NHK高校講座

科学と人間生活

Eテレ 隔週 木曜日 午後2:00〜2:20
※この番組は、前年度の再放送です。

科学と人間生活

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今回の学習

第8回 総合

光と色の科学

  • 科学と人間生活監修:筑波大学附属駒場高等学校教諭 吉田 哲也
    科学と人間生活監修:東京都立八王子東高等学校主幹教諭 水間 武彦
学習ポイント学習ポイント

光と色の科学

  • 炎色反応

僕蔵さんと理陽くん、そして実穂さんが、僕蔵さんの部屋にやってきました。三人は、花火大会の準備をしてきたようです。

僕蔵さん 「いや〜、お疲れさま。助かったよ、ありがとう。」

理陽 「花火大会の準備ってテント張ったり、椅子並べたり、本当に疲れるね。」

実穂 「わたし一回、家帰るからね。浴衣着るんだも〜ん。」

僕蔵さん 「実穂ちゃん、ちょっと待って。その前に、これから見る花火の “光” の色の話をしませんか?それを知っておけば、花火をより楽しむことができると思うよ。」


今日のテーマは「光と色の科学」です。
夜空に輝く花火。その光と色の演出を、科学の力が支えているのです。


僕蔵さん 「お二人に質問です。花火の光の色って、すごく色んなものがあるじゃない?あれって、どうやって色を出していると思う?」

理陽 「どうやって?考えたことなかったな。」

実穂 「 “炎色反応” と関係しているっていうのは聞いたことある。でも、花火の色と実際どんなふうに関係しているのかっていうのはよくわからないけど……」

僕蔵さん 「じゃあ、その炎色反応と花火の光の色がどのように関係しているのか、実験で確かめてみようか。」

  • 塩化リチウム
  • 試験管に入れたリチウムに水を加える

炎色反応の実験には、金属元素を含む金属化合物を用意します。今回は塩化リチウムという金属化合物を使用します。

まず試験管の中に塩化リチウムを薬さじ(小)で一杯入れ、水を加えます(右写真)。試験管を軽く左右に振って、塩化リチウム水溶液のできあがりです。

※この実験は適切な指導者のもとで行ってください

  • 白金線を炎に入れても炎の色は変わらない
  • リチウムに反応して炎の色が赤くなった

炎色反応を見る前に、白金線を炎の中に入れてみます。このとき、炎の色に変化はありませんでした(左写真)。

次に、先ほど作った塩化リチウム水溶液に白金線をひたし、炎の中に入れます。すると炎の色が赤くなりました(右写真)。

このように、金属元素を含む物質を炎の中に入れると、その金属元素特有の色を示します。
この現象のことを炎色反応といいます。
リチウムの場合、炎の色は赤くなります。

  • 金属元素の入った数本の試験管
  • バリウムに反応して炎が黄緑色になった

他の金属元素でも実験するために、試験管を数本用意しました。これらの試験管に入っている水溶液には、どれも金属元素を溶かしてあります。
一つの水溶液を選び、白金線を入れます。その白金線を炎の中に入れると、今度は炎の色が黄緑色に変化しました。


僕蔵さん 「炎の色が黄緑色になったのは、水溶液の中にバリウムという金属元素が入っていたからなんだ。」

理陽 「バリウムってレントゲンを撮るときの?」

僕蔵さん 「それそれ!」

実穂 「もっと他のも見たい!」

  • 銅を溶かした水溶液
  • 銅に反応して青緑色になった

次は、用意した試験管中で唯一色のついている水溶液で炎色反応を見てみました。

この水溶液で炎色反応を見ると、炎は青緑色になりました(右写真)。
この水溶液には、10円玉などに利用される、金属元素の銅が入っています。

  • 金属が含まれている化合物
  • 金属化合物を水溶液にする

金属が含まれている化合物を用意します(左写真)。これらを溶かした水溶液を炎の中に入れ、炎色反応を見てみます。

  • リチウムは赤になる
  • バリウムは黄緑色になる

リチウム(Li)は鮮やかな赤色、 バリウム(Ba)は黄緑色です。

  • 銅は青緑色になる
  • カルシウムは橙赤色になる

銅(Cu)は青緑色、カルシウム(Ca)は橙赤色です。

  • カリウムは赤紫色になる
  • ストロンチウムは紅色になる
  • ナトリウムは黄色になる

カリウム(K)は赤紫色、ストロンチウム(Sr)は紅(深赤)色、ナトリウム(Na)は黄色になります。

このように、炎色反応では、それぞれ金属元素特有の色を放ちます。
しかし、なぜ炎の色が違うのでしょうか。

  • 光の波長と色の関係
  • 赤と紫の波長の違い

炎色反応と炎の色の関係を、光の波長で考えてみます。
左図は光の波長と色の関係を表したもので、光の色は、光の波長で決まります。

右図の上部は赤い光の波長です。両矢印で区切られた部分が一つの波です。下部の紫の光の波長と比べると、赤い光の方が波長が長いことが分かります。

金属元素ごとに炎の色が違うのは、炎が発する光、つまり光の波長の長さがそれぞれ異なるためです。


理陽 「金属が炎の色を変えているなんて不思議だね。」

僕蔵さん 「燃やしたときの炎の色から、それがどんな金属元素なのかを炎色反応で確かめることができるんだ。」

実穂 「でも、金属元素って実際の花火作りでどのように使われるんだろう?」

リサーチモード! 金属元素と花火
  • 井上吉勝さん
  • 銅とストロンチウム

実穂さんは花火工場を訪れました。創業は昭和元年で、日本で数少ない国産の玩具花火を製造する会社です。
迎えてくださったのは、花火の製造と開発をしている井上 吉勝(いのうえ よしまさ)さんです。早速、井上さんの案内で薬品庫へ向かい、花火で利用する金属を見せていただきました。
実際にどんな金属が使われているのかは企業秘密ですが、この工場では約10種類の金属元素が使われているといいます。

つくるのが難しい色をたずねてみると…

井上さん 「つくるのが難しい色は中間色です。」

実穂 「中間色というと、例えばどんな色ですか?」

井上 「紫色です。紫色は銅が燃えたときの青と、ストロンチウムが燃えたときの赤を混ぜてつくるんですが、その混ぜるバランスが大変難しいんです。」

  • マグナリウム
  • マグナリウムの光

花火で使われる金属は他にもあります。その一つが、マグナリウムです。マグナリウムは、アルミニウムとマグネシウムを混ぜたもので、花火の光を明るくしたいときに使います。

右写真がマグナリウムの光です。金属元素は花火の色だけではなく、明るさも調整しています。そして、花火に欠かせないのが音です。花火の音も金属の混ぜ具合で変わってきます。


結論:金属元素は花火の光の色、明るさ、音をつくり出すために使われている。

  • 岩淵寛さん
  • 鉄が含まれている上薬

色をつくる金属元素の利用は、花火だけではありません。金属元素は、陶磁器の着色にも使われています。
それを確かめるべく、愛知県陶磁美術館を訪れました。この美術館には陶芸体験ができる施設も併設されています。陶芸指導員の岩渕 寛さんに話をうかがいました。

焼き物の着色の一つとして上薬というものが使われており、その中に金属が含まれているといいます。
早速、上薬の一つを見せていただきました(右写真)。この上薬には鉄が含まれており、その鉄の量を調整することで、焼き上がりの色も変わってきます。


岩渕さん 「上薬の中に金属が入っていると色がつくということは理解していただけたと思います。しかし鉄だけに限らず、上薬の中に入っている(金属の)量によって、いろいろな色に変化していくんです。」

  • 鉄を使った陶磁器はその量によって違う色になる
  • 僕蔵さんに質問する理陽

上薬に鉄を使った陶磁器は、上薬に含まれる鉄の量によって色が違ってきます(左写真)。


実穂 「花火の色とか、陶磁器の色をつくり出す秘密って、金属だったんだね。」

理陽 「金属によって光の色が違うのは、波長の長さが違うからだっていうことはよく分かったんだけど……赤外線とか紫外線は目に見えないんだよね?」

実穂 「でも見えないって言うけど、家にある赤外線のこたつは赤い色が見えるけどな……。」


こたつの赤外線は熱線とも呼ばれていて、物を温める作用があります。しかし、こたつの光にはさらに可視光線の赤い光が混ぜられています。こたつの光を目で見ることができるのは、このためです。


僕蔵さん 「赤外線はテレビとかのリモコンでも使われているんだけど、目には見えないでしょ?それに自動ドアとかトイレとか、身近なところで赤外線は使われているんです。さらに、赤外線は宇宙観測にも利用されているのです!!」

リサーチモード! 赤外線と宇宙観測
  • 山村先生
  • 通常のものと赤外線で観測したオリオン座の写真の比較

赤外線と宇宙観測には一体どのような関係があるのでしょうか。
理陽くんは、宇宙の開発と研究を行う施設 JAXAを訪ね、山村 一誠(やまむら いっせい)先生に話をうかがいました。
赤外線を利用して宇宙観測をしている山村先生は、太陽のように自分自身で輝く星々の将来の姿や、星の進化を研究しています。

赤外線を利用して、どのように宇宙観測ができるのでしょうか。
オリオン座を可視光で撮影した写真(右写真左側)と、赤外線で観測した写真(右写真右側)を比較してみます。


山村先生 「赤外線で観測した方は、まず星が見えません。その代わりに、全体的に赤いもや〜っとしたものが見えます。」


赤外線で観測した写真の赤い「もや」は、宇宙空間に広がるチリやガスです。チリやガスは、新しい星をつくる材料になります。
赤外線の宇宙観測では、このチリやガスの温度の高い部分、低い部分が分かります。

  • あかり

しかし、なぜチリやガスの温度が分かるのでしょうか。


山村先生 「赤外線で世の中を見ると何が分かるのか、何が違うのかということを、我々の生活の中のもので実際に見てみましょう。」

  • 赤外線カメラ
  • 手のひらは白く写る

赤外線カメラを使って、見え方の違いを確かめます。最初に、理陽くんの手のひらを撮影します。赤外線カメラでは、理陽くんの手のひらは白く写りました。

  • 湯と氷水に手を入れる
  • 氷水に入れた手のひらは黒く写る

次に二つの器にそれぞれ、お湯と氷水を用意し、理陽くんはその中に10秒間手を入れました。再び赤外線カメラで見てみると、冷たい水で冷やされた手のひらは真っ黒に写り、お湯で温められた方は白く写りました(右写真)。
つまり、白い方は温度が高くて、黒い方は温度が低いということです。

赤外線で観察すると、たとえ離れていても、その物体の温度の高い部分・低い部分が分かるということが確かめられました。

  • 赤外線で撮影したオリオン座
  • 赤外線写真にだけ見られる光

オリオン座を赤外線で観測した写真には、白く囲んだ円のうち、白い点のように見える部分があります(左写真)。その場所では、周囲より温度が高く、星が誕生しています。

可視光で撮影したオリオン座と、赤外線で撮影したオリオン座の二枚の写真を比べてみると、赤外線の方にだけしっかりと写っている光があります(丸で囲んだ部分)。実はこの場所で新しい星がつくられています。


山村先生 「星が生まれて、成長していく。そういう過程を赤外線で観測することができるわけです。こういうデータを積み重ねることによって、我々は宇宙の歴史を明らかにしようとしています。

理陽 「すごいロマンチックですね。」


結論:赤外線をキャッチすることで、星の誕生や成長を観測することができる!

  • 花火大会が始まり焦る三人

実穂 「赤外線で宇宙の観測か……なんかロマンチックだね。」

理陽 「遠くの星空から届く、赤外線の光をキャッチってね。」

そのとき、花火の音が聞こえてきました。花火大会が始まってしまったようです。


実穂 「浴衣、準備してたのに〜!」

僕蔵さん 「急げ〜!!」


慌てて部屋を飛び出していく三人なのでした。


それでは次回もお楽しみに〜!

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