も今よりも速く正確にできるようになるのかな?」

実穂 「そうだと思うよ。だって、そのための技術開発でしょ。」

僕蔵さん 「確かにね。でもね、いくら精度の高い災害情報を受け取ったとしても、そのとき僕たちがどう行動するかということが とても大事なことだと思うんだよね。」

二人 「なるほど〜。」


それでは次回もお楽しみに〜!

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