NHK高校講座

化学基礎

Eテレ 毎週 水曜日 午後2:00〜2:20
※この番組は、昨年度の再放送です。

化学基礎

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今回の学習

第38回

電気分解

  • 化学基礎監修:東京都立青山高等学校教諭 吉田 工
学習ポイント学習ポイント

電気分解

電気分解
  • 銀めっきの食器
  • ブリキのめっきは缶詰によく利用される

ケンとローザは所長に頼まれ、銀めっきされた食器を磨いています。
全体が銀だと思っていたローザは、「めっき」と聞いてがっかりしますが、めっきには大切な意味があります。


ケン 「中身は強い金属で外側は美しい銀というのは、ある意味、合理的なんじゃない?」

ローザ 「ふーん。でも私は、全部銀の方が好きだな。高いのはわかるけど。」

ケン 「いやいや、めっきも捨てたもんじゃないよ。たとえば、缶詰の缶によく使われるブリキは、鉄より酸化されにくいスズでめっきしたものだから、そのおかげで本体の鉄までさびるのを防止できるんだ。」

  • 硬質クロムめっき

所長 「めっきは、さびを防ぐだけではないぞ。工業用部品は『硬質クロムめっき』を施すことによって、表面を非常に硬くすることができる。つまり部品がすり減りにくく、耐久性が高くなるんだ。」

ローザ 「どうして二人とも、そんなにめっきの肩を持つの?めっきが大切なのはわかりましたよ。でも、めっきって、どうやって加工するんですか?」

所長 「いい質問だな。いくつか方法があるんだが、代表的なのは『電気分解』を使う方法だ。」

ローザ 「分解しちゃっていいの?」

所長 「いいんです!電気分解は、2人ともすでによく知っている酸化還元反応を利用する方法だ。」

2人 「電気を使って、酸化還元反応を起こすってこと?」

所長 「そうだ。創造のためには、破壊が必要な場合もある。電気分解の中から新たな世界を作る素材が生まれるのだ!」

電気分解の仕組み
  • 電池
  • 電気分解とは

まずは、今回のテーマである「電気分解」について考えていきます。

前回学んだ「電池」は、酸化還元反応を利用して、電気エネルギーを取り出す装置のことでした。
電気分解は、ちょうど電池の反対のことだといえます。
つまり、電気エネルギーを取り出すのではなく、外部から電気エネルギーを加えることで自然では起こらない酸化還元反応を強制的に起こすことです。

  • 陰極と陽極

実験で電気分解の仕組みを見てみます。

まず、塩化銅(II)水溶液の中に2枚の炭素板を浸します。
電気分解では、電源の「−」、つまり負極につないだ電極を「陰極」と呼びます。
一方、電源の「+」、つまり正極につないだ電極を「陽極」と呼びます。

  • 陽極から気体が発生
  • プールの消毒液のような臭い

水溶液に電気を流すと、陽極から気体が発生しました。

手であおいで臭いをかぐと、プールの消毒液のような臭いがします。
このことから、発生した気体は塩素だとわかります。

  • 陰極では銅が析出

陰極の方は、炭素板の表面に何かついています。

電極を引き上げてよく見てみると、赤っぽい色をしています。
この電気分解で、陰極側では金属の銅・Cuが析出しました。

陽極でCl<sup>−</sup>がe<sup>−</sup>を失い陰極ではCu<sup>2+</sup>が電子を受け取る

この実験を、もう一度まとめます。

炭素板の電極を塩化銅(II)水溶液に浸して電気を流すと、「陽極」では塩素が発生し、
「陰極」では銅が析出しました。

このとき起こった反応は、上の図のようになります。

陽極では、塩化銅(II)水溶液中の塩化物イオン・Clが電子を失い、塩素の気体が発生します。
一方、陰極では塩化銅(II)水溶液中の銅(II)イオン・Cu2+が電子を受け取り、銅が析出しました。

  • イオン反応式

これを反応式で見てみます。
電子のやりとりがあるということは、酸化還元反応が起こったということです。

陽極では、水溶液中の塩化物イオン・Clが電子を失いました。
つまり、「酸化」されて気体の塩素が発生しました。

陰極では銅(II)イオン・Cu2+が電子を受け取りました。
つまり、「還元」されて銅が析出しました。

このように「電気分解」では、外部からの電気エネルギーによって電子のやり取りをさせます。
そして、陽極で「酸化される反応」を、陰極で「還元される反応」を起こします。


電池は、化学変化によって電気エネルギーを取り出すものですが、電気分解は反対に電気エネルギーを使って化学変化を起こす操作だといえます。


ローザ 「でも、電気分解って何の役に立つんですか?」

所長 「電気分解を使えば、水溶液から欲しいものを取り出すことができるんだ。」

電気分解と酸化還元反応
  • 吉田 工 先生(東京都立青山高等学校 教諭)
  • 電極には白金を使う

ここで、特別研究員の吉田 工 先生(東京都立青山高等学校 教諭)に、「水の電気分解」の実験を見せていただきました。

水に電気エネルギーを与えて、水素と酸素を取り出します。
ただし、純粋な水は電気を通しにくいため、電気を流れやすくするために少量の硫酸を加えた希硫酸で行います。
電極には、白金を使います。

  • 電気を流すと気体が発生
  • 陽極で10mL、陰極で20mL

電気を流すと、両方の電極から気体が発生しました。
約5分後、たまった気体の体積を量ります。

たまった気体の体積は、陽極で10mL、陰極で20mLでした。
陰極から発生した気体は、陽極の約2倍です。

  • 陽極の気体では線香の火が明るく燃えた
  • 陰極の気体は炎を近づけると「ポン」という音

それぞれ、どんな気体が発生したのか確認してみます。

陽極にたまった気体を試験管に取り、火のついた線香を近づけます(左写真)。
すると、一瞬ですが明るく燃えました。
このことから、陽極に発生した気体は酸素だとわかります。

次に、陰極にたまった気体を試験管に取ります(右写真)。
気体に炎を近づけると、「ポン」という音がしました。
このことから、陰極に発生した気体は水素だとわかります。

このように、水に少量の硫酸を加えた希硫酸を電気分解すると、水素と酸素が発生するということがわかりました。
つまりこの電気分解では、「希硫酸から酸素と水素を取り出せた」といえます。

希硫酸の電気分解

この実験で何が起こったのか、確認します。
実験では電極に白金を使って希硫酸を電気分解しました。

硫酸は、水素イオン・Hと、硫酸イオン・SO2−に電離します。

陰極では、Hが電子を受け取り、水素・Hが発生します。
これは、電子を受け取ったので、「還元されて」水素が取り出せたということになります。

一方、陽極の反応です。
硫酸イオン・SO2−からは電子を奪いにくいため、硫酸イオンより電子を奪いやすい水・HOが電子を失って、酸素が発生しました。
これは、電子を失ったので、「酸化されて」酸素が取り出せたということになります。

  • イオン反応式
  • 電解液と電極の組み合わせでさまざまなものを取り出せる

反応式で表すと、左図のようになります。
硫酸は、水素イオン・Hと、硫酸イオン・SO2−に電離します。

陰極では、Hが電子を受け取って還元され、水素が発生しました。
一方、陽極では、水が酸化されて酸素が発生しました。


ケン 「これと同じように、電気分解を利用して、水溶液中に溶け込んでいるものを取り出すことができるんですね。」

所長 「そうなんだ。電解液と電極の組み合わせによって、水溶液からさまざまなものを取り出すことができるんだ。」

吉田先生 「たとえば、今の電気分解では電解液に希硫酸を使いましたが、電解液を硫酸銅(II)水溶液に変えると、陽極からは酸素、陰極からは銅が生成するんです。」

ローザ 「なるほど。でも『欲しいものを取り出す』といっても、水溶液に溶けていないものを取り出すことはできませんよね。」

吉田先生 「確かに、ないものは取り出せません。しかし、欲しいものを水溶液中にイオンとして溶かし込んでから、純度を上げて取り出すということならできますよ。」

硫酸銅(II)水溶液の電気分解
  • 陽極に銅板、陰極にステンレス板
  • 電気を流す

硫酸銅(II)水溶液の電気分解を行いました。

陽極の電極には「銅板」を、陰極の電極には「ステンレス板」を用意し、これを水溶液が入った容器にセットします。
電極を外部電源に接続し、電気を流して約3分経過後、電極を引き上げます。

  • 陽極の銅板は光沢がなくなる
  • 陰極のステンレス版は銅の色に変化

陽極に使われている銅板の表面は、電気を流す前は光沢がありました。
しかし、電気を流した後は、光沢がなくなっています。
電極の銅板が酸化されて水溶液中に溶け出したために、光沢がなくなり、「ざらざら」になってしまいました。

一方、陰極のステンレス板は赤みがかっています。
陰極では、陽極から溶け出した銅(II)イオンを受け取って、銀色だったステンレス板の表面が銅の色に変わりました。
陽極から銅(II)イオンが水溶液中に溶け出し、それを陰極で取り出したということです。


ローザ 「でもなんだか回りくどいですよね。なぜ、わざわざ銅を一度水溶液に溶かしてから、もう一度取り出したりするんですか?」

吉田先生 「それは、銅の場合には、電気分解することにより、より純度の高い銅を得ることができるからなんです。銅に不純物が混じっていても、一度溶液に溶かし込んでイオンにして、溶液の中から銅だけを取り出せば純粋な銅になるというわけです。」

ローザ 「なるほど。純度の高い銅を取り出すためなんですね。」

吉田先生 「この方法は、実際に産業の中で使われている方法なんですよ。」

銅の電解精錬
  • 茨城県日立市にある銅の精錬工場
  • 粗銅

茨城県日立市にある銅の精錬工場を訪ねました。
工場内には、「粗銅」と呼ばれる純度99%の銅の板が並んでいます。

  • 電解槽
  • 硫酸銅(II)水溶液を流し込む

その純度をさらに高めるために行うのが、銅の電解精錬です。
大きなプールのような電解槽の中に、粗銅とステンレス板の巨大な電極を並べていきます。
ここに硫酸銅(II)水溶液を流し込み、電気分解が9日間続けられます。

  • 9日後
  • 電気分解前後

9日後、電極を引き上げます。
右写真中の左側が電気分解前、右側が電気分解を2回行った後の粗銅です。
電気分解によって銅がイオンになって溶け出すため、板は薄くなり、重さは6分の1になっています。

  • ステンレス板
  • ステンレス板から銅を剥ぎ落とす

一方、銀色だったステンレス板の表面は、溶けた銅が析出したため、銅の色に変わっています。

最後の行程として、ステンレス板の表面から銅をはぎ落とします。
出来上がった銅の純度は99.99%以上です。
これだけの手間と時間をかけて、ようやく純粋な銅が取り出せました。

電気分解の利用
  • 純粋なもののほうが加工しやすい
  • アルミナを電気分解してアルミを得る

ローザ 「99.99%以上の純度の銅って、やっぱり見た目もきれいですね。」

所長 「やかんや鍋は、直接人の口に入る料理などを作るものだから、不純物はないほうがいい。それに純粋なもののほうが加工もしやすいんだ。電線に使う場合も、純度が高いもののほうが電気抵抗が少ないんだ。超高級スピーカー用オーディオケーブルは、高純度銅が使用されている。1mで10万円くらいもするんだ!」

ケン 「なるほど。銅を作るのに電気分解が使われているなんて、初めて知りました。」

ローザ 「他にはどんなところで利用されているんですか?」

所長 「たとえば、アルミ缶の原料になるアルミニウムの製造もそうだな。アルミニウムは、原料のボーキサイトからできるアルミナを電気分解して作るんだ。

ケン 「そう言えば、めっきの加工をするのにも電気分解が使われているんでしたね。」

所長 「そうなんだ。さきほど見た銅の電解精錬で、ステンレスの電極の表面に銅がくっついていたが、原理はあれと同じことだ。」

ケン 「金や銀のめっきも同じようにしてできるんですね。」

  • 次回もお楽しみに〜

ローザ 「アルミニウムも電気分解を利用して作られてるんだけど、アルミニウムは銅よりも電気をたくさん使わなくちゃできないんだって。」

ケン 「そうらしいね。でも、空き缶をリサイクルすると、原料から初めてアルミニウムを作る場合の3%くらいの電気で作ることができるんだって。だから、どんどんリサイクルを進めなきゃいけないんだ。」

ローザ 「じゃあ、環境のためにどんどん飲んで、どんどんリサイクルしなくちゃね。乾杯!」

ケン 「どんどん飲んでって……、そういうことじゃないと思うんだけど……。」


それでは、次回もお楽しみに〜!

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