NHK高校講座

化学基礎

Eテレ 毎週 水曜日 午後2:00〜2:20
※この番組は、昨年度の再放送です。

化学基礎

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今回の学習

第40回

化学基礎から化学へ 〜有機化合物〜

  • 化学基礎監修:東邦大学教授 今井 泉
学習ポイント学習ポイント

化学基礎から化学へ 〜有機物質〜

身の回りの有機化合物
  • 全て有機化合物
  • 有機化合物とは

テーブルにいろいろなものが置いてあります。

所長 「これらに共通するもの、それは炭素だ。ここにあるものは全て、炭素原子を骨格とする物質なんだ。」

ケン 「炭素原子を骨格とする物質……。あっ、それって、有機化合物ですね!」

所長 「そう、有機化合物だ!我が先祖の錬金術師たちの時代から、常に我々は有機化学の力を駆使して新たな物質を創造してきた。過去から未来へ、その技術は今も進歩し続けている。今日はその無限の力に迫ってみよう。」

  • メタン分子
  • 炭素原子が繋がった模型

所長 「前にも学習したが、有機化合物とはメタン分子CHに象徴される、4個の価電子を持つ炭素原子が繋がった分子なんだ。」

ローザ 「前に、炭素原子が長く繋がった模型は見ましたね。」

所長 「そう、4本の腕を持った炭素が、炭素同士、あるいは他の原子とさまざまな形で結びつくことによって、およそ6000万種の有機化合物を生み出しているんだ。」

ローザ 「組み合わせが変わるだけで、とんでもない数の物質が生まれるんですね。」

所長 「そう。生物の体を形作るタンパク質や栄養になる糖類などのように、元々自然界に存在する物質もあれば、プラスチックや合成繊維のように、炭素原子を結合することで人間が新たに作り出した物質もたくさんあるんだ。

ケン 「僕たちが当たり前のように使っているものも、昔はなかったっていうことなんですね。」

所長 「そう、その時代時代で必要とされるものを、試行錯誤の末、生み出してきたんだ。たとえば、プラスチックは石油を原料として人工的に作られた有機化合物だ。ガラスに比べて軽く、割れにくい。また、金属のようにさびることもなく、電気絶縁性に優れ加工しやすい。そのため、生活のいたるところで使われ、我々の生活を豊かにしてくれている。」

ローザ 「プラスチックって、いろいろ種類があるんですよね!」

所長 「プラスチックは、熱を加えた時の性質によって2つのタイプに分かれるんだ。」

いろいろなプラスチック
  • 熱可塑性樹脂
  • 熱硬化性樹脂

左写真は、熱可塑性(ねつかそせい)樹脂です。
熱を加えると柔らかくなってとけ、冷えると再び固まるため、とかして自由な形に成形することができます。

一方、右写真は、熱硬化性樹脂です。
原料に熱を加えて成形し、固まった後に加熱しても柔らかくなりません。
耐熱性に優れていて、おもに調理器具や電気製品などに使われています。

私たちの生活に欠かせない存在になったプラスチックですが、現在、その処分方法が問題になっています。


所長 「プラスチックは分解されずに長持ちするという特徴があるので、土の中に埋めて処分しようとしても、分解されずにいつまでも残ってしまう。だからと言って焼却しようとすると、高い温度にしなくてはならないので大きなエネルギーを使い、しかも二酸化炭素が発生するという問題があるんだ。」

ローザ 「いいことばかりじゃないんですね。」

所長 「しかし、地球環境に配慮したプラスチックの製造や再生の取り組みも行なわれているんだ。」

環境にやさしいモノづくり
  • 今井 泉 先生(東邦大学 教授)

環境に配慮したプラスチックについて、特別研究員の今井 泉 先生(東邦大学 教授)に詳しく解説していただきました。


ケン 「今井先生、地球環境に配慮したプラスチックって、どんなものなんですか?」

今井先生 「それは、ひとことで言うと『地球にやさしいプラスチック』ということです。」

  • グリーンプラの製品
  • グリーンプラのマーク

左写真は、その「地球にやさしいプラスチック」でできた製品です。
見た目は普通のプラスチックと同じですが、「グリーンプラ」と呼ばれ、自然にかえるプラスチック=「生分解性プラスチック」でできています。
右写真のマークは、グリーンプラだけに表示することができるマークです。

最後は水と二酸化炭素になる

生分解性プラスチックは、植物の光合成によってできるデンプンを発酵させて作った乳酸などを原料にして作られたプラスチックです。
従来のプラスチックは、土に埋めても分解されないため、処理がしにくいという課題がありました。
生分解性プラスチックは、土に埋めると微生物のはたらきで水と二酸化炭素に分解されるため、廃棄物の削減に役立っています。


ケン 「なるほど、最後は水と二酸化炭素になるから、自然にかえるプラスチックなんですね。」

今井先生 「また、限られた資源を大切にするために、廃棄ではなく原料まで分解して再利用したり、再利用できないものについては燃料として利用し、発生する熱エネルギーを取り出して電気エネルギーなどに変換したり、さまざまな方法でプラスチックのリサイクルが行なわれています。

ローザ 「便利なプラスチックを、地球環境にも優しく使っていくということが大事なんですね!」

いろいろな繊維
  • 絹とウール
  • レーヨン
  • アクリル繊維・ナイロン

上の写真は、どれも炭素からできた有機化合物の繊維です。
左から絹・ウール・レーヨン・アクリル繊維・ナイロンです。

蚕から取れる絹糸や、羊など動物の毛で作ったウールは、昔からあった天然繊維です。
19世紀の化学者は、この天然繊維に近いものを作ろうとしました。
そして、木材などから天然繊維の成分と同じ物質を取り出して、世界初の化学繊維を発明しました。
その化学繊維がレーヨンです。


ローザ 「レーヨンって、キラキラしていて手触りもいいですね。」

今井先生 「そうですね。でも、当時の化学者はこれだけでは満足せず、さらに研究を続けて、今までにない すごい繊維を発明したんです。それが天然繊維を全く利用しない合成繊維のナイロンです。ナイロンは引っ張り強度が強く、絹に似た肌触りで、女性のストッキングやスポーツ用品などに当たり前のように使われていますね。」

所長 「化学者はその後も、もっと すごい繊維を発明し続けているんだ。」

スーパー繊維
  • ポリアリレート繊維
  • はさみでも切れない

テーブルに用意したのは、スーパー繊維と呼ばれる現代の化学繊維です。
ケンが以前調べたポリアリレート繊維は、わずか2mmの太さで60kgの重さにも耐えられ、ケンを持ち上げるほどの強度がありました。

ポリアリレート繊維でできた布で、改めて強度を試してみました。
ケンがこの布をカッターで切ってみますが、傷がつくだけで切れません。
続いてローザがはさみで挑戦しますが、やはり布は切れませんでした。

  • アラミド繊維
  • 炎に強いアラミド繊維

スーパー繊維には他にも違った性能を追求して作られたものがあります。
「アラミド繊維」は、耐熱性や耐火性を追求して開発されたものです。
熱に強く、燃えにくいという特性をいかして消防服などにも使われています。

右写真の左側はアラミド繊維を使った作業服、右側は一般的な作業服です。
バーナーの強い炎にさらした時、一般的な作業服はバーナーを停止した後も燃え続けました。
一方、アラミド繊維の作業服は、まったく燃えていません。

  • 鉄よりも10倍強い

最後は、“鉄よりも強い” 繊維です。
上写真の炭素繊維は、90%以上が炭素からできている繊維で、軽くて強いという特性があります。
太さは髪の毛の約10分の1ですが、強度は鉄の10倍もあるといい、旅客機の翼や胴体にも使われています。



ローザ 「飛行機の翼が繊維でできているんですか?大丈夫なんですか?」

今井先生 「もちろん、大丈夫です。炭素繊維がどれだけ軽くて強いか調べてみましょう。」

軽くて強い炭素繊維
  •  重さを比較
  • 炭素繊維の方が4割軽い

左写真の左側は、炭素繊維を何重にも重ねて高温で加熱して作った板です。
一方、右側は、飛行機の翼などに使われてきたアルミニウム合金です。

重さを比べてみると、大きさは同じでも炭素繊維の方が約4割軽いことがわかります。

  • 引っ張る力を加えていく
  • 炭素繊維は3t以上の力でも変化なし

次に、強さを比べてみます。
左写真のように、同じ幅と厚さの板をそれぞれ固定し、徐々に引っ張る力を加えていきます。

はじめはどちらも変化はありませんが、1t(トン)付近から、アルミニウム合金は飴のように伸びていきます。
そして1.6tを超えたあたりでちぎれてしまいました。

一方、炭素繊維は3t以上の力で引っ張っても変化はありません。

  • 炭素繊維の板は層構造
  • 層ごとで繊維の方向が違う

さらにこの炭素繊維の板には、どの方向から力がかかっても耐えられるように、ある工夫が施されています。
デジタルマイクロスコープで断面を調べてみると、繊維の束が何層にも積み重なっています(左写真)。
さらに拡大してみると、上の層は繊維が横向きに走っています(右写真)。
一方、下の層は丸い断面が見え、繊維の方向が異なっていることがわかります。

  • 繊維に対して横からの力に弱い
  • さまざまな方向になるようにしてある
  • 飛行機の飛躍的な軽量化が実現

実は炭素繊維は、繊維が伸びる方向に引っ張る力には強いが、横からの力には弱いという性質があります。
そこで、さまざまな方向に走る炭素繊維を何層にも重ねることで、どの方向からの力にも耐えられるようにしています。
 
この炭素繊維によって、旅客機の飛躍的な軽量化が実現されました。

  • 炭素繊維の板とステンレスの板
  • 炭素繊維の板を曲げられないケン

炭素繊維でできた板と、同じ大きさと厚さのステンレスの板を、実際に持って比べてみました。


ローザ 「炭素繊維の板の方が、ステンレスよりもずっと軽いです。ケン、曲げてみて。」

ケン 「あれっ、全然曲がらないや。」
 
所長 「鉄の10倍の強さだからな。」

ケン 「炭素を組み合わせることで、こんなに軽くて、しかも鉄よりも強い物質ができるんですね。」

所長 「炭素は、将来我々を宇宙旅行にも連れて行ってくれるかもしれない、夢の素材なんだ。」

夢の炭素素材
  • カーボンナノチューブ
  • 炭素原子が網目のように結びついた筒状構造

そういって所長が取り出したのは、カーボンナノチューブという物質です。
太さは人の髪の毛の5万分の1、鉄の5分の1の重さで、強度は20倍と言われています。
カーボンナノチューブは、炭素原子が網目のように結びついている、非常に小さな筒状の構造を持ちます。
炭素の単体のため有機化合物ではありませんが、炭素を骨格とする注目の素材です。


実は現在、このカーボンナノチューブという素材を利用した「宇宙エレベーター」という、未来の計画が進められているといいます。

宇宙エレベーター
  • 宇宙エレベーター
  • ケーブルの総延長は10万km

未来のある日、赤道直下の海に浮かぶ施設に家族連れがやってきます。
その目的はなんと宇宙旅行。
そして、それを実現してくれるのが、宇宙エレベーターです。

宇宙エレベーターとは、赤道の上空 高度約3万6千kmに浮かぶ静止衛星から地面に降ろしたケーブルを利用して、宇宙と地上を往復する乗り物です。

ケーブルの総延長は約10万kmもあります。
ロケットによる宇宙旅行に比べ、1回あたりのコストが100分の1に抑えられると期待されています。
この計画の実現の鍵を握るのが、宇宙と地上を結ぶ、非常に軽くて丈夫なケーブルの素材です。

  • カーボンナノチューブをより合わせる

その有力な候補が、カーボンナノチューブです。
これをより合わせてケーブルを作れば、理論上は十分な強さになるはずです。
現実にはまだ強度は十分ではありませんが、現在多くの化学者が夢の実現をめざして、研究開発を続けています。

  • 新たな研究に挑戦!
  • 一年間ありがとうございました!

今井先生 「今日はプラスチック、繊維と いろいろ学習してきましたが、プラスチックと炭素繊維を組み合わせた『炭素繊維複合材料』という、より強くて壊れにくい材料も開発され、スポーツ用品や航空・宇宙分野にも活用されているんですよ。」

ケン 「プラスチックと繊維を組み合わせるって、新たな発想ですよね。ますます研究意欲が湧いてきました。」

ローザ 「私も未来に役立つ発明ができるように、もっともっと化学を追求していきたいと思いました。」

所長 「あれ、なんだか二人とも ずいぶん成長したなあ。」

ケン 「そりゃそうですよ!」

ローザ 「だって、フラメル研究所で1年間学んできましたから!」

所長 「化学は常に人の暮らしとともに歩んできた。そして、これから先も。さあ、新たな研究に挑戦するぞ!」


さて、今回で化学基礎は最終回です。
一年間ご覧くださり、ありがとうございました!!

世界を動かすもの、それはケミカルパワーだ!

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