NHK高校講座

化学基礎

Eテレ 毎週 水曜日 午後2:00〜2:20
※この番組は、昨年度の再放送です。

化学基礎

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今回の学習

第37回

電池

  • 化学基礎監修:東京都立青山高等学校教諭 吉田 工
学習ポイント学習ポイント

電池

  • チョコレートを撮影しようとするローザ
  • デジカメの電池は乾電池?

手作りのバレンタインチョコレートの写真を撮ろうとしているローザ。
しかし、デジタルカメラの充電が切れています。
そこで、電池を交換しようとしましたが、ローザが見つけたのは乾電池でした。


ケン 「ローザ!このチョコレートって、ひょっとして……。」

ローザ 「それは、来週までのヒミツ!ところで、デジタルカメラの電池ってこれでいいの?」

ケン 「それは乾電池。デジタルカメラの電池は充電式だから違うよ。」

ローザ 「化学にはちょっと自信が出てきたんだけど、電池のこととかよく分からないんだよね。」

電池のしくみ
  • 電池は酸化還元反応を利用

所長 「それは聞き捨てならないな!化学に自信が出てきたローザさんとは思えない発言だぞ!」

ローザ 「どういうことですか?」

所長 「電池の仕組みは化学反応そのものだ!『電池』は今まで学んできた『酸化還元反応』を利用して電気エネルギーを取り出す装置なんだ。」

ローザ 「電池って、酸化還元反応と関係があるんですか?」

所長 「電気と化学反応は深い関係にある。そしてその研究は、我々が暮らす社会の発展や文明の進歩に貢献してきた。『電池』はまさに、その代表的な産物なんだ。今日はその『電池』の秘密に迫ってみよう。」

  • マンガン乾電池
  • モーターつきのプロペラ

まず、電池のはたらきを確認します。
用意されているのは、マンガン乾電池とモーターがついたプロペラです。


所長 「モーターにつながった一方の導線を+に、もう一方を−につなぐと、電気が流れてプロペラが回るんだ。」

ローザ 「所長、そんなの当たり前ですよ!」

ケン 「だって、電池って電気の元ですからね!」

所長 「確かに、いつでもどこでも電気を提供してくれる電池を、我々は当たり前のように使っている。だがなぜ、電池のプラスとマイナスに導線をつなぐと電気が流れるのか、ちゃんと考えたことはありますか?」

ローザ 「そんなこと考えたこともないです。」

所長 「最初に、『電池は今まで学んできた酸化還元反応を利用して電気エネルギーを取り出す装置』だと言ったが、それがどういう仕組みなのか知っておく必要があるぞ。」

ダニエル電池
  • ダニエル
  • 吉田 工 先生(東京都立青山高等学校 教諭)

電池の研究は昔から行なわれていましたが、1836年にイギリスの化学者ダニエルが作ったのが、ダニエル電池と呼ばれる画期的な電池でした。

ここで、ダニエル電池ついて、特別研究員の吉田 工 先生(東京都立青山高等学校 教諭)に解説していただきます。

  • ダニエル電池
  • 亜鉛と銅

左写真は、ダニエル電池です。

左側には、硫酸亜鉛水溶液が入っており、右側にはセロハンの袋に入れた硫酸銅(U)水溶液が入っています。
亜鉛板と銅板は電極に使われます。

  • モーターつきのプロペラを電極につなぐ

亜鉛板を硫酸亜鉛水溶液に入れ、銅板を硫酸銅(U)水溶液に入れます。
そして、亜鉛板と銅板に導線をつなぐと、プロペラが回転しました。
導線に電気が流れたということです。

ダニエル電池の構造

図はダニエル電池の構造です。
セロハンで仕切られた左側は、亜鉛板と硫酸亜鉛水溶液が入っています。
右側は銅板と硫酸銅(II)水溶液が入っています。
そして、それらの間が導線で結ばれています。


吉田先生 「電池を考える時のポイントは『電子の流れ』です。」

ローザ 「『電子の流れ』ですか。」

吉田先生 「亜鉛は銅よりもイオン化傾向が大きい、つまり、酸化されやすい性質があります。物質が酸化されるとき電子はどうなりますか?」

ケン 「酸化されると、電子を失います。」

  • 亜鉛は電子を放出し酸化される
  • 銅は電子を受け取り還元される

吉田先生 「亜鉛は酸化されて、亜鉛イオン・Zn2+になりますます。そのときに、電子・eを放出します。」

ローザ 「亜鉛が酸化されて電子が出るんですね。」

吉田先生 「そうです。亜鉛が出した電子は導線を通ってプロペラを回して銅板に移動します。そして、銅板では、溶液中の銅(II)イオン・Cu2+が銅板の表面で電子を受け取ります。つまり、Cu2+が還元されて、銅・Cuになります。」

ケン 「それぞれの電極で酸化と還元が起こっている。」

ローザ 「だから酸化還元反応なんですね。」

ダニエル電池での電子と電流の流れ

吉田先生 「そして、その酸化還元反応によって電子の流れが生じます。電子が流れ出す側を『負極(−極)』といいます。電子が流れ込む電極を『正極(+極)』といいます。」

ケン 「負極から正極に電子が流れるんですね。」

吉田先生 「ちなみに、>電流の方向は、正の電荷が移動する方向とされています。したがって、電子の流れる方向と電流の向きは反対になります。」

ローザ 「電流の向きは、正極から負極、ということですね。」


電子の流れを追って、電池のしくみのポイントをおさえておきます。

まず負極では、酸化されやすい物質が酸化され、電子を放出します。
その電子は正極に移動し正極の物質が電子を受け取り、還元される反応が起こります。
負極・正極のそれぞれで、酸化される反応と還元される反応が起こり、電子の流れが生じます。
それが電気エネルギーになってモーターを動かします。


ここまで、ダニエル電池を見てきましたが、乾電池でも基本的な仕組みは同じです。

一次電池と二次電池
  • 一次電池とは
  • 二次電池とは

ローザ 「ところで、デジタルカメラのバッテリーと乾電池って何が違うんですか?」

所長 「それは、ひとことで言うと充電できるか、できないかの違いだな。電池から電流を取り出すことを『放電』というんだが、一度放電すると電池の能力が元にもどらない電池を一次電池というんだ。

ケン 「ということは、充電できるのが二次電池ですね。」

ローザ 「充電できない一次電池と、充電できる二次電池は何が違うんだろう。」

所長 「それを知るためには、『放電』や『充電』の仕組みを知る必要があるな。」

  • 鉛蓄電池
  • 放電中はプロペラは時計回りに回る

自動車のバッテリーなどに使われている鉛蓄電池は、二次電池です。

鉛蓄電池の放電と充電の様子を再現してみました。

右写真の実験装置は、鉛蓄電池の内部の仕組みと同じものです。

ダニエル電池と同様に、導線をつないで放電させると、プロペラが回ります。
このとき、プロペラは時計回りに回っています。

  • 外部電源とつなぎなおす
  • プロペラは反時計回りに回る

今度は、外部電源をつないで充電してみます。
導線を外部電源につなぎなおし、充電を開始すると、再びプロペラが回り始めました。
プロペラは、先ほどと逆方向、つまり反時計回りに回転しています。

外部電源を外して、再度導線どうしを繋ぐと、再びプロペラが回りました。
このとき、最初と同じ時計回りに回転しています。

放電と充電で、プロペラの回転する方向が反対になることが分かります。

  • 放電時の電子の流れ
  • 充電時の電子の流れ

鉛蓄電池の放電、充電の仕組みを見てみます。

まず、放電時には電子は負極から正極へ流れます。(左図) 
しかし、充電時には、外部電源によって強制的に電子の流れが逆になります。(右図)


ケン 「電子の流れが逆になる?ちょっとよく意味が分からないんですけど……。」

所長 「外部電源で電圧をかけることによって、正極から電子を引き抜き、負極には電子を押し戻して、物質を放電前の状態に戻しているんだ。」

ケン 「強引に電子を押し戻して、放電前の状態にしちゃうんだ。それで電気を蓄えられるんですね。」

所長 「しかし、一次電池ではそうはいかない。外部電源で電子の流れを逆にしても別の反応が起こってしまうので、放電前と同じ状態には戻らないんだ。マンガン乾電池などは、充電すると燃え出したり爆発したりすることもある。決して一次電池は充電しないように!」

いろいろな電池
  • 一次電池の例
  • リチウム電池

一次電池と二次電池にはどのようなものがあるか見てみます。

一次電池には、マンガン乾電池やアルカリマンガン乾電池、リチウム電池があります。

マンガン電池は、掛け時計や懐中電灯に使われています。
アルカリマンガン乾電池は、マンガン乾電池よりも長く使えるのが特長です。
テレビやエアコンのリモコンなどによくわれています。

ボタンのような形状をしたものがリチウム電池です。
リチウム電池は、デジタル体温計や電子手帳などに使用されています。

  • 二次電池の例

二次電池には、鉛蓄電池、リチウムイオン電池があります。

鉛蓄電池は、自動車や病院などの非常用電源などに使われています。

リチウムイオン電池は、スマートホンやデジタルカメラなど、さまざまなものに使われています。
リチウムイオン電池は、軽くて大きな電力を持っていることが特長です。

携帯電話の進化
  • 様々な種類の携帯電話
  • 最初の携帯電話を使う所長

所長 「これらは約30年前から現在までに製造された、いろいろなタイプの携帯電話だ。」

ローザ 「これ全部、携帯電話ですか?」

所長 「この一番大きいものは1985年に出た最初の携帯電話だ。肩にかけて使っていたんだ。」

ケン 「秘密情報部員の無線みたいですね!」

ローザ 「携帯電話なのに、すごく大きいですね!」

所長 「この頃使われていたのは、ニッケルカドミウム電池という二次電池で、電池の容量が少なくてこんなに大きくても40分ぐらいしか通話できなかったんだ。」

ローザ 「こんなに大きいのに……。」

所長 「その後、化学の進歩とともに、コンパクトで高性能なリチウムイオン電池が開発され、通信の電気回路も省力化されて、小型で8時間以上通話できる機種もできている。」

ローザ 「あんなに大きかった携帯電話が、今やこんなに薄くなったんですね。電池の開発が進んで本当に良かった。」

地球にやさしい燃料電池
  • 燃料電池

最近注目されている燃料電池の仕組みを見ていきます。


ケン 「燃料電池って、聞いた事はあるんですが、どういう電池なんですか?」

所長 「燃料電池は金属ではなく、水素と酸素を使った電池で、最近では車の動力にも使われている。排気ガスどころか、二酸化炭素も排出されないので、環境面でも注目されている未来の電池なんだ。」

ローザ 「すごい電池ですね!」

ケン 「これ、実際に使えるんですか?」

所長 「もちろん。試してみよう。」

ローザ 「はい。環境に優しい電池、見てみたいです!」

  • 燃料電池にプロペラをつなぐ
  • 水素を注入するとプロペラが回る

燃料電池の負極と正極に、プロペラをつなぎます。
そして負極側には、水素を入れます。


ケン 「酸素は入れなくていいんですか?」

所長 「酸素は空気の中にたくさん含まれているからな。正極側に空気が入る構造になっているからそれで十分なんだ。」


水素を注入すると、プロペラが回り始めました(右写真)。
このように、酸素と水素だけで電気が作られています。

  • 燃料電池のしくみ
  • 次回もお楽しみに〜

左図は、燃料電池の仕組みを表しています。

外から入ってきた水素が負極で酸化されて水素イオン・Hと電子・eに分かれます。
電子は導線を通ってプロペラを回して、正極に移動します。
は電解液中を移動して、正極で外から入ってきた酸素と、負極から移動してきた電子に結びついて還元されて水・HOが生成されます。


ケン 「燃料電池は車の動力にも使えるのに、電気のほかには水しかできないなんて、本当にクリーンなんですね!」

所長「そうなんだ!しかも、燃料電池はエネルギー効率がすごく高くて、火力発電の2倍以上もあるんだ。」

ローザ 「燃料電池って本当にすごいですね!私ももっと勉強して、世の中に役に立つものをいろいろ考えなくちゃ。私が新しい電池を作ったら、ローザ電池とか言われたりして!」


それでは、次回もお楽しみに〜!

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