NHK高校講座

科学と人間生活

Eテレ 隔週 木曜日 午後2:00〜2:20
※この番組は、前年度の再放送です。

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今回の学習

第14回 物理

熱くなったり冷たくなったり

  • 科学と人間生活監修:東京都立豊島高等学校指導教諭 佐藤 功
学習ポイント学習ポイント

熱くなったり冷たくなったり

  • ホットミルクの中と水の中とそれぞれ温度計を入れる

今日も僕蔵さんのところへ、理陽くんと実穂さんがやって来ました。

理陽 「おじゃまします。僕蔵さん、この部屋寒くない?」

僕蔵さん 「やっぱり?灯油を切らしてストーブが使えないんだ。それでホットミルクで暖まろうと思ったんだけど、熱くなりすぎちゃったから、冷ましているんだ。」

そう言う僕蔵さんはホットミルクと、それを冷ますための水とに、それぞれ温度計を使っています。


理陽 「温度計を二本も使って大がかりじゃない?」

実穂 「やりすぎ。」

僕蔵さん 「水で牛乳を冷ます……。確かにたったそれだけのことかもしれない。でも、そこには科学的に説明可能な現象が今まさに、ここで起きているんです!」


今日のテーマは、「熱くなったり冷たくなったり」です。物質の温度を決めているものとは何かということを考えていきます。


理陽 「ところで科学的に説明可能な現象って何?」

僕蔵さん 「熱平衡(ねつへいこう)って聞いたことある?」

  • 熱いミルクを冷たい水につける
  • ミルクの温度が下がり水の温度が上がる

熱平衡とは、熱いミルクを冷たい水につけたときなどに起きる現象です。ミルクから熱が出て温度が下がり、水に熱が入って温度が上がります(右図)。

  • 熱平衡

しばらくするとミルクの温度と水の温度は近づいていき、やがて同じになります。この状態を熱平衡といい、その温度を熱平衡温度といいます。

  • 水で薄めたミルク
  • ミルクの中の微粒子がブラウン運動をする

水で薄めたミルクを顕微鏡で観察します。
顕微鏡をのぞいてみると、多数の粒が不規則に動いているのが見えました(右写真)。
この粒はミルクの中の微粒子で、その不規則な動きをブラウン運動といいます。

  • 微粒子に水の分子がぶつかる

ブラウン運動のしくみを見ていきます。図の青い粒が、ミルク中の微粒子です。

この微粒子が不規則に動く理由は、顕微鏡でも見ることのできない水の分子が衝突しているためです。
このような原子と分子の乱雑な運動を熱運動といいます。

ブラウン運動は温度が高くなるほど、動きが激しくなります。それは温度が高くなるほど、原子と分子の熱運動が激しくなるためです。

ミルクを冷ますために水につけるとミルクの温度は下がりましたが、この現象も熱運動で説明することができます。これは、激しく熱運動している温度の高いミルクのエネルギーが、温度の低い水に伝わったためです。これを熱伝導といいます。

  • 金属とプラスチックをほほにつける
  • 放射温度計

次に、熱伝導について考えていきます。
左写真のように金属とプラスチックをほほに当てると、金属のほうが冷たく感じます。


僕蔵さん 「どうして金属のほうが冷たく感じるのだと思う?」

実穂 「金属のほうが温度が低いからでしょ?」


物の表面の温度を測定することができる放射温度計(右写真)で、実際に、金属とプラスチックそれぞれの温度を測ります。すると、どちらも同じ、22.3℃でした。

ほほに当てたときに金属のほうが冷たいと感じるのは、プラスチックより金属の温度が低いからというわけではなく、金属の方が熱伝導が大きいためです。熱伝導が大きいということは、ほほの熱運動のエネルギーがプラスチックと比べて金属の方がより速く伝わるということです。

この熱伝導のしくみを利用して作られているものの一つに、魔法瓶があります。

リサーチモード! 魔法瓶の保温のしくみ
  • 魔法瓶
  • 山口 己年男さん

熱伝導と深い関係のある魔法瓶の保温のしくみを調査します。魔法瓶に入れたお湯は時間が経っても温かさを保つことができますが、どのようなしくみなのでしょうか。大阪にある まほうびん記念館を訪れ、館長の山口 己年男さんにお話をうかがいました。

山口さんによると、ガラス製の魔法瓶が温度を保つ秘密の一つだといいます。

  • 真空状態にして熱伝導を抑える
  • 輻射熱で熱が伝わる

ガラス製の魔法瓶の断面図を見てみます。ここには、魔法瓶の保温の秘密が二つ隠されています。

一つ目は、二重構造で真空を作り出し、熱伝導を抑えているということです(左図)。真空中には熱を伝える物質がありません。しかし、真空中であっても熱が伝わる現象があります。それが赤外線などによる輻射熱(ふくしゃねつ)です(右図)。

そこで二つ目の秘密です。

  • 輻射熱を閉じ込めるために銀メッキが施されている
  • 保温効果の実験

この輻射熱を閉じ込めるため、銀メッキが施されています。

約80℃のお湯で保温効果の実験をします。真空ではない容器と真空の容器を用意し、お湯を注いでフタをしておきます。

  • 真空でないものは熱が逃げた
  • 真空のものは温度が下がらなかった

3時間後に温度計でお湯の温度を測ると、真空ではない容器は56℃になっており、たくさんの熱が外に逃げたことが分かります。
一方、真空の容器は78℃でした。真空の容器は熱を閉じ込めておくことができるため、ほとんど温度は下がりませんでした。


結論:魔法瓶は熱伝導を抑え保温している。さらに、銀メッキで輻射熱も閉じ込めている。

  • 液体の中にバナナを入れる
  • 液体の中に入れるとバナナが砕けた

ここからは物体の温度について考えていきます。

僕蔵さんが用意したのは、グツグツと沸騰した液体とバナナ。
この液体の中にバナナを入れ、少ししてから取り出しました。

このバナナで、板に刺さって立っている釘を叩いてみます。
普通であれば釘はバナナを貫通してしまいますが、このバナナは右写真のように砕けてしまいました。
このように、液体の中に入れた後のバナナは、硬く凍っていました。

※この実験は適切な指導者のもとで行ってください


グツグツと沸騰した、この液体の正体は液体窒素です。液体窒素は窒素が液体になったもので、温度は−196℃です。窒素は−196℃で液体から気体になるため、たとえば冷凍庫の中に入れても、グツグツと沸騰し続けます。

また、絶対零度は液体窒素より低い温度です。その温度は−273℃で、熱運動が停止する温度です。

理陽 「熱運動が停止するということは、分子や原子の動きが止まってしまうということ?」

僕蔵さん 「そういうこと!絶対零度の−273℃よりも低い温度は存在しないと考えられているんです。せっかくだからこの液体窒素でもっと実験してみようか?」

理陽、実穂 「はい!」

  • 空気の入ったビニール袋を使って実験
  • 液体窒素の中に入れるとしぼんだ

中に空気の入ったビニール袋を、液体窒素に入れてみます。

僕蔵さん 「この袋はどうなると思いますか?」

理陽 「液体窒素の中に入れると、このままの形で固まって、外に出したときに握るとパリパリって砕けちゃうんじゃないかな。」


実際に袋を液体窒素の中に入れると、袋がしぼんできました(右写真)。

袋がしぼんだのは、冷やされることで空気の体積が小さくなったためです。また、空気の体積が小さくなったのは、原子や分子の熱運動が抑えられたためです。

  • 袋を冷やすのをやめたらふくらんだ

袋を液体窒素から取り出し、冷やすのをやめると、今度は膨らんできました。温められることで、原子や分子の熱運動が再び激しくなり、内部の空気の体積が増したためです。
最終的には、液体窒素に入れる前とほぼ同じ状態に戻りました。

  • 体温で水温を上げる実穂さん
  • タオルでシェーカーを擦る理陽くん

次は物体の温度を上げることについて考えてみます。

シェーカーに入れた水の温度を、二分間でどちらがより上げられるかを、理陽くんと実穂さんが競います。
理陽くんと実穂さんの、それぞれのシェーカーに同量の水を入れ、フタをします。入れる水の温度は22.5℃です。


競争がスタートすると、実穂さんはシェーカーを思い切り振りはじめました。

理陽 「どうしてシェーカーを振っているの?」

実穂 「水の温度を上げるには水の分子の熱運動を、より激しくするっていうことだから、そのために振ったほうがいいかなと思って。」


しばらくすると実穂さんは、今度は首元にシェーカーを挟みました。

理陽 「今度は何?」

実穂 「体温でもしかしたら温度が上がるかなと思って。」


一方、理陽くんは 僕蔵さんに手伝ってもらい、タオルでシェーカーをこすりはじめました。

  • 計測結果

2分経過した後、温度計でシェーカー中の水の温度を測ってみます。
結果は、実穂さんの温度は25.1℃、理陽くんの温度は26.6℃でした。


僕蔵さん 「強く “振る” とか “こする” とか、物理の勉強でいうところの “仕事” をすると、熱運動が激しくなって温度が上がるんだ。」

  • 実験装置
  • 下部分に綿が入っている

最後の実験を見てみます。
僕蔵さんが用意した装置の底には、綿が入っています(右写真)。

  • ピストンを一気に押し込む
  • 綿が発火した

ピストンを勢いよく下に押し込むと、綿が発火しました。
綿が燃えた理由は、ピストンでの圧力が気体の原子や分子の熱運動を、綿が発火するほどにまで高めたためです。


仕事が熱をつくり、熱は仕事をする。私たちはこのような熱と仕事の関係の中で暮らし、生きています。

  • ティータイムをする三人

僕蔵さん 「ところでお二人さん、熱力学の第二法則って知ってる? “与えられた熱のすべてを仕事に変換する熱機関は存在しない” これが、熱力学の第二法則。でもね、熱をできる限り仕事に変換する熱機関を考え出すのが、僕の使命なんだ。よし!体が温まったところで仕事するか〜!」


そこへ僕蔵さんを銭湯に誘う声が聞こえてきました。いそいそと出かけていく僕蔵さんを見守る理陽くんと実穂さんなのでした。

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