NHK高校講座

科学と人間生活

Eテレ 隔週 木曜日 午後2:00〜2:20
※この番組は、前年度の再放送です。

科学と人間生活

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今回の学習

第6回 化学

食品の科学

  • 科学と人間生活監修:筑波大学附属駒場高等学校教諭 吉田 哲也
学習ポイント学習ポイント

食品の科学

  • お腹をすかせる美穂さん

今日も僕蔵さんを訪ねて来た、理陽くんと実穂さん。しかし、実穂さんは机に伏せて浮かない顔をしています。今日は身体測定があったので食事を我慢してしまい、お腹がすいたと話します。

理陽 「お昼特盛りだったけど、お腹すいたな。」

僕蔵さん 「インスタントラーメンがあるよ!麺だけじゃ寂しいから、ゆで卵でものせようか?」

理陽 「最高だね!卵は半熟がいい!」

僕蔵さん 「ところで、生卵を半熟にするにはどうしたらいいか知ってますか?」

実穂 「茹でるときのお湯の温度と時間が大事なんだよね。」

僕蔵さん 「さすが、知ってるね〜。じゃあ、まず半熟卵を作ろうか!」


今日のテーマは「食品の科学」です。ラーメンにのせる具材から、食品の科学に迫ってみましょう。

  • 半熟卵
  • 温泉卵は温度管理が大切

半熟卵を作るには、まず鍋に沸騰したお湯を用意して、生卵を入れます。卵を入れてから5分ほど茹でるとでき上がります。
時間通り茹でた卵を包丁で切ると、中は見事に半熟です。

理陽 「おいしそう!」

実穂 「温泉卵ってあるじゃない?黄身だけじゃなくて、白身も半熟なやつ。あれってどうやって作るんだっけ?」

僕蔵さん 「温泉卵も作ってみる?」

理陽 「作れるの?温泉ないのに?」

僕蔵さん 「もちろん!」

温泉卵を作るときに大事なことは、お湯の温度管理です。
僕蔵さんはお湯が入った鍋に温度計を入れて温泉卵を作りはじめます(右写真)。


理陽 「でも、ひとつの生卵が半熟卵になったり、温泉卵になったりするじゃない?それって不思議だな。」

僕蔵さん 「いい質問だね。卵はタンパク質を多く含む食品なんだ。ちょっと難しい表現をすると、タンパク質の構造が変化しているということなの。」

  • タンパク質はアミノ酸がつながって出来ている

ここでちょっと、タンパク質の構造について考えてみましょう。タンパク質は、アミノ酸という物質がつながってできています。左写真は、タンパク質の構造を分かりやすく、ペーパークラフトで表したものです。
(※ペーパークラフトは「タンパク質の構造」の概念を表したものであり、アミノ酸の並び順は特に卵を表したものではありません)


実穂 「いろんなアミノ酸が手をつないでいるみたい。」

理陽 「アミノ酸がつながって、タンパク質ができているんだ。」

  • 生卵のときは毛糸玉のようなタンパク質の構造
  • ゆで卵のときはぺちゃんこになるタンパク質の構造

生卵がゆで卵になるときに、どんなことが起きているのでしょうか。

例えば、生卵のときのタンパク質の構造は、毛糸玉のようになっているとします(左写真)。それが、ゆで卵になったときには、その構造が変化するというイメージです(右写真)。

加熱することでタンパク質の形が変わることを「変性」といいます。タンパク質は一度変性したら元には戻せません。そのため、生卵をゆで卵にすることはできても、ゆで卵を生卵にすることはできません。

黄身はお湯の温度が70度程度で固まり、白身は80度程度で固まるという変性の違いがあります。温泉卵も、上記のようなタンパク質の “変性” を利用して作られます。

  • ヒトの体はほとんどタンパク質からできている

ヒトの体は水を除くと、骨と歯以外の組織のほとんどがタンパク質からできています。
例えば、爪や毛髪はケラチン、皮膚はコラーゲン、血液はヘモグロビンなど、そのそれぞれが違う種類のタンパク質です。
ケラチンはシステインやグルタミン酸などのアミノ酸でつくられ、コラーゲンはグリシンやプロリンなどのアミノ酸で作られています。

タンパク質をつくるアミノ酸は、体内では合成できなかったり、必要な量を合成しにくいものがあります。それが必須アミノ酸です。
生卵、牛乳などには必須アミノ酸がすべて含まれています。必須アミノ酸は食事でしか補うことができない
ため、バランスのいい食事が大切です。

  • ニンヒドリン溶液
  • 反応時間を早めるために加熱する

ゆで卵にタンパク質をつくるアミノ酸が含まれていることを、実験で確かめてみます。
実験ではニンヒドリン溶液(濃度1%)を使用します。
ニンヒドリン溶液をゆで卵に吹きかけ、反応時間を早めるためにドライヤーで熱を加えます(左写真)。

※実験の際は必ず保護めがねをかけ、換気の良いところで行ってください。

  • アミノ酸に反応して紫色になる
  • 人間の皮膚にもアミノ酸が含まれている

ニンヒドリン溶液はアミノ酸を検出する試薬で、タンパク質に含まれるアミノ酸に反応すると紫色になります。今回の実験では、ドライヤーで加熱した部分が紫色になりました(左写真)。

実穂 「すごい、紫色になった〜。こんな卵見たことない!」

僕蔵さん 「人間の皮膚にもタンパク質をつくるアミノ酸が含まれている、ということも確かめることができるんだよ。」

理陽 「人間の皮膚に?」

僕蔵さん 「ニンヒドリン溶液は、警察の科学捜査で使用されることもあるんだ。」

  • 紙に唇をあてる理陽くん
  • ニンヒドリン溶液をかける

人間の皮膚にもアミノ酸が含まれているということを、実験で確かめてみます。

一枚の紙に理陽くんの唇を押し付けます。その後、紙にニンヒドリン溶液を吹きかけ、ドライヤーで熱を加えます。

  • 唇あとが紫色になった
  • 指あとが紫色になった

しばらく加熱すると、理陽くんの唇(左写真)と、紙を手に取ったときに指が触れた部分(右写真)が紫色になりました。
これにより、理陽くんの皮膚にも、タンパク質をつくるアミノ酸が含まれているということが証明されました。


理陽 「ヒトの皮膚ってタンパク質でできているんだね。」

実穂 「だから食事って大事なんだよね。」

僕蔵さん 「でもね、食事で大事なのはタンパク質だけじゃありません。三大栄養素とか、五大栄養素って聞いたことある?」

  • 五大栄養素
  • ドレッシングの材料

三大栄養素は、炭水化物・タンパク質・脂質のことを指します。五大栄養素になると、それに、ビタミンと無機塩類が加わります。無機塩類とは、塩や鉄分、カルシウムなどです。また、ビタミンは果物や野菜に含まれています。

野菜が好きだという理陽くんに、僕蔵さんがサラダを作ろうと提案します。

僕蔵さん 「でも、ドレッシングがないか。」

実穂 「お酢と油はある?ドレッシングを作ろうよ。」

僕蔵さん 「その手があったか!」


さっそく、実穂さんがドレッシングを作ります。
お酢と油を1対2の割合で用意し、お酢をボウルにあけます。また塩と胡椒、砂糖をひとつまみずつ入れて味付けします。次に泡だて器で混ぜながら、油を少しずつゆっくりと入れていきます。
ドレッシングが出来上がり、僕蔵さんに味見してもらいます。

  • 乳化作用によって、お酢と油が混ざる

僕蔵さん 「では、頂きます。美味しい!ちなみに、このドレッシングに卵の黄身を加えると、マヨネーズになるって知ってた?」

理陽 「そうなの!?」

お酢と油は通常は分離します。しかし、卵黄に含まれているレシチンという物質の乳化作用によって酢と油が混ざり、マヨネーズができます。

理陽 「乳化作用……料理も科学だね〜。」

僕蔵さん 「そういうこと!」

  • ステーキ肉に塩をかける
  • 塩の浸透現象

料理は科学だということが分かる、他の例も見てみましょう。
ステーキを焼く際の塩は、焼く直前に振るようにします。
長い時間、塩をかけたままにすると、肉から水分がしみ出してしまいます。これは塩の浸透現象によるものです。

  • さばに塩と酢をかける
  • しめさばになる

一方、塩の浸透現象が美味しさにつながる場合もあります。
しめさばは、塩とお酢で味を濃縮させることができます。

  • 乾燥わかめ

僕蔵さんは押入れで、インスタントラーメンを探しています。

僕蔵さん 「あっ、こんなのがあった!乾燥ワカメ。」

実穂 「乾燥ワカメ、便利だよね。腐らないし。」

理陽 「日持ちするしね。」

僕蔵さん 「乾燥って菌の繁殖を抑えるのに、すごく効果的なんだって。知ってた?」

リサーチモード! 乾燥と食品の保存
  • フリーズドライ商品
  • 勝見友絵さん

乾燥と食品の保存には、どのような関係があるのでしょうか。

フリーズドライ食品は、お湯を注ぐだけですぐできます。簡単で便利な上、作りたての味を楽しむことができます。これまで沢山の種類のフリーズドライ食品が開発され、商品化されています。

今回実穂さんは、フリーズドライ食品の製造や商品の開発をしている工場を訪れました。迎えてくれたのは、研究開発をしている勝見 友絵(かつみ ともえ)さんです。


実穂さん 「フリーズドライとは、どういったものなんでしょうか?」

勝見さん 「フリーズドライのフリーズは凍結という意味で、ドライは乾燥という意味です。食品を凍らせて、凍らせたまま乾燥させるという技術のことです。

  • 凍結庫
  • 凍結庫内で小分けにされた味噌汁

さっそく、フリーズドライ食品が作られている現場へ案内して頂きました。
やってきたのは食品を凍らせる凍結庫です。ここでは小分けにされた味噌汁(右写真)を、約マイナス30度で、8時間以上凍らせます。

凍らせた一杯分のお味噌汁を手に取った実穂さんは、とても冷たく固くなっていることに驚いたようです。


勝見さん 「中までちゃんと凍っているんですよ。」

実穂 「本当だ!この後はどうなるんですか?」

勝見さん 「この後はフリーズドライの、ドライの方をやっていきます。」

  • 真空凍結乾燥機
  • フリーズドライのしくみ

続いてやってきたのは、真空凍結乾燥機。凍った食品を時間をかけて乾燥させる装置です。装置の内部は真空状態になっています。

ここで、フリーズドライのしくみを味噌汁で見てみましょう。
凍結前、汁や具材の中の水分は水、つまり液体で存在しています。しかし凍結後、汁や具材の中の水分は氷、つまり固体に変化します。
真空の状態で乾燥させることで、氷の固体はそのまま水蒸気になります。
凍らせたまま乾燥する技術が、フリーズドライです。


勝見さん 「真空の中であまり熱をかけないで乾燥させているので、食材の持つ色や味、香りや栄養素が損なわれにくいことがフリーズドライのメリットです。そしてとても乾燥しているので、微生物の繁殖を抑えることができて長期保存に向いています。

実穂 「じゃあ、フリーズドライ食品は日持ちするので、非常食にも役立つということですよね。」

勝見さん 「そうですね、適していると思います。」


結論:乾燥は菌などの微生物の繁殖を抑える。よって乾燥は、食品を保存する有効な方法である。

  • 乾燥剤
  • 落胆する理陽と美穂

海苔を食べながら、僕蔵さんが話します。

僕蔵さん 「ここにも、乾燥剤が入っているじゃない?これも海苔のパリパリ感を維持するだけじゃなくて、菌の繁殖も抑えてくれているわけだね。」

理陽 「僕蔵さん、それよりラーメンは?」

僕蔵さん 「あ、ラーメンね。申し訳ない!あのね、昨日の夜…小腹がすいて食べちゃったの。さっき思い出して……。」

理陽 「信じられない!」

実穂 「お腹すいてたのに〜……。あ、そうだ!ゆで卵があるじゃん。マヨネーズもあるしね!いただきま〜す。」

嬉しそうにゆで卵を手に取る二人の姿を見て、ホッと胸をなでおろす僕蔵さんなのでした。


それでは次回もお楽しみに〜!

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